それはそれは綺麗な、
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『さて、問題です』
『これは何でしょうか?』
そう言って、目の前の少女は酷く無邪気な笑みを浮かべた。
彼女がこちらに突き出している右手からは、背景から浮いてしまうくらいに鮮やかな紅が滴っていた。
その手には幾つもの碧や紅蓮や紫金や漆黒が丁寧に乗せられている。
「…………それを、私に問うて如何する?」
彼女の背後に転がる有象無象を一瞥して、私は言う。
すると彼女は、鈴を転がすような声で笑った。
『これ、綺麗だとは思わない?』
そして、宝石のようなそれを一つ摘み上げて、赤い舌でぺろりとそれを舐めるのだ。
随分と容易い用件であるはずなのに一個中隊が全滅したと聞いて来てみれば、なかなかどうして、面白そうなモノが居るではないか。
平生から貼り付いている無表情を崩して微笑を作ると、少女は私と対照を成すかのように笑みを消して、放心したかのような表情で私を眺めた。
ゆっくりとその両腕を体躯の横に垂らすと、彼女の掌からぽとりぽとりと宝石が零れ落ちる。
人の足で踏み固められた土にぶつかって、ころころと好きな方へ転がって。
そして、ふわふわとした足取りで歩き出した少女に踏み潰された。
先程まであんなに愛おしそうに愛でていたというのに、移り気な少女はもう別のものに心を奪われてしまったようだ。
私の直ぐ前で立ち止まった彼女は、その双眸に恍惚の色を滲ませて私を見上げた。
そして、そっと私の頬に右腕を伸ばす。
ヌルリとした感触と共に、私の肌まで彼女の手と同じ色に染まった。
『よく見たら、貴方もとても綺麗ね』
『ねぇ、』
『私に一つ、くれないかしら?』
そう言ってまた笑顔に戻った彼女もまた、私には酷く綺麗に見えて。
「お前が私のモノになると云うのならば、考えてやらぬことも無い」
頬に添えられた華奢な手を、静かに己の掌に閉じ込めた。
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