ぼくらのネオ・フュージョンラボ
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『ユーリくーん!!』
「?」
『見て見て!見てこれ!大変なの!!』
ちょうど今しがた探していた人を発見した私は、その後ろ姿に向かって駆け寄った。
呼び掛けに応じて振り返ったのは我らがネオ・フュージョンラボの融合マスター、ユーリくんだ。
舞網デュエルランキングでは融合召喚部門のチャンピオンにも君臨する実力者である彼は、名実共にラボのエース。
同じラボに所属する私は、かくかくしかじかの事情でそのユーリくんの助手をしているのだった。
今日もその仕事の一環でここへ来たのだが。
『ひぎゃっ!?』
ツルッ、と滑る足元。
結構なスピードで走っていた私は為す術もなく、可愛くない悲鳴を上げながらズッテーンと派手にすっ転んだ。
その横に、転んだ勢いで跳ね上がったバナナの皮が落ちてくる。
十中八九こいつが私の出鼻を挫いてくれた憎き元凶であろう。
続いて、床に這いつくばった私の上にクスクスと笑い声が降ってきた。
「アリスってば、見事なフォームだね!練習したの?」
ユーリくんはよく笑う。
……というよりは私がいつも笑われているような気がする。
ぷるぷると肩を震わせながらも手を差し伸べてくれるところは憎めないのだが、今はちょっとイラッと来てしまう。
私は突然の災難のせいでご機嫌斜めなのだ。
『してないよ!もー!こんな所にバナナの皮捨てたの誰!?』
悪態を吐きながらも彼の手はありがたく借りて立ち上がり、叩き込むようにしてバナナの皮を近くのゴミ箱に捨てる。
そういえば、この間のデュエル大会の決勝戦で負かされたシンクロ使いの男の子もバナナみたいな頭をしてたっけ。
そう思うとただのバナナの皮が余計に腹立たしく見えてきた。
………ん?大会……?
『……って、こんなことしてる場合じゃなくて!これ!見て!!』
盛大に脱線するところだったが、どうにか本題を思い出した私は持って来ていたチラシを広げた。
「ん?なになに?…………舞網デュエルスクールトーナメント…?」
ユーリくんが読み上げた通り、それは近々開催されるという大規模なデュエル大会の案内だった。
なんとその主催者であるLDSの人から直々にユーリくんを招待したいという連絡が先程あり、私は大慌てで彼を探しに来たというわけだ。
「ボク言わなかったっけ?今何ヶ月か先まで予定がびっしりだから、今月はこういう話は全部断ってって」
むすっ、という効果音が付きそうなくらいにユーリくんが頬を膨らませる。
融合マスターともなると中学生でありながら大会やデュエル関連のイベントには引っ張りだこで、ひっきりなしにお誘いが来る。
こうして彼を手伝う助手が必要になるくらいの忙しさなのだ。
私とてラボの二番手として大会やら特訓やら後輩の指導やら色々忙しくはあるのだが、何故かユーリくんからのご指名があったらしく、ユーリくんのご機嫌を取りたいラボの先生達からもしつこくせがまれて仕方なく助手をしている。
そんな経緯があるものの、私は助手として非常に優秀な働きをしてきたつもりである。
その私が、当分新しい予定は入れないでほしいと彼が言っていたのを忘れていたはずがない。
実際に彼を煩わせないよう最近来た話は全てユーリくんに話を通すことなく門前払いしていた。
だが、この舞網デュエルスクールトーナメントだけはそうはいかなかったのだ。
『でもね、ユーリくんは大事な所を見逃してると思うの!ここ見て!』
「えー、どれどれ」
『トーナメントの優勝者はあの赤馬零児とデュエルできるんだって!』
「!!」
その若さにして公式戦無敗の戦績を誇り、LDS社長の座にも君臨する天才デュエリスト・赤馬零児。
以前ユーリくんが一度彼と戦ってみたいと言っていたこともまた私はしっかりと覚えていた。
これは伝えないわけにはいかないだろう。
そんな細やかな気配りもできる私って、なんてデキる助手なのかしら!
「なるほどね…………これは面白くなりそうだ」
『でしょ?それで、どうする?せっかくのお誘い断っちゃう?』
「いや、引き受けるよ。こんなチャンス滅多に無いからね」
『りょーかい!じゃあLDSの人にはそう返事しとくね。ふふっ、私が助手でよかったでしょ?』
「うん。さすがボクの助手のアリスだね~えらいえらい」
『えへへー』
よしよしと頭を撫でられ、ついつい口元が緩む。
前述のようにユーリくんにはおちょくられることも多いのだが、こうして評価する部分は評価してくれるので何だかんだで有意義な助手生活を送ることができている気がする。
……良い感じに手懐けられているような気もしなくもないのだが。
『あっ、ちなみに私も出るからよろしくね!』
実は先程LDSの人と話している中で、ついでに助手さんもどうですか、という流れになり私も誘われていた。
ユーリくんのついでなのは癪だけど、大会には大小を問わずどんどんチャレンジしていくのが私の方針である。
スケジュールが空いているのを確認して、すぐにお誘いを受けたのだった。
「そうなんだ。アリスも準優勝目指して頑張ってね」
『なんですとー!?今度こそユーリくんに勝って優勝をもぎ取ってやるんだから!覚悟しておいてよね!!』
名だたる大会にも出場しそれなりに自慢できるくらいの成績は残しているつもりだが、ユーリくんと一緒に出た大会では彼より良い順位になれた試しがない。
そういうわけで、彼は同じラボの仲間だけれど、助手として手助けをする上司のようなものでもあれば、デュエルにおける目標でもありライバルでもあった。
彼が参加するとなれば、下剋上を目論む身としては自然に熱が入ってくる。
ラボでも大会でも万年二番手では悔し過ぎるし、そんなのはごめんだ。
その決意を込めてビシッと宣戦布告を決めると、ユーリくんはそれを見てまたケラケラと愉快そうに笑うのだった。
後日開催された舞網デュエルスクールトーナメントは波乱の展開になるのだが、それはまた別のお話。
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