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第1章 始マリノ謳

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16





あぁ、うん…困った。



やっぱり兄弟というものは似るものなのかしら?
見た目が似ているというのは勿論、性格も行動も…何だかとても似ていて困る。

『えっと…次の次の次なら大丈夫だけど』

“それでいい?”と聞きながらは困った様に笑った。





=ハロウィーン=






その日、皆と合流したのはグリフィンドールの談話室だった。


ジェームズ達は悪戯専門店に行っていたらしく、机の上は新発売の商品や使い成れた様々な悪戯道具で一杯だった。
「で、どこ行ってたんだい?」
ジェームズが糞爆弾を弄りながらシリウスと話していたリーマスにそう訊ね、リーマスは楽しそうに微笑んだ。

「秘密だよ、ジェームズ」

リーマスとシリウスは新商品の使い道を話し合っている様だった。どこに行っていたかは秘密にしなくて良いと思うんだけど…今はそれより気になる事がある。
『ジェームズ、シリウス』
「「ん?」」


『此の大量の悪戯道具…絶対セブに使わないでね?』


まさかなと思って口に出して見たが、そのまさからしい。は黙ったままの二人をニッコリと見据えた。
『返事は?』
「……これ半分はスネイプ用なんだけど…」

『何か言った、ジェームズ?ボソボソ言って無いではっきりどうぞ』

「イエ、何デモアリマセン。でも、何でリーマスとピーターには言わないんだい?」
話を誤魔化すジェームズを前に溜め息を吐きながら、はソファーに腰掛けた。

『リーマスとピーターは言ったら聞いてくれるもん』

は脚を組むと“ね?”っと、二人の方を向いて微笑んだ。
「あ…ぅ、うん」
「勿論だよ、
リーマスは笑って答えてくれたけど…ピーターの吃りの所為でまるで脅したみたいだ。



「なになに、何の話してんのよ?」



ソファーの後ろから倒れ込む様に抱き付いてきた相手。声…よりも後頭部に当たる胸の所為で直ぐに誰か分かった。

「リーマスとピーターは良い子って話よ、シーラ姉様」

「あらやだ、良い子なんかじゃないわよ。その二人はただの腹黒と気弱」
満足そうに笑った小さなツインテールの少女は、クルリと回ると、に寄り掛かかる様にソファーの肘掛けにドサッと腰掛けた。童顔に不釣り合いな大きな胸が揺れる。
…痛く無いのかしら。
「姉様って何だよ、シーラ」
「そのまんまの意味よ。私、妹が欲しかったのよね」
「いや、どう見てもの方が姉っぽ…」


「あ゛?」


「…何デモナイデス」
「潰すわよ、シリウス」
ニッコリ笑うシーラの握り締められた拳がとても怖い。
一つ年上のシーラ・ヴァースとは、同じクィディッチのチェイサーという事で仲良くなった。可愛らしい顔と身長でどうにも年上には見えないがとても頼りになる先輩だ。
しかし彼女にも欠点がある。身体の事…特に胸の事を言われた時と…

「あら〜、こんなに散らかして何やってるの?さてはに怒られたわね〜?」

「うげ」
「ウゲとは何よ、ちびっ子」
「べっつにー」
「乳が重たいだけのチビはさっさと退きなさいよ。が重たそうじゃない」
「はぁ?」
『二人共、喧嘩は…』


「それより、


「はあぁ?それより?」
「それよりって何よ、犬っころ」
二人に凄まれビクリと肩を震わせたシリウスを見て楽しそうに笑ったは、立ち上がってシリウスの座るソファーの肘掛けに腰掛けた。
に体重を預けていたシーラがころりとソファーに転がる。
『何、シリウス?』
「今度は俺と二人でホグズミード行こうぜ」
シリウスはの手を握るとそう言ってニッコリと微笑んだ。何か……ホストみたい。実際に見た事は無いけど…多分こんな感じな気がする。
『あ──…今度の今度で良いかしら?』
の曖昧な答えにシリウスは不機嫌そうに眉を寄せた。
「今度は駄目なのか?」


「スネイプと行くんだよね、


「スネイプ…?」
不思議そうにそうポツリと呟いたシリウス越しにニッコリと微笑むリーマスが見えた。シリウスは身を乗り出す様にしてに不機嫌そうな顔を近付けた。綺麗な瞳がの瞳に合わせられる。
「俺よりスネイプか?」


「あぁ、ヤダわ嫉妬深い男」
「ヤ〜ね〜、そもそもホストっぽくて私は嫌だわ」


「うっせぇな」
は下がれるギリギリまで後退った。シリウスは声が切なげだが、顔が不思議と恐い。
『セブとの約束だから……リ、リーマス』
シリウスが恐くてリーマスに助けを求める。が、リーマスに助けを求めた後にふと“間違えだったのでは?”と言う考えが頭を掠めた。一方、助けを求められたリーマスはニッコリ微笑むとシリウスの耳元で何か囁いた。耳打ちされたシリウスは、ニヤッと口角を上げて笑うとから顔を離し、今度はニッコリと微笑んだ。

、今度の今度は俺とな!」

『ぅ、うん…分かった』
何か怪しいが、気に等していられない。
ふと目についた時計を見ると時刻が十八時過ぎだったからだ。



遅刻だ。



は勢い良く立ち上がると、慌てて階段に向かって走り出した。
、どうしたんだい?!」
後ろから掛かるジェームズの声に、は声を張り上げて答えた。

『ジェームズ、私アルバ…やる事があるのよ!急ぐから皆、また後でね!』

「ぁ、うん…?」
は一気に捲し立てると、勢い良く階段を駆け上がり、自分の部屋へと向かった。近道だ。は部屋に戻ると、翡翠と蒼を無視し、煖炉の中に飛び込んだ。そして暖炉脇のポットに入った粉を鷲掴んで撒きながら叫んだ。


『校長室!!』


身体が浮いた感覚と歪む視界。煖炉での移動に軽く酔いながらもギュッと瞑った目を開いたは目の前の光景に呆気に取られた。目の前には綺麗な黒いドレスをこちらに向けてニコニコ笑っているアルバスがいた。

部屋間違えたかしら…?

は煖炉から出ると、控え目にアルバスに問掛けた。
『御祖父様…その服は何?』
まさか着ろとか言わ無いわよね?



の今日の衣装じゃよ」



あ、やっぱり着るんだ。
『制服じゃ駄目かしら?凄く目立つし…』
「駄目じゃ」
『…着替えて来ます』
諦める事にしたは、アルバスからドレスを受けとると隣の部屋に向かった。パタンと扉を閉めると、ドレスを目の高さで広げる。

『あぁ…こんな肩も背中も丸出しでまぁ…』

“ま、良いか”そう呟くとドレスをソファーの背凭れに引っ掛けると、制服をソファーに脱ぎ捨てる。
パチンと指を鳴らして首を傾げたは、ガザゴソと脱ぎ捨てた制服を漁って杖を取り出すと、頭をトントンと二度杖先で叩いた。魔法でシュルシュルと髪を編み上げる。

『まだ麻痺してる』

溜め息を吐いたは、グッと伸びをしてもう一度息を吐くとドレスを身に纏い、ソファーの足元に置かれていたヒールを履いた。
「あぁ、終わりましたね」
『ミネル』
部屋に戻るとアルバスと、着替えているうちに来たであろうミネルバがお茶をしていた。
ミネルバはをソファーに座らせると、チョーカーを付けた。

「綺麗ですよ、

『有難う、ミネル』
宴までの時間を三人で御茶会をして過ごした。ミネルバが作ったクッキーはとても美味しく、アルバスの煎れた紅茶に良く合った。だが楽しい時間は過ぎるのが早いもので…宴の時間は直ぐにやってきた。
編入の時の様に職員用の扉の前で待たされた。
本当の事を言うと、正直うたいたく無かった。いくら魔法の効果があると言っても、は自分の歌が上手いものだとは思っていなかった。自分の歌を皆に聴かせる意味が分から無かった。

「今宵はハロウィーンの宴を行う…」

始まった。は指の腹を噛んで傷を付けると、唇をなぞって赤い線を引いた。そして目を閉じると、静かに呟く。
『七叉…楓…』



──どうした、

──敵がいる訳では無い様じゃな…主。



『誰かと話したかったの』



──なるほど…

──実にらしい呼び出しじゃ。なぁ、楓。

──はい、七尾…



の影から片膝を付いた長い黒髪を一つに結った青年と、七本の尾を持った薄茶色の毛並の狐が現れ、はしゃがみ込むと、一人と一匹を優しく抱き締めた。

『二人共、大好き』

「いつでも側に」
「そうじゃ…何も傷付けんでも」
「その通り」
『まだ麻痺してるから七叉は兎も角、楓は呼ばないと出れないかと…血は何よりも濃い』
そう何よりも…その価値は計り知れない。

「ある歌手に一曲歌って貰おうと思う」

扉越しにそうアルバスの声が聞こえた。“歌手”と言わ無いでほしい。
『上手く無いのに…』
そう呟いたの声を聞きいて青年、楓はの頬に手を添えると優しく正した。


「そんな事無い。の歌は今も昔も美しい」


「そうじゃよ、
「人間に聴かせるのは惜しいが…」
「それに“蛇の長”は反対するじゃろな」
“蛇の長”と聞き、は可笑しそうにクスクスと笑った。
『“騎龍”は私の歌を好いていてくれたからね』
そこまで話すと、は不意に笑うのを止め、哀しそうに眉を寄せた。


『社が繋がらないの』


…」
『“外”に出ていた子達と連絡が取れない…』
「主、それは」





『大量に出血すれば騎龍は来てくれるかしら』

「それは許さない」





『……』
「血の誓約により可能かもしれないが…それは駄目じゃ、主……
『……』
「蛇の長は喜ばないし、兄者が暴れる」

『もしかしたら…もう会えないかも知れないのね』

涙を流しそうなの表情を見ると、二人はそっとに寄り添った。
、我等がいます」
「そうじゃよ…、我等が共に在る」
優しい二人が好き。いつも側に居てくれる二人が私は大好きだった。
『有難う…』
は一筋の涙を流すと、再度二人を抱き締めた。



「入って来てもらおうかの」



目の前の扉がゆっくり開き、しゃがんでいたは涙を拭うと立ち上がった。
やるしか無い。そう遅い決心をしたは、二人が影の中に戻るのを確認すると、大広間に踏み出した。
ねぇ、騎龍…

私は願うよ。

誰よりも私の歌を好いてくれる貴方に届く様に…





貴方にもう一度会える様に──…










歌手…



引っ掛かる。確かもハロウィーンから歌手になる筈だ。記憶違いか?

「なぁリーマス、歌手って」

シリウスがそうリーマスに問い掛け様とした瞬間、職員用の扉が開いて漆黒のドレスを身に纏ったが姿を現した。
皆が驚いてる中、翡翠はニヤニヤ、リーマスはニコニコ笑っていた。翡翠は兎も角…リーマスの奴、が今日歌う事知ってやがったな…



「皆、知っていると思うが…・皐月嬢じゃ」



そりゃ、知ってるさ。を知らない奴の方が珍しい。
は珍しい編入生だと言う事に加え“翡翠の彼女”という噂がたった為、誰もがその存在を知っていた。逆に翡翠も“の彼氏”という噂で有名だが…まぁ、今は翡翠はどうでも良い。
兎も角、を知らない奴何か絶対にいない。


嬢は今日から歌手としてデビューする事が決まっていての…今日は宴でその歌声を披露してもらおうと思う」


瞬間、が心底嫌な顔をしたのがここからでも分かった。皆に話す事を予定していなかったのだろう。いや、ダンブルドアの事だから敢えてに言わなかっただけなのだろうが…



「では歌ってもらおうかの」



はフフフ…と微笑むと、正面を向いたままアルバスにだけに聞こえる様に小さく呟いた。
『アルバス…皆に歌手になる事を話すなんて聞いてないわよ?』
「言って無いからの」
はアルバスと目を合わせると、更にニッコリと微笑んだ。
『…死人の歌を御届けしようかしら』
「ハロウィーンだからそれも良いかもしれんの」

相手がアルバスなのを忘れていた。

『………ちゃんと歌うわ。皆、外出で疲れてるだろうから静かなもので良い?』
に任せよう」
『了解』
ダンブルドアは嬉しそうに微笑むと自分の席に着き、はそれを確認すると一歩前に踏み出した。肩に掛けたヴェールを被り、ドレスの裾を摘んで一礼する。

効力はそのままに。離れてしまった家族の為に謳おう…

伏せていた顔を上げ、姿勢を整え、目を瞑り、息を吸い…そして、謳う。
効力は癒し、詩魔法は皆に、旋律は家族に。



悲しいね、翡翠。



もう一度皆に会いたいね…
もう一度…
もう一度……


愛しい家族、皆に──…


謳い終わって目を開けると…皆、固まっていた………すべった…?
そっとグリフィンドール寮の方を見ると、ジェームズもシリウスもピーターもリリーも…皆、固まっていた。
その中で翡翠とリーマスだけがニッコリと笑っていた。



びっくりした。



前に談話室で聴いた歌とは全然違ったから…だから歌い終わってヴェールから顔を出したと目が合ってもいつもみたいに笑ってやる事が出来なかった。

リーマスはきっと笑ってやれてるだろう…

ダンブルドアが拍手をしだし、固まっていた皆がそれに倣って拍手をした。俺もその時やっと動ける様になった。
拍手を受けたは頬を赤く染めると、慌ててグリフィンドールの席に向かって駆けて来て、並んで座るリーマスと翡翠に抱き付いた。

『リーマス、翡翠…私、大丈夫だった?ちゃんと謳えてた?』

「大丈夫、綺麗だったよ」
リーマスがいつもの様にニッコリ笑い、翡翠は優しくの頭を撫でてやった。それで全てが伝わるかの様に…
、餓鬼共相手に本気で謳わなくて良いんだぜ?」
『それは失礼だよ、翡翠』

…」

『何、シリウス?あ、詩どうだった?』
思わずの名前を口に出していたらしい。
シリウスは何も言う事が出来ず、唯の頭を撫でた。



「さぁ、宴を始めようかのう」



シリウスに頭を撫でられ、理由を考えていると、そう言ったアルバスが立ち上がり、大きく手を叩いた。沢山の食べ物や飲み物が現れ、テーブルが彩られた。宴が始まる…

『翡翠、私帰るね』

そう言って翡翠から離れたは、乱れたドレスを直しながら、テーブルの上を見渡した。
「馬鹿鳥の飯か?」
『うん』
今日のメニューはカボチャパイを始め、甘い物ばかり…宴の時くらい料理はサボりたいが、蒼は甘いものが苦手だから今日のメニューは部屋に持ち帰っても蒼は食べれない。

『じゃあ、帰るね…ッ?!』

動こうとするが身体が進まない。理由は分かっていた。手に違和感を感じたからだ。
違和感のある右手を見るとシリウスの手がの手をしっかりと握っていた。
『シリウス?』
「ぁ、いや、何でもない」
『そう?』
は“じゃあね”と手を振ると、大広間を出入り口に向かって歩いた。
何人かの知り合いに捕まりながら大広間を出た瞬間、また腕を掴まれた。

『レギュラス』

振り返るとシリウスの弟、レギュラスが立っていた。
「よ、
『どうしたの、こんな所まで…』

と話がしたかったんだけど、帰るみたいだったから」

『この格好動き難いのよ』
「綺麗なのに」
は口元に手を当てるとクスクスと嬉しそうに笑った。
『有難う、レギュラス』
「歌も凄く良かった」
『まぁ、有難う』


「なぁ、。今度ホグズミード一緒に行こうよ」


『……』
え、何?何で兄弟揃って同じ事言うの?
?」
『…御免なさい、約束があるのよ』
「えー、じゃあ次の次」
『次の次も予定があるのよ』
「…じゃあ次の次の次」
『それなら大丈夫だけど』
「じゃあ、次の次の次空けといてね」
“絶対だよ”と言われては頷いた。
何かしらこれ…次次言い過ぎて分からなくなってきた。次がセブルス、その次がシリウス、更にその次がレギュラスよね……そんなにホグズミード行くのかしら?

「それとは別にデートしような」

『え?』
「この間“今度付き合って”って言ったろ」
不機嫌そうに“忘れたの?”と言われては慌てて首を横に振った。
「なら良いや。引き止めて悪かったな、冷えるから着替えた方がいいよ」
『えぇ、有難う』
はレギュラスを大広間の中へ見送ると、庭先まで出て空を見上げた。
空には綺麗な三日月が輝いていた。





『騎龍…』





早く…
何としても帰らないと──…


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