第1章 始マリノ謳
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22
“邪魔するな”
私は確かにそう言った。
「押すなって!!」
「えー、だって見えないんだよ 」
「んな事言ったって麗にバレちまうだろ!」
「あはは、君達もう気付かれてると思うよ」
リーマスの言う通りだ。
……と言うか、こんなに賑やかな尾行をされて気付かない方がおかしい。
「翡翠、クレープありがとう」
「別に。ピーターも食うか?」
「ぁ、ぁぁありがとう!」
「翡翠!僕のは?」
「無い」
「何でだよ!リリーとピーターのだけかい?!」
「他に買う必要あるか?」
「え、やだ、本気だよこの人…冗談じゃ無いのか」
「あぁ、セブルスに買ってやるか」
「あはは、酷いねぇ」
「君、僕ら三人に対して冷たくないか」
「え、必要無いだろ」
「うっわー…また本気だよ、この人」
「お前ら煩ぇつってんだろ!」
「いやシリウス、君そんな事言ってないよ」
いやもう皆煩いよ。
静かな休日の予定だったのになぁ…
=約束の本=
冷たい風が肌を刺す冬のホグズミード…
寒さ対策にローブを羽織った麗とセブルスは、約束通り本屋巡りをしていた。オマケ付きで。
『御免ね、セブ…』
「麗の所為じゃ無いだろ」
麗は本を読むふりをし、後ろの様子を窺った。
さっきからジェームズ達がコソコソ後をつけてくるのだ。トラップを仕掛けながら…
今の所、麗とセブルスはトラップを全て壊して進んでいる。易々と掛ってやる必要は無い。
麗は再び後ろの様子を伺おうとしたが、面倒臭くなって術を使い出した。目で見なくても頭の中に直接ジェームズ達の映像が流れてくる。
そしてセブルスは隣りで完璧に後ろを無視していた。
『でも…御免ね』
セブルスは何も言わず唯、麗の頭を優しく撫でた。
瞬間、セブルスの上に本棚から大量の本がドサドサと音を立てながら落ちてきた。
『セブルス!』
「痛…ッ…」
『セブ…!』
麗は慌てて本の山を退かすとセブルスを抱き締める様にして庇い、本棚の陰で笑いを堪えている二人を睨み付けた。
『店員さん…』
「は、はい…」
麗は物音を聞き付けやって来た店員にそう言って笑顔を向けた。
『ここの本棚と…後、あっちのとそこの本棚の本、全部いただきます』
「ぁ、はい、分かりました!」
麗は慌てて魔法で本を纏める店員の手に手を添え、魔法を使うのを止めさせた。
『纏めなくても…後、送ってもらわなくても大丈夫ですよ。あそこの二人が纏めて運んで帰ってくれますから』
堪えきれなくなってゲラゲラと笑っていたジェームズとシリウスは、思わず笑うのを止め顔を真っ青に染めた。
二人は慌てて逃げようとしたが、身体が動かない。麗の所為だ。
視線を麗の方に向ければ、麗が怖いくらいにニッコリと微笑んでいた。
そして二人の横には知らぬ間に洋服を着た楓が立っていた。
「「…ぇ゙……」」
「麗から見届けろと言われた…まぁ、精々頑張れよ」
店の外ではリーマスと翡翠が笑い転げていて、その脇でリリーは呆れ顔…ピーターはオロオロと慌てふためいていた。
セブルスを離した麗は二人に歩み寄ると、再びニッコリと微笑んだ。
『精々頑張りなさいね』
そう言い残した麗は、セブルスと手を繋いで店から出て行った。
肌を刺す寒さが増した様な感じがした。
本屋を出た勢いでセブルスを連れてホグワーツに帰った麗は、グリフィンドールの麗の部屋のリビングのソファーに腰を落ち着けた。
『御免ね、セブルス』
「大丈夫だ」
『どっか痛い所ある?』
「大丈夫だ」
麗は“大丈夫だ”とだけ繰り返すセブルスを黙って抱き締めた。
「麗…」
『御免ね…セブルス』
セブルスは自分に抱き付いている麗の頭を優しく撫でてやった。それが麗を安心させる方法の一つだと知っているからだ。
少しすると美味しそうな香りが漂い、キッチンから人型の蒼が紅茶を運んで来た。
「麗…茶が入った」
『有難う、蒼』
セブルスはテーブルにトレーを置く蒼を見ながら麗に尋ねた。
「蒼…あの鷹か?」
「言ってなかったのか?」
『うん、どっちにしろセブルスなら大丈夫だもの。秘密にしてね、セブルス』
「あぁ…分かった」
セブルスはそう頷くと、蒼の入れた紅茶を一口飲んだ。
「……」
「美味しいでしょ?蒼ったら結構上手いのよ」
「あぁ…」
瞬間、扉を開け放つ音と共に翡翠の楽しそうな声が広い室内に響いた。
「只今~麗、帰ってるかー?」
何か良い事でもあったのだろうか。
聞きたいが、今はそんな事よりフォローしなければならない事がある。
“只今”と言って翡翠が帰って来れば、勘の良いセブルスは私達が同室だという事に気付くだろう。
家族と認識されてい無い男女が同室なのはまずい。
『……セブルス、これも秘密に』
「…分かった」
「何だ、セブルス居たのか」
麗に歩み寄った翡翠は、そう口にすると、麗のティーカップを取り、まだ温かい紅茶を口にした。
そんな翡翠を横目に、セブルスは飲みかけの紅茶を全て飲み干すと立ち上がった。
「帰る」
『送って行こうか?』
「いや、そのうちポッター達が本を運んでくる…部屋に居ろ」
全く…
優しいんだから…
『有難う』
麗は嬉しそうに微笑むと、部屋の裏側に作られた隠し通路を通り、階段までセブルスを送った。
『じゃあ、サブ…っ』
瞬間、ふらついた麗の身体をセブルスが肩を抱く様にして支え、麗は困った様に笑った。
『有難う』
「大丈夫か?」
『大丈夫、ちょっと寝不足なだけよ…じゃあ、セブルス、水曜にね』
麗は週に二日、セブルスに魔法薬を教えてもらっていた。知識とはいうモノはいくら得ても足りないものだ。
小さく手を振り、セブルスを見送っていると二つの声が廊下に響いた。
「「麗!!!」」
声がした方を見ると、ジェームズとシリウス…そして楓とリーマスがこちらに向かって歩いて来ていた。
『リリーとピーターは?』
「先に帰ったよ…ピーターが宿題で分からないところがあるんだって」
『そうなの?ピーターはいつも真面目ね』
談話室を通ってこなかったので気付かなかった。
リーマスは麗の近くまで歩いてくるとニッコリ微笑んだ。
『御帰り、リーマス』
「ただいま、麗」
「麗、只今帰りました」
『御帰り、楓…ちゃんと魔法を使わせずに持たせたのね』
身体を引き摺る様にしてこちらに向かって歩いて来ているジェームズとシリウスは、本を両手に抱え背に背負い、更には本がドッサリ積まれたカートを引いている。
「魔法を使わせては罰にならないと思ったので……麗もこれを望んだのでしょう?」
そう言いつつ微かに妖笑する楓を見た麗はクスクス笑いながら答えた。
『まぁ、そうだけど』
麗が笑っているとリーマスが麗の手を取った。
「麗、中でお茶にしよう?」
『そうだね…ジェームズ、シリウスもう魔法使って良いよ!!私の部屋で御茶にしよう!』
麗はリーマスと楓の手を取ると、二人の手を引きながらグリフィンドール寮内に入って行った。
そしてそれを見て安心したジェームズとシリウスも魔法で本を運びながら麗の部屋へと足早に向かった。
罰を与える為とはいえ買い過ぎたらしい…
“砕覇”と“西煌”の為に空けていた部屋が一部屋、書庫になってしまった。
最悪、此の書庫が私の寝室になりそうだ。
後日、麗はセブルスに一冊の本を贈った…
それが何を意味するのかは…
また別の話──…
“邪魔するな”
私は確かにそう言った。
「押すなって!!」
「えー、だって見えないんだよ 」
「んな事言ったって麗にバレちまうだろ!」
「あはは、君達もう気付かれてると思うよ」
リーマスの言う通りだ。
……と言うか、こんなに賑やかな尾行をされて気付かない方がおかしい。
「翡翠、クレープありがとう」
「別に。ピーターも食うか?」
「ぁ、ぁぁありがとう!」
「翡翠!僕のは?」
「無い」
「何でだよ!リリーとピーターのだけかい?!」
「他に買う必要あるか?」
「え、やだ、本気だよこの人…冗談じゃ無いのか」
「あぁ、セブルスに買ってやるか」
「あはは、酷いねぇ」
「君、僕ら三人に対して冷たくないか」
「え、必要無いだろ」
「うっわー…また本気だよ、この人」
「お前ら煩ぇつってんだろ!」
「いやシリウス、君そんな事言ってないよ」
いやもう皆煩いよ。
静かな休日の予定だったのになぁ…
=約束の本=
冷たい風が肌を刺す冬のホグズミード…
寒さ対策にローブを羽織った麗とセブルスは、約束通り本屋巡りをしていた。オマケ付きで。
『御免ね、セブ…』
「麗の所為じゃ無いだろ」
麗は本を読むふりをし、後ろの様子を窺った。
さっきからジェームズ達がコソコソ後をつけてくるのだ。トラップを仕掛けながら…
今の所、麗とセブルスはトラップを全て壊して進んでいる。易々と掛ってやる必要は無い。
麗は再び後ろの様子を伺おうとしたが、面倒臭くなって術を使い出した。目で見なくても頭の中に直接ジェームズ達の映像が流れてくる。
そしてセブルスは隣りで完璧に後ろを無視していた。
『でも…御免ね』
セブルスは何も言わず唯、麗の頭を優しく撫でた。
瞬間、セブルスの上に本棚から大量の本がドサドサと音を立てながら落ちてきた。
『セブルス!』
「痛…ッ…」
『セブ…!』
麗は慌てて本の山を退かすとセブルスを抱き締める様にして庇い、本棚の陰で笑いを堪えている二人を睨み付けた。
『店員さん…』
「は、はい…」
麗は物音を聞き付けやって来た店員にそう言って笑顔を向けた。
『ここの本棚と…後、あっちのとそこの本棚の本、全部いただきます』
「ぁ、はい、分かりました!」
麗は慌てて魔法で本を纏める店員の手に手を添え、魔法を使うのを止めさせた。
『纏めなくても…後、送ってもらわなくても大丈夫ですよ。あそこの二人が纏めて運んで帰ってくれますから』
堪えきれなくなってゲラゲラと笑っていたジェームズとシリウスは、思わず笑うのを止め顔を真っ青に染めた。
二人は慌てて逃げようとしたが、身体が動かない。麗の所為だ。
視線を麗の方に向ければ、麗が怖いくらいにニッコリと微笑んでいた。
そして二人の横には知らぬ間に洋服を着た楓が立っていた。
「「…ぇ゙……」」
「麗から見届けろと言われた…まぁ、精々頑張れよ」
店の外ではリーマスと翡翠が笑い転げていて、その脇でリリーは呆れ顔…ピーターはオロオロと慌てふためいていた。
セブルスを離した麗は二人に歩み寄ると、再びニッコリと微笑んだ。
『精々頑張りなさいね』
そう言い残した麗は、セブルスと手を繋いで店から出て行った。
肌を刺す寒さが増した様な感じがした。
本屋を出た勢いでセブルスを連れてホグワーツに帰った麗は、グリフィンドールの麗の部屋のリビングのソファーに腰を落ち着けた。
『御免ね、セブルス』
「大丈夫だ」
『どっか痛い所ある?』
「大丈夫だ」
麗は“大丈夫だ”とだけ繰り返すセブルスを黙って抱き締めた。
「麗…」
『御免ね…セブルス』
セブルスは自分に抱き付いている麗の頭を優しく撫でてやった。それが麗を安心させる方法の一つだと知っているからだ。
少しすると美味しそうな香りが漂い、キッチンから人型の蒼が紅茶を運んで来た。
「麗…茶が入った」
『有難う、蒼』
セブルスはテーブルにトレーを置く蒼を見ながら麗に尋ねた。
「蒼…あの鷹か?」
「言ってなかったのか?」
『うん、どっちにしろセブルスなら大丈夫だもの。秘密にしてね、セブルス』
「あぁ…分かった」
セブルスはそう頷くと、蒼の入れた紅茶を一口飲んだ。
「……」
「美味しいでしょ?蒼ったら結構上手いのよ」
「あぁ…」
瞬間、扉を開け放つ音と共に翡翠の楽しそうな声が広い室内に響いた。
「只今~麗、帰ってるかー?」
何か良い事でもあったのだろうか。
聞きたいが、今はそんな事よりフォローしなければならない事がある。
“只今”と言って翡翠が帰って来れば、勘の良いセブルスは私達が同室だという事に気付くだろう。
家族と認識されてい無い男女が同室なのはまずい。
『……セブルス、これも秘密に』
「…分かった」
「何だ、セブルス居たのか」
麗に歩み寄った翡翠は、そう口にすると、麗のティーカップを取り、まだ温かい紅茶を口にした。
そんな翡翠を横目に、セブルスは飲みかけの紅茶を全て飲み干すと立ち上がった。
「帰る」
『送って行こうか?』
「いや、そのうちポッター達が本を運んでくる…部屋に居ろ」
全く…
優しいんだから…
『有難う』
麗は嬉しそうに微笑むと、部屋の裏側に作られた隠し通路を通り、階段までセブルスを送った。
『じゃあ、サブ…っ』
瞬間、ふらついた麗の身体をセブルスが肩を抱く様にして支え、麗は困った様に笑った。
『有難う』
「大丈夫か?」
『大丈夫、ちょっと寝不足なだけよ…じゃあ、セブルス、水曜にね』
麗は週に二日、セブルスに魔法薬を教えてもらっていた。知識とはいうモノはいくら得ても足りないものだ。
小さく手を振り、セブルスを見送っていると二つの声が廊下に響いた。
「「麗!!!」」
声がした方を見ると、ジェームズとシリウス…そして楓とリーマスがこちらに向かって歩いて来ていた。
『リリーとピーターは?』
「先に帰ったよ…ピーターが宿題で分からないところがあるんだって」
『そうなの?ピーターはいつも真面目ね』
談話室を通ってこなかったので気付かなかった。
リーマスは麗の近くまで歩いてくるとニッコリ微笑んだ。
『御帰り、リーマス』
「ただいま、麗」
「麗、只今帰りました」
『御帰り、楓…ちゃんと魔法を使わせずに持たせたのね』
身体を引き摺る様にしてこちらに向かって歩いて来ているジェームズとシリウスは、本を両手に抱え背に背負い、更には本がドッサリ積まれたカートを引いている。
「魔法を使わせては罰にならないと思ったので……麗もこれを望んだのでしょう?」
そう言いつつ微かに妖笑する楓を見た麗はクスクス笑いながら答えた。
『まぁ、そうだけど』
麗が笑っているとリーマスが麗の手を取った。
「麗、中でお茶にしよう?」
『そうだね…ジェームズ、シリウスもう魔法使って良いよ!!私の部屋で御茶にしよう!』
麗はリーマスと楓の手を取ると、二人の手を引きながらグリフィンドール寮内に入って行った。
そしてそれを見て安心したジェームズとシリウスも魔法で本を運びながら麗の部屋へと足早に向かった。
罰を与える為とはいえ買い過ぎたらしい…
“砕覇”と“西煌”の為に空けていた部屋が一部屋、書庫になってしまった。
最悪、此の書庫が私の寝室になりそうだ。
後日、麗はセブルスに一冊の本を贈った…
それが何を意味するのかは…
また別の話──…