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※ALL気味だけど若干遊作寄り
※夢主のアカウント名は固定
※時系列はアニメ1話前~アナザー事件頃
神楽坂アリスは高校生である。
DenCityでは中の中に位置する平凡なランクの高校に通い平凡な学生生活を送る傍ら、放課後には幾つものアルバイトを掛け持ちしていた。
この日の最初のアルバイト先は市内の景勝地や公園で軽食を販売する移動式カフェ、CafeNagi。
数多のアルバイト先の中でも、そこは彼女が特に気に入っている店であった。
『眠そうだね、コーヒーでも淹れる?』
CafeNagiの販売車のすぐ前に設置されたベンチに座る少年にアリスが声をかける。
うつらうつらとして今にも夢路に旅立とうとしていた彼は、はっとして顔を上げた。
少年の名は藤木遊作。
アリスの幼馴染でもあり、この店の店主とも馴染みの深い彼は、アリスとはまた違った形で忙しない日々を送っていた。
「いや、大丈夫だ」
『そっか。逆に起こしちゃって迷惑だったかな、ごめんね』
「迷惑とは言っていない」
『そう?それなら良かった…。じゃ、私はそろそろ次行くから』
「今日はこれからレストランだったか……相変わらずアリスは元気だな。そんなにバイトばかりして疲れないのか?そこまでしなくとも生活には困らないはずだが」
同じように施設に保護され、同じようにそこから自立し、学校の違いはあれど同じように高校生活を送る遊作が彼女を訝しむ。
『女の子には色々あるの。遊作は気にしないで』
アリスは適当な笑顔でそうあしらった。
『それより遊作、この間言ったこと……やっぱりダメかな…?』
「この間………………ああ、俺達の手伝いをしたいと言っていたことか?」
『そう』
頷くと、途端に遊作の表情は険しくなった。
「駄目だ。アリスが俺達を手伝う必要は無い」
そう吐き捨てて、数字を数えるようにして右手の指を一つずつ立てていく。
「一つ。現状俺と草薙さんの二人で充分活動出来ている、これ以上人員を増やす必要性は感じない。
二つ。俺達がやっているのは危険なことだ、お前はそれを分かっていない。
三つ。ハッキングのスキルもデュエルの腕も無い足手纏いは不要だ」
『っ……』
──そんなことない。
喉まで出かかった言葉を、アリスは飲み込んだ。
彼の中でのアリスのイメージは幼い頃、出会った時のまま変わっていないらしかった。
当時の彼女は確かに彼の言う通り、デュエルに関しても勉学に関しても、何を取っても人並みに出来ないような落ちこぼれだった。
しかし、今はもうその頃とは違うのだという自負がアリスにはあった。
デュエルも学校の同級生達よりは上手くできる。
ITに関する知識も、遊作やCafeNagiの店主である草薙のようなスペシャリストに比べれば見劣りはするがそれなりに身に付けたつもりだ。
『…………ですよねー…。ごめんなさい、何度もこんなことを言って』
にもかかわらず、アリスはそれを告げることが出来なかった。
明確な拒絶を示す遊作に対して、彼女はいつも一歩を踏み出すことができずにいた。
常に少しずつ存在している臆病さと後ろめたさは、どうしても彼女の足元に絡み付いて離れなかったのだ。
しかし、強い言葉で彼等の行いから遠ざけようとする遊作の行動が彼なりの優しさであることもアリスは知っていた。
『今のは忘れて。じゃあね遊作、また明日!』
沈んでしまった空気を変えるかのように一転して明るい笑顔を浮かべ、今度こそ彼に別れの挨拶をしてアリスはCafeNagiのエプロンを脱いだ。
先程遊作の言った通り、この後にはまたDenCityの有名レストランチェーン店でのアルバイトが入っている。
神楽坂アリスの、いつも通りの忙しない一日だった。
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