終焉の使者は壮麗に、
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その日、突如として私の世界は一変した。
いつも通りに始まったはずの一日だった。
最初の異変は、ぐにゃりと歪んだ視界。
初めは眩暈だろうかと思ったけれど、その考えは長く続くそれと周囲の人々の反応から否定された。
徐々に異常を感じ始めた彼等はいつしか我先にと外へ向かって走り出していた。
そして校舎から出た私達の目の前に現れたのは、空を覆うほどの巨大なドラゴンだった。
人類の、そして世界の破滅を宣告し、破壊を始めるその姿に周りの同級生達が怯えるのは当然の反応だろう。
それはあまりにも人々の理解を超えていた。
けれど。
『か…………かっこいい……』
その中にあって、私は心がときめくのを感じていた。
幼い頃から、何者にも負けない強さに憧れていた。
だからこそ私はアカデミアへの入学を切望し、それが叶ってからも頂へ駆け上がろうと必死だった。
その中で様々なデュエリスト、様々なモンスターの戦いを見ていくうちに、私はある存在に惹かれていくことになる。
圧倒的な力でフィールドの全てを捩じ伏せる、ドラゴンというものにーー。
いわばドラゴンというものは力の象徴なのだ。
その強さ、その輝き、その存在を構成する要素の全てが私を魅了して離さない。
アカデミアに伝わる青眼の白龍。
レプリカしか見たことは無いが、初めてあの洗練された美しい姿を見た時の感動は今も忘れられずに心に焼き付いている。
アカデミア最強のデュエリストと名高いユーリ様の操るスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン。
禍々しさと凶悪さの中にある美しさは私の心を酷く高揚させる。
侵攻初期にエクシーズ次元へ行った時に見たドラゴンもそれはそれは素晴らしい造形美をしていた。
アカデミアの味方が次々倒されていくのを尻目に、物陰から敵であるドラゴン使いを応援していたのは秘密だ。
まだ行ったことは無いがシンクロやスタンダードにもきっと素晴らしいドラゴンが居ることだろう。
新たな出会いを夢見て、それらの次元へ渡る機会を窺っているところだった。
憧れたカードを使うに相応しいデュエリストになるために、私はずっと努力してきた。
つい最近になってようやく支給品ではない自分の自由に作ったデッキを持てるようになったのだ。
これからこの新たな相棒と共に駆け抜けていく世界は、これまでよりもずっと素敵なものになるだろう。
このところの私の胸は煌めく希望に満ち溢れていた。
そんな中で現れたあの未知のドラゴンは、今まで見てきたものとはまた違った、新たな衝撃をもたらした。
世界そのものをも変えてしまうような、その力。
圧倒的な強さが好き。
それを持つドラゴンという存在が好き。
なればこそ、つい感嘆の声が出てしまったのも仕方のないことだろう。
「ほう。そこの人間、なかなか見所があるではないか」
『……え?』
鎌首をもたげた巨竜がその双眸をこちらへ向けて言葉を発した。
少し間を置いておそらくそれは私に向けた発言であることを理解したが、あまりに巨大な体躯から本当に私に話し掛けているのか確証が持てない。
しかしあのドラゴンがこちらの方を向いたことで周りの人々は一目散に逃げ出していて、一瞬のうちに此処には私一人になっていた。
視線の落とされているこの一帯に他の存在は見当たらない。
「究極にして至高の存在となった我の姿に美を見出すとは、人間の割に良い感性を持っている」
ドラゴンの話す内容からすると、やはり私が話し掛けられているのだろう。
おそらくはデュエルモンスターである者と会話をするなど初めての体験で、困惑と興奮で頭の中は混乱していく。
「褒めて遣わそう」
『あ、ありがとう、ございます…?』
その佇まいに良く似合う尊大な口調に、こちらはつい敬語になる。
何故か褒められてしまった。
普段ドラゴンの良さなどを語っている時には同級生から生温かい目を向けられるのが常だったせいか、そんな言葉には慣れていなくてどう反応すればいいのか分からない。
これは私とドラゴンちゃんの気持ちが通じ合っているってこと…!?まさか相思相愛!?と暴走していきそうになる思考だけはどうにか押し留めておく。
「近う寄るが良い」
その言葉に戸惑いつつも言われる通りに私は歩みを進めた。
近付けば近付くほどに見上げる首が辛くなってきて、その大きさを如実に実感する。
「人間、我とデュエルしようではないか。我と闘い散るという栄誉を与えてやろう」
『デュエル、ですか…?』
ドラゴンのすぐ近くまで辿り着いた私に齎されたのはデュエルの誘いだった。
と言うことは、あのドラゴンはモンスターではなくデュエリスト、なのだろうか。
「ふはははは!そうだ。この我、覇王竜ズァークの真なる力を特等席で拝ませてやろうというのだ。遠慮する必要はあるまい」
空間も、次元さえもぐちゃぐちゃになってしまった景色を見ていれば、世界の全てが破壊されてしまうというのも嘘ではないように思えた。
ならば、最後にこんなに素敵なドラゴンと闘うのも悪くない。
何より、知りたかった。
デュエルをすれば、当然それを知ることになるだろう。
デュエルをすれば、その力に、その存在に、身を以てぶつかっていくことができる。
それはきっと至福の時間だ。
モンスターであろうとデュエリストであろうと、それがどういうモノかを理解することに於いてはデュエルこそが最上の手段なのだから。
『……はい!よろしくお願いします!!』
私にそれ以外の返事などあるはずがなかった。
『あの、その前にお願いがあるのですが!』
「何だ」
『その尻尾めっちゃ可愛いですね!!触ってもいいですか!?』
「何?…………まあ、良かろう」
『えっ本当にいいんですか!?ありがとうございます!!そしたらもう一個、その腰のくびれとかも触っていいですか!!?』
「一体何なのだ貴様は」
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