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第1章 始マリノ謳

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12





「いいですか?今からルールを説明します!」



『……はへ?』
身構えていたは、思わずそう間抜けな声を出した。お説教を受けに来たつもりだったのにこれは…

「大丈夫、簡単です」

道具やら図や作戦表を出して来て一気に、そして熱く語られ、の気持ちは完全に置いてきぼりだった。



何だ……これ?





=一方通行=






マダム・ポンフリーに叱られた翌日…

昼前に漸く自分の部屋に戻る許しを得たは、グリフィンドール寮の談話室に着いた直後にミネルバ・マクゴナガルの部屋に呼び出された。またお説教が…とも思ったが、そうでは無かった。沈んだ気持ちで部屋に入ったは、今度はケロリとした表情で部屋から出て来ると、大広間に向かった。

「は~い、風邪は治ったの?」

『リザ』
話し掛けられて立ち止まった瞬間だった。後ろから歩いて来ていた人物とぶつかって体勢を崩したは、抱き締められる様に支えられ、斜めの角度でピタリと止まった。直ぐに引き寄せられて正常に立たされる。
「気を付けろよな」
『ぁ…御免なさい』
顔を上げて驚いた。直ぐ近くの彼の顔は何だか見覚えのある感じで…



「な~にやってんだ、レギュラス」



彼の肩越しに見えた人懐っこそうな男も見覚えがあった。名前は知らないが、目立つので顔はよく覚えている。
それにしてもレギュラスか…レギュラス・ブラック。シリウスの弟だ。だから違和感があったんだ…
「何?」
『いや…お兄ちゃんと似てるなって』
「……あ、そう」
少しムスッと不機嫌そうな顔をされ、はレギュラスの腕から離れて後退った。
「悪いね、コイツ今不機嫌なんだ」
『あぁ、御免なさい…私が急に立ち止まったから』
「いや違うさ、コイツはがシリウスの名前を出したから…」

「ラバスタン!!」

「あー、はいはい」
『まぁ、何はともあれ…御免なさいね、レギュラス。どこか痛い所とかない?』
「平気」
『そう、良かった』
「……でも悪いと思うなら、今度付き合ってよ」
『えぇ?良いわよ?』
「えぇ、ズルイ!、俺も俺も!」
「ラバスタンは関係無いだろ!」
「えー…じゃあさ、俺のは強制じゃないから!考えといてね」
ニコニコと笑顔を向けられ、は“えぇ”と答えて二人を見送った。何か凄く嵐の様だった。懐かしい感じもしたけど…

、大丈夫?」

『へ?あぁ、大丈夫よ』
「気を付けなさいよ、あの二人スリザリンの中でもきっつい純血主義だから」
『えっと…レギュラスはシリウスの弟よね?ラバスタンって』
「ラバスタン・レストレンジ。兄のロドルファスとその恋人のベラトリックス、ベラトリックスの妹のアンドロメダとナルシッサ…と、さっきのレギュラスで良く一緒に行動してるスリザリンのグループよ。三姉妹はレギュラスとシリウスの従妹で、ベラトリックスはロドルファスの許嫁ね」
『成る程…』


「それより貴女、風邪大丈夫なの?」


『風邪…?』
「風邪でしょ?インフルエンザって噂も…もっと大病って噂もあったけど」
『えぇ…そうなのよ、薬が嫌いで自力で治したわ』
「ダメよ、薬は飲まないと…ここに居るって事はもう大丈夫なの?」
『えぇ大丈夫よ。有難う、リザ』
そうお礼を言うと、リザはニヤリと口角を上げて笑った。

「大変よ~、貴女が居ない間に翡翠に虫が群がってたから」

『虫って…』
「翡翠ったら追っ払うのに苦労してたわ。貴女も調子に乗った女達を追い払うの頑張りなさいよ」
『いや…私はそんな』
「あら、自信満々ね~」
『自信満々…と言うか、私は翡翠の恋人じゃないし』


「嘘でしょ?!!」


一際大きな声でそう問われ、は目を見開いて驚いているリザを見返した。
『本当。こんな私に恋人だなんて…』
「いや、それ言われたら私はどうなんの」
『え?』
「なんでもない。それにしても…一方通行かぁ」
“可哀想に”と呟くリザと別れたは、いつも座る場所まで移動すると、先程ミネルバに言われた事を考えながら昼食をとり始めた。暫く一人で昼食をとっていると、突然後方から身体に何かが圧し掛かった。
『ッ…?!』
綺麗な赤毛が頬を滑る。赤い布を被ったみたいだった。


、話は聞いたわ!!」


赤い髪…綺麗で可愛らしい声。私に抱き付いているのは間違い無くリリーだ。そして“聞いた”とは私の事をジェームズに聞いたのだろう。少し首を回してリリーの耳を見ると、左耳に私の上げたピアスが付いていた。リリー用に埋め込んだ赤い石が光に反射して綺麗に光っていた。
ったら朝いないんだもん、昼まで我慢するの苦労したわ」
我慢…聞きたい事でもあるのだろうか?



「さぁ、歌って!」



『…………は?』
え…何?私の聞き間違い?
リリーは抱き締めていたを離すと、キラキラした瞳でを見詰めた。
「ジェームズから聞いたのよ!貴女、歌がとても上手いんですってね!」

聞き間違いじゃ無かった。

『あの、リリーさん…つかぬ事を御尋ねしますが、聞いたのはそれだけ?』
だとしたら話すポイントずれてるわよ、ジェームズ。の質問にリリーは首を傾げて答えた。
「色々聞いたわよ?異世界やら能力やらピーターやら…」
全部聞いてて敢えてそこを突っ込んでたのか。御免、ジェームズ…ポイントがずれてるのはリリーだった。そしてこの生徒が大勢いる大広間で歌えと…新手の拷問ですか?


『リリー、夜に談話室か何かそこら辺で…兎に角歌うから今は止めて』


「えー、分かったわ」
少し残念そうな顔をしたリリーは、大人しくの隣に腰掛けた。
「リリー、僕の隣に座ればいいのに!!」
「黙れ、ジェームズ」
リリーとが話している間にやって来て、の正面の席に座ったジェームズがそう言い、リリーはジェームズを一言で切り捨てた。相変わらず容赦の無い…

「で、ミネルバの奴何だって?」

ジェームズと一緒に来て、の左隣りに腰掛けた翡翠がの短い黒髪を梳きながらそう問い掛けた。翡翠の方が何倍も歳の離れた歳上なのだから仕方無いか…
「何だ、マクゴナガルに呼び出されたのか?」
「説教とかか?」
『いや、それは無かったんだけど…何か、術具を造る前に箒で散歩に出たのを見られたみたいで』

「停学とかか?」

いや、それは流石に…
『翡翠…いくら何でもそれは無いわ』
全てを知っているミネルバが私を停学にする訳無い……多分。
「あ…そりゃ、そうだよな」
一瞬止まった翡翠の手が再び動き出し、の髪を梳いた。箒で飛んでたくらいで停学になったら堪ったもんじゃない。
「で、マクゴナガルの話は何だったんだ…罰則か?」
、罰則ならこっそり僕が手伝うよ?」


『残念ながら罰則じゃ無いわ。悪戯仕掛人じゃあるまいし、罰則何て裁きはそう簡単には受けません』


の言葉に、シリウスとリーマスは黙り込み、ジェームズは楽しそうに笑い出した。
「ごもっともだね!」
「笑い事じゃ無いわよ、阿呆眼鏡」
「冷たい所も素敵だよ、ハニー」
リリーは呆れた様にジェームズを見ると、諦めたらしく、視線をジェームズから余所へと移した。
は苦笑混じりにその遣り取りを見ると、話を元に戻した。


『チームに誘われたの』


「チームって…クィディッチのか?!」
『そうよ』
シリウスの質問に答えながら、は先程のミネルバを思い出した。興奮気味にクィディッチについて語るミネルバは、可愛らしかった。ハリーもあんなミネルバを見るのだろうか?
「じゃあ、僕のチームメイトだね!」
『そうね』
「ポジションはどこなんだい?」
『“チェイサー”よ、リーマス』
ふとの髪を梳いていた翡翠の手がピタリと止まった。


がチームプレイ…無理だろ」


翡翠がサラリと言った一言に軽くショックを受ける。
『確かにミネルバにはシーカー向きだって言われたけど』
そして確かに私は楽しいと突っ走る癖があるけど…シーカーはジェームズだ。

「俺等なら完璧に合わせられるけどな」

『そうね、でもスポーツだもの。きっと大丈夫!そういう事だから今日から宜しくね、ジェームズ』
「勿論、任せてよ!」
は紅茶を一口、口にすると再度口を開いた。
『ところでピーターは?』
「あぁ、ピーターなら…」



「失礼」



ふと背後から聞いた事のある声が掛かった。
「「「ルシウス・マルフォイ!!!」」」
仕掛人の三人の声が綺麗に重なり、はやっぱりな、と後ろを振り返った。
「…
翡翠がさり気無く腕を出し、を庇ったが、はその腕に手を添えると、優しく退かした。
『皆、マルフォイ“先輩”でしょ』
ルシウスはの手を取ると、そっと手の甲に口付けた。翡翠が透かさずルシウスを睨み付ける。

「やあ、・皐月嬢」

『今日は、ルシウスさん』
「この間は済まなかったね、言葉を間違えたようだ」
えぇ、大いに…腸が煮え繰り返る所だったわ。一応、少しは怒りを押さえたのよ…一応。
『私の方こそ御免なさい…杖はどうなったかしら?』
「あぁ、直ぐに新しいものを手配したよ」
流石御金持ち。は姿勢を正すと、ニッコリ微笑んだ。

『ところで御用は何かしら?』

嬢に話があってね」
『…話って?』
何の話かしら?私としては今の所話す事は無いのだけれど…



「トムについてだが」
『話ですね!場所を変えましょうか』



トムの名前がでた瞬間、は勢い良く立ち上がると瞳を輝かせた。
!!」
『何?シリウス』
「…、僕も一緒に」
『リーマス、大丈夫だから』
全く…二人は心配症過ぎる。ルシウスと話すくらい良いじゃないか。

…」

心配症がもう一人いた。翡翠はの服の裾を掴んだ。
『翡翠、後の授業お願いね』
「またかよ…」

『ポピーと話して私、明日から授業に出る予定なのよ』

「…分かってるけどよ」
『じゃあ、宜しくね。ジェームズ、練習楽しみにしてるわ。リリー、夜に談話室でね』
「僕もだよ」
「えぇ、待ってるわ」
ジェームズは懐から出した悪戯専門店の商品を弄りながら、リリーは紅茶を口にしながら軽く手を振った。軽く返事を返す二人にシリウスは思わず声を上げた。
「お前等!」


が行くと言ってるの。黙って見送りなさい」


リリーが気味が悪いくらいに微笑み、シリウスは思わず黙り込んだ。怖いらしい。
嬢」
ルシウスが片腕を広げ、来る様に足す。
『今、行きます。じゃあ、行ってくるね』
がルシウスの隣りに並び、ルシウスはの腰に手を回すとそのままエスコートして大広間から出て行った。



「なぁ、リーマス…何かの奴、異様に笑顔じゃなかったか?」



まぁ、リドルの情報だからな…食い付くだろ。
「何でだろうね」
リーマスがフフフ…と笑いながら黒いオーラを放った。普通の人間でもこれくらいのオーラは出せるんだな…
それよりも一応、の事を馬鹿鳥に張らせとくか。でも、確かあの馬鹿鳥“見られた”って言ってたな…。

──…七叉しちさ

翡翠がそう念じると、翡翠とは違う声が翡翠の頭に響いた。



──何用か、兄者…



──を張ってこい。

──を?主の危機か?

──危険かもな…兎に角張ってこい。


──御意。



ヒュッという音と共に声は消え去った。これで一応は安心だ。
「オラ、餓鬼共!!授業行くぞ、授業!!!」
気を付けろよ…

今のお前は酷く弱いから──…


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