第1章 始マリノ謳
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19
「人間の為に削るか…力は麻痺しててもやっぱ変わんねぇな」
そう言うと、麗はただ困った様に笑った。
頭上を飛ぶ蒼と廊下を駆ける麗…
二人を見送った翡翠は、グッと拳を握った。
分かってた。
麗からしたら普通を味わえるこの世界も、所詮は普通の人の世界では無い。
危険が伴うのも…こういう状況で麗が首を突っ込まないわけが無い事も…
全て分かっていた。
「相変わらず……馬鹿な奴だ…」
でもそんなアイツを…馬鹿が付くくらいお人好しで、我が儘なアイツを…
どうしようもなく好きな事も…
全て分かっていた事だ──…
=変わらないもの=
朝の大広間で麗は自分の分の朝食をフォークで突きながらどこに隠れようか考えていた。
クィディッチに出無い為に。
対戦相手はスリザリン…それが何を示すかを麗は知っていた。
スリザリンのチームの中にはルシウスやレギュラス、ラバスタン等のファンがいて、麗は彼女等に目の敵にされていた。
対戦で当たる度に何かしら起きるトラブル…今回も何かある筈だ。
『…どこに隠れようかな』
「隠れるのか?」
フォークを取り落しそうになりながら振り向くと、シリウスがニコニコ笑いながら立っていた。
『いや…その……』
「俺と一緒にサボろうぜ!」
『は…?』
予想外の展開だった。
一緒に…
『うん、是非一緒に』
「何言ってるんだい、麗?」
『ッ…』
声のした方を見ると、ジェームズがニッコリ笑いながら立っていた。その笑顔が怪しい。
『ジェームズ…』
「ジェームズ、邪魔するなよ」
「麗、君がいなくなると僕のチームがどうなるか分かってるよね?」
ジェームズはシリウスを無視すると、いつもとは違う笑みを浮かべて話し続けた。
ジェームズがリーマスみたいになってる…
『も、もちろ…』
「そうだ!」
『え?』
「“麗が逃げようとしている”ってシーラに言ってみようか?」
『や、やゃゃ止めて!!』
麗は凄い勢いで首を横に振り、ジェームズの提案を拒否した。
シーラは可愛い顔してかなり恐い…あの子を怒らせたらとんでもない事になる。きっと。
『シーラには内密に…試合ちゃんと出るから!!』
シーラを怒らせるなら試合に出た方がましだ。
麗の言葉を聞いたジェームズは唯ニコニコと笑い続けてる。
何か変だ。後ろに何か隠して…
『ま…まさか、シーラがいる…の?』
瞬間、楽しそうに微笑むジェームズの後ろからツインテールの可愛い女の子が栗鼠の様に顔を出した。シーラだ。
「おはよう、私の麗!実に清々しい朝ね…そして素晴らしくクィディッチ日和の素敵な朝だわ!」
シーラはフフフッと可愛いらしく微笑むと、ジェームズの前に出て麗を見据えた。
『ぉ…御早う御座います、御姉様』
「おはよう、私の妹
まさかサボろう何て考えてやしないわよね…リザは兎も角、貴女と私が組んでこそのグリフィンドールのチェイサーだものね」
『も、勿論よ、シーラ』
もう駄目だ…逃げたら何が起るか分からない。
「良かったわ。貴方が試合に出なかったらあらゆる手を使ってスリザリンを叩きのめした挙句、全て貴女の所為にするわね、麗」
そんな…ルシウス達のファンだけではなくスリザリン生全員の恨みなんて買いたく無い。
当の本人達やセブルスは味方してくれそうだけど…
「序でにルシウス・マルフォイに貴女からだと言ってラブレターを渡しちゃうわよ」
『今日の試合、何をしても勝ちましょうね、御姉様!』
ラブレターって…そんな事したらルシウスに何を言われるか。冗談ととるか本気ととるか…どっちにしろ嫌な予感しかしない。
「麗、サボろうぜ…?」
シリウス…サボりたいのはやまやまなんだけど…これは無理だ。
シーラは麗を背に庇う様にシリウスの前に立ちはだかると、馬鹿にした様に鼻で笑った。
「何、私の大事な妹に言い寄ってんのかしら?小僧は引っ込んでなさい」
「小僧じゃねぇ。麗は試合出たく無いんだろ?」
『まぁ…』
「麗は私を選ぶわよ。悔しかったら恋人にでもなってみせるのね!貴方を選んでくれるかもしれないわよ?まぁ、邪魔してやるけども」
凄い自信ですね、御姉様。と言うか恋人って…シリウスも相手が私では不服であろうに。
麗は喧嘩に夢中な二人と、側で楽しそうに見ているジェームズを置いてそっと大広間を後にした。
クィディッチの支度があるし、何より蒼に朝食を作らなくてはならないから二人の喧嘩を楽しんでいる訳にはいかない。
部屋に帰って支度をした麗は、蒼の朝食を作ると、直接会場へと向かった。
《スリザリン、ゴール!!スリザリンに10点追加、30対50でグリフィンドールがリード!!》
試合中の球場には実況者の声が良く響く。
此の時代の実況者はレイブンクローの生徒らしい。緑の瞳が綺麗な青年だった。
《グリフィンドールのチェイサー、リザがクアッフルを持ちゴールに突っ込んで行きます!!あ、スリザリン奪い取った!!何してんだ、この野郎!!》
「マクスウェル!!」
そうミネルバが実況者“マクスウェル”を怒鳴りつけた。此の時代の実況者は愉快で…スリザリンが嫌いらしい。
《スミマセン、つい本音が…あ!グリフィンドールのチェイサー、シーラが奪い返しました!!行けシーラ、やっつけろ!!》
「マクスウェル!!」
《失礼、先生》
リーに似ている…未来の親族かしら?
「麗、行くわよ!!」
「ねぇ、早く終わらせて遊びましょ~よ、麗」
『はい、姉様方!』
《シーラが麗にクアッフルをパス!リザに回りました!!ぁ、また戻…シーラに戻った!!三人共、次々にスリザリン生を抜いて行きます!!》
「「麗、シュート!!」」
シーラの手にあったクアッフルが麗に向かって勢い良く投げられ、麗は箒の柄を掴んで跳ぶと、飛んできたクアッフルを箒の柄で殴り飛ばした。そして素早く箒の上に座りなおす。
瞬間、麗は素早く羽ばたく金色の物体を見つけた。
《やった!!麗カッコイイ〜!!!》
「マクスウェル」
《失礼…グリフィンドール、ゴール!!!10点追加、30対60でグリフィンドールがリード!!!》
『ジェームズ!』
決められた様にジェスチャーをすれば、ジェームズは直ぐに降下を始めた。
《ポッターがスニッチを発見!!スリザリンのシーカー、ジョンソンが後を追います!追い付くなよ、コラ!!!》
「追い出しますよ、マクスウェル!」
《すみません、せんせ…あ!!ポッターがスニッチをキャッチ!30対210でグリフィンドールの勝利!!!ざまぁみろ、この野郎!!》
「マクスウェル!!!」
ミネルバに怒鳴られたマクスウェルは、グリフィンドールの勝利を見届けると慌てて逃げて行った。
良く分からないが、此の時代の実況者も個性的で素敵だ。
「麗!!」
地に降りた瞬間、シーラが麗に近寄り抱き付いた。後ろにはリザもいる。
『シーラ、危な…』
「離れなさいよ、ちびっ子」
「煩いわよ、リザ!!」
シーラは凄い勢いでりさを振り返ると、睨み付けた。
しかしそれ位の事で動じるリザでは無い。
「私の麗が潰れちゃうじゃない」
「あんたのじゃ無いわよ!!」
“リザ・ミリッツ”はシーラと同い年でありチェイサー仲間であり、シーラの悪友だ。二人が仲の良い所何て誰も見た事が無い。
更には麗を溺愛しているもう一人の姉代わりでもある。
シーラがリザの綺麗なブロンドを引っ張り出し、麗は漸く喧嘩を止めに入った。
『姉様方、喧嘩は…』
「麗!!」
遠くからの声に反応し、そちらを向くとジェームズがこちらに向かって来ていた。
麗は自分に抱き付いたままリザと喧嘩をしているシーラを剥がすと、ジェームズに歩み寄った。
『ジェームズ、凄くかっこ良かったよ』
「ありがとう、麗」
「そういえば、麗…」
ジェームズと話ていると、後ろからそう声が掛かった。シーラだ。
「麗、貴女…本気出さなかったわね?」
「あー…確かに飛行にキレが無かったわよね」
手抜きがバレた。リザは兎も角、シーラが怖い。
顔は微笑んでいるが、心無しか目元が笑って無い気がする…
「次、手ぇ抜いたら只じゃおかないわよ」
『……はい…御姉様』
取敢えず初試合、終了。
“今度からは余計な事は考えないで真面目にやろう”と心に決めた麗は、部屋に帰ると夕食を蒼と二人で部屋で取り、洗い物を済ませると、リビングのソファーに倒れ込んだ。
『疲れた…かも』
「御疲れ」
人型の蒼が紅茶を入れて運んで来てくれ、麗は素直にそれを受け取った。
『有難う、蒼…翡翠は?』
「クィディッチの試合の後、森に向かってたぞ…また散歩序でに森で寝てるんじゃないか?」
『起こしに行かないとね…』
翡翠は一度眠ると中々起きないから…でも、それよりも気になる事が一つある。
『蒼…試合見てたよね?』
「………まぁな」
不思議な事に、蒼にしてはあっさり薄情した。
麗は紅茶を一口、口にすると、口を開いた。
『どこから見てたの?』
「………秘密だ」
『秘密って…』
「麗!!」
瞬間、酷く慌てた声色のミネルバの声が煖炉から部屋中に響き渡った。明らかに様子が可笑しい。
『…どうしたの、ミネルバ?』
「何かが数体、校内に侵入しました!」
侵入…何かが?何が起きたらその様な状況になるんだろうか。
でもこの間、トムが…
『ミネルバ、私…』
「アルバスは魔法省に出掛けています!今から何が何体侵入したかを確認しますから、麗は私の代わりにグリフィンドール生が全員居るか確認し、居ない生徒を保護してください。可能なら翡翠に寮の警護も」
『他の寮は?』
「それぞれ寮監の先生が付いています。しかし侵入者が何者か分からなければ寮からは動けません…他の寮生も発見次第保護してください!」
『分かった。行くよ、蒼!!』
麗は鷹に戻った蒼を肩に乗せると部屋を飛び出し、階段を使わずに談話室に向かって吹き抜けを飛び降りた。
此の時間、寮から出ている生徒は少ない。
全員揃ってると良いんだけど…
「麗…」
飛び降りてきた麗に驚いている生徒達と驚きながらも声を掛けたピーターを無視し、麗は声を張り上げた。
『各部屋、同室者が全員寮内に揃ってるかを至急確認し、私に報告して!!緊急事態よ!!』
麗の声を聞いて一瞬ピタリと動きを止めた生徒達は、直ぐに慌ただしく動き出した。
全部屋確認した結果、居ないのはジェームズ、リーマス、シリウス、リリー、翡翠の五人…
ピーターの話では“仕掛人の三人は悪戯を仕掛けに行き、リリーは自分に勉強を教えていたが三人の帰りが遅い為、捜しに行った”との事だった。
ピーターの話を聞いていたその時、丁度良く翡翠が帰ってきた。
翡翠はいつもとは空気の違う寮内を不思議に思い、麗に駆け寄った。
「どうした、麗?」
『緊急事態よ…』
「緊急…?」
いくら私の上げた術具を持っていようとも、もし侵入したのが死喰い人 だったら仕掛人達とリリーでは戦えない。
第一、他の寮生にも外に出ている者がいるかもしれないのだ。
『皆、今から連絡が入るまで寮から絶対に出無い事!!翡翠の指示に従うのよ!』
麗は皆に指示を出すと、蒼を肩に乗せたまま寮の出入口へ向かう。翡翠は慌ててそれに続いた。
「おい麗、待てよ!!何で俺が」
『翡翠、御願い…皆を見てて』
「何で俺が!!俺も行く!!」
『待ってなさい!!』
「嫌だ!!」
『……生徒を回収しに行くだけよ…何も問題は無いでしょ?』
「前の麗だったらな…だが今のお前は力が麻痺してるだろ!」
『問題無いわ。貴方は残りなさい、翡翠』
言い合いを続けている内に寮の出入口を出てしまい、翡翠は麗の肩を掴んで引き寄せた。
「俺は麗の守護神だ!!俺はお前を護る為の存在だ!」
『待ってろと言ってるんだ!!翡翠、これは頼みじゃ無い…主たる私の命令だ!!名で私を縛らせるな!!』
「ッ……」
契約の鎖…それがある限り主の命令は絶対だ。家族といえど逆らう事は許されない。
『御免ね、翡翠…私は一人で大丈夫だから…一番信頼してる貴方に此処を任せるの。皆を護って、翡翠』
「今日だけだ。そんな命令…聞いてやるのは今日だけだ」
『有難う、翡翠。大丈夫だから…皆を御願いね』
何かあって全員を護れるのは翡翠だけだ。
蒼は正体がバレてしまう為、残れ無い。
「……おい、馬鹿鳥」
「…何だ」
「絶対に護れよ」
「言われなくとも」
麗と蒼は翡翠を寮に残して…
夜の校内に消えて行った。
「人間の為に削るか…力は麻痺しててもやっぱ変わんねぇな」
そう言うと、麗はただ困った様に笑った。
頭上を飛ぶ蒼と廊下を駆ける麗…
二人を見送った翡翠は、グッと拳を握った。
分かってた。
麗からしたら普通を味わえるこの世界も、所詮は普通の人の世界では無い。
危険が伴うのも…こういう状況で麗が首を突っ込まないわけが無い事も…
全て分かっていた。
「相変わらず……馬鹿な奴だ…」
でもそんなアイツを…馬鹿が付くくらいお人好しで、我が儘なアイツを…
どうしようもなく好きな事も…
全て分かっていた事だ──…
=変わらないもの=
朝の大広間で麗は自分の分の朝食をフォークで突きながらどこに隠れようか考えていた。
クィディッチに出無い為に。
対戦相手はスリザリン…それが何を示すかを麗は知っていた。
スリザリンのチームの中にはルシウスやレギュラス、ラバスタン等のファンがいて、麗は彼女等に目の敵にされていた。
対戦で当たる度に何かしら起きるトラブル…今回も何かある筈だ。
『…どこに隠れようかな』
「隠れるのか?」
フォークを取り落しそうになりながら振り向くと、シリウスがニコニコ笑いながら立っていた。
『いや…その……』
「俺と一緒にサボろうぜ!」
『は…?』
予想外の展開だった。
一緒に…
『うん、是非一緒に』
「何言ってるんだい、麗?」
『ッ…』
声のした方を見ると、ジェームズがニッコリ笑いながら立っていた。その笑顔が怪しい。
『ジェームズ…』
「ジェームズ、邪魔するなよ」
「麗、君がいなくなると僕のチームがどうなるか分かってるよね?」
ジェームズはシリウスを無視すると、いつもとは違う笑みを浮かべて話し続けた。
ジェームズがリーマスみたいになってる…
『も、もちろ…』
「そうだ!」
『え?』
「“麗が逃げようとしている”ってシーラに言ってみようか?」
『や、やゃゃ止めて!!』
麗は凄い勢いで首を横に振り、ジェームズの提案を拒否した。
シーラは可愛い顔してかなり恐い…あの子を怒らせたらとんでもない事になる。きっと。
『シーラには内密に…試合ちゃんと出るから!!』
シーラを怒らせるなら試合に出た方がましだ。
麗の言葉を聞いたジェームズは唯ニコニコと笑い続けてる。
何か変だ。後ろに何か隠して…
『ま…まさか、シーラがいる…の?』
瞬間、楽しそうに微笑むジェームズの後ろからツインテールの可愛い女の子が栗鼠の様に顔を出した。シーラだ。
「おはよう、私の麗!実に清々しい朝ね…そして素晴らしくクィディッチ日和の素敵な朝だわ!」
シーラはフフフッと可愛いらしく微笑むと、ジェームズの前に出て麗を見据えた。
『ぉ…御早う御座います、御姉様』
「おはよう、私の
まさかサボろう何て考えてやしないわよね…リザは兎も角、貴女と私が組んでこそのグリフィンドールのチェイサーだものね」
『も、勿論よ、シーラ』
もう駄目だ…逃げたら何が起るか分からない。
「良かったわ。貴方が試合に出なかったらあらゆる手を使ってスリザリンを叩きのめした挙句、全て貴女の所為にするわね、麗」
そんな…ルシウス達のファンだけではなくスリザリン生全員の恨みなんて買いたく無い。
当の本人達やセブルスは味方してくれそうだけど…
「序でにルシウス・マルフォイに貴女からだと言ってラブレターを渡しちゃうわよ」
『今日の試合、何をしても勝ちましょうね、御姉様!』
ラブレターって…そんな事したらルシウスに何を言われるか。冗談ととるか本気ととるか…どっちにしろ嫌な予感しかしない。
「麗、サボろうぜ…?」
シリウス…サボりたいのはやまやまなんだけど…これは無理だ。
シーラは麗を背に庇う様にシリウスの前に立ちはだかると、馬鹿にした様に鼻で笑った。
「何、私の大事な妹に言い寄ってんのかしら?小僧は引っ込んでなさい」
「小僧じゃねぇ。麗は試合出たく無いんだろ?」
『まぁ…』
「麗は私を選ぶわよ。悔しかったら恋人にでもなってみせるのね!貴方を選んでくれるかもしれないわよ?まぁ、邪魔してやるけども」
凄い自信ですね、御姉様。と言うか恋人って…シリウスも相手が私では不服であろうに。
麗は喧嘩に夢中な二人と、側で楽しそうに見ているジェームズを置いてそっと大広間を後にした。
クィディッチの支度があるし、何より蒼に朝食を作らなくてはならないから二人の喧嘩を楽しんでいる訳にはいかない。
部屋に帰って支度をした麗は、蒼の朝食を作ると、直接会場へと向かった。
《スリザリン、ゴール!!スリザリンに10点追加、30対50でグリフィンドールがリード!!》
試合中の球場には実況者の声が良く響く。
此の時代の実況者はレイブンクローの生徒らしい。緑の瞳が綺麗な青年だった。
《グリフィンドールのチェイサー、リザがクアッフルを持ちゴールに突っ込んで行きます!!あ、スリザリン奪い取った!!何してんだ、この野郎!!》
「マクスウェル!!」
そうミネルバが実況者“マクスウェル”を怒鳴りつけた。此の時代の実況者は愉快で…スリザリンが嫌いらしい。
《スミマセン、つい本音が…あ!グリフィンドールのチェイサー、シーラが奪い返しました!!行けシーラ、やっつけろ!!》
「マクスウェル!!」
《失礼、先生》
リーに似ている…未来の親族かしら?
「麗、行くわよ!!」
「ねぇ、早く終わらせて遊びましょ~よ、麗」
『はい、姉様方!』
《シーラが麗にクアッフルをパス!リザに回りました!!ぁ、また戻…シーラに戻った!!三人共、次々にスリザリン生を抜いて行きます!!》
「「麗、シュート!!」」
シーラの手にあったクアッフルが麗に向かって勢い良く投げられ、麗は箒の柄を掴んで跳ぶと、飛んできたクアッフルを箒の柄で殴り飛ばした。そして素早く箒の上に座りなおす。
瞬間、麗は素早く羽ばたく金色の物体を見つけた。
《やった!!麗カッコイイ〜!!!》
「マクスウェル」
《失礼…グリフィンドール、ゴール!!!10点追加、30対60でグリフィンドールがリード!!!》
『ジェームズ!』
決められた様にジェスチャーをすれば、ジェームズは直ぐに降下を始めた。
《ポッターがスニッチを発見!!スリザリンのシーカー、ジョンソンが後を追います!追い付くなよ、コラ!!!》
「追い出しますよ、マクスウェル!」
《すみません、せんせ…あ!!ポッターがスニッチをキャッチ!30対210でグリフィンドールの勝利!!!ざまぁみろ、この野郎!!》
「マクスウェル!!!」
ミネルバに怒鳴られたマクスウェルは、グリフィンドールの勝利を見届けると慌てて逃げて行った。
良く分からないが、此の時代の実況者も個性的で素敵だ。
「麗!!」
地に降りた瞬間、シーラが麗に近寄り抱き付いた。後ろにはリザもいる。
『シーラ、危な…』
「離れなさいよ、ちびっ子」
「煩いわよ、リザ!!」
シーラは凄い勢いでりさを振り返ると、睨み付けた。
しかしそれ位の事で動じるリザでは無い。
「私の麗が潰れちゃうじゃない」
「あんたのじゃ無いわよ!!」
“リザ・ミリッツ”はシーラと同い年でありチェイサー仲間であり、シーラの悪友だ。二人が仲の良い所何て誰も見た事が無い。
更には麗を溺愛しているもう一人の姉代わりでもある。
シーラがリザの綺麗なブロンドを引っ張り出し、麗は漸く喧嘩を止めに入った。
『姉様方、喧嘩は…』
「麗!!」
遠くからの声に反応し、そちらを向くとジェームズがこちらに向かって来ていた。
麗は自分に抱き付いたままリザと喧嘩をしているシーラを剥がすと、ジェームズに歩み寄った。
『ジェームズ、凄くかっこ良かったよ』
「ありがとう、麗」
「そういえば、麗…」
ジェームズと話ていると、後ろからそう声が掛かった。シーラだ。
「麗、貴女…本気出さなかったわね?」
「あー…確かに飛行にキレが無かったわよね」
手抜きがバレた。リザは兎も角、シーラが怖い。
顔は微笑んでいるが、心無しか目元が笑って無い気がする…
「次、手ぇ抜いたら只じゃおかないわよ」
『……はい…御姉様』
取敢えず初試合、終了。
“今度からは余計な事は考えないで真面目にやろう”と心に決めた麗は、部屋に帰ると夕食を蒼と二人で部屋で取り、洗い物を済ませると、リビングのソファーに倒れ込んだ。
『疲れた…かも』
「御疲れ」
人型の蒼が紅茶を入れて運んで来てくれ、麗は素直にそれを受け取った。
『有難う、蒼…翡翠は?』
「クィディッチの試合の後、森に向かってたぞ…また散歩序でに森で寝てるんじゃないか?」
『起こしに行かないとね…』
翡翠は一度眠ると中々起きないから…でも、それよりも気になる事が一つある。
『蒼…試合見てたよね?』
「………まぁな」
不思議な事に、蒼にしてはあっさり薄情した。
麗は紅茶を一口、口にすると、口を開いた。
『どこから見てたの?』
「………秘密だ」
『秘密って…』
「麗!!」
瞬間、酷く慌てた声色のミネルバの声が煖炉から部屋中に響き渡った。明らかに様子が可笑しい。
『…どうしたの、ミネルバ?』
「何かが数体、校内に侵入しました!」
侵入…何かが?何が起きたらその様な状況になるんだろうか。
でもこの間、トムが…
『ミネルバ、私…』
「アルバスは魔法省に出掛けています!今から何が何体侵入したかを確認しますから、麗は私の代わりにグリフィンドール生が全員居るか確認し、居ない生徒を保護してください。可能なら翡翠に寮の警護も」
『他の寮は?』
「それぞれ寮監の先生が付いています。しかし侵入者が何者か分からなければ寮からは動けません…他の寮生も発見次第保護してください!」
『分かった。行くよ、蒼!!』
麗は鷹に戻った蒼を肩に乗せると部屋を飛び出し、階段を使わずに談話室に向かって吹き抜けを飛び降りた。
此の時間、寮から出ている生徒は少ない。
全員揃ってると良いんだけど…
「麗…」
飛び降りてきた麗に驚いている生徒達と驚きながらも声を掛けたピーターを無視し、麗は声を張り上げた。
『各部屋、同室者が全員寮内に揃ってるかを至急確認し、私に報告して!!緊急事態よ!!』
麗の声を聞いて一瞬ピタリと動きを止めた生徒達は、直ぐに慌ただしく動き出した。
全部屋確認した結果、居ないのはジェームズ、リーマス、シリウス、リリー、翡翠の五人…
ピーターの話では“仕掛人の三人は悪戯を仕掛けに行き、リリーは自分に勉強を教えていたが三人の帰りが遅い為、捜しに行った”との事だった。
ピーターの話を聞いていたその時、丁度良く翡翠が帰ってきた。
翡翠はいつもとは空気の違う寮内を不思議に思い、麗に駆け寄った。
「どうした、麗?」
『緊急事態よ…』
「緊急…?」
いくら私の上げた術具を持っていようとも、もし侵入したのが
第一、他の寮生にも外に出ている者がいるかもしれないのだ。
『皆、今から連絡が入るまで寮から絶対に出無い事!!翡翠の指示に従うのよ!』
麗は皆に指示を出すと、蒼を肩に乗せたまま寮の出入口へ向かう。翡翠は慌ててそれに続いた。
「おい麗、待てよ!!何で俺が」
『翡翠、御願い…皆を見てて』
「何で俺が!!俺も行く!!」
『待ってなさい!!』
「嫌だ!!」
『……生徒を回収しに行くだけよ…何も問題は無いでしょ?』
「前の麗だったらな…だが今のお前は力が麻痺してるだろ!」
『問題無いわ。貴方は残りなさい、翡翠』
言い合いを続けている内に寮の出入口を出てしまい、翡翠は麗の肩を掴んで引き寄せた。
「俺は麗の守護神だ!!俺はお前を護る為の存在だ!」
『待ってろと言ってるんだ!!翡翠、これは頼みじゃ無い…主たる私の命令だ!!名で私を縛らせるな!!』
「ッ……」
契約の鎖…それがある限り主の命令は絶対だ。家族といえど逆らう事は許されない。
『御免ね、翡翠…私は一人で大丈夫だから…一番信頼してる貴方に此処を任せるの。皆を護って、翡翠』
「今日だけだ。そんな命令…聞いてやるのは今日だけだ」
『有難う、翡翠。大丈夫だから…皆を御願いね』
何かあって全員を護れるのは翡翠だけだ。
蒼は正体がバレてしまう為、残れ無い。
「……おい、馬鹿鳥」
「…何だ」
「絶対に護れよ」
「言われなくとも」
麗と蒼は翡翠を寮に残して…
夜の校内に消えて行った。