SS 海馬ランド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※捏造過多
※謎時空
『見て見て、遊園地だって!行ってみたいなぁ…!』
「ふーん。大して面白そうには見えないけど」
『絶対楽しいって!今度一緒に行ってみようよ!…………ああでも、外出許可なんて備品の買い出しくらいでしか降りないから私は行けないんだった……』
暇潰しに雑誌をめくりながらそんな会話をしたのがつい数日前のこと。
そして、今日の私達は遊園地の入口に立っていた。
あれからのユーリ君の行動は早かった。
知らぬ間に私の休暇と外出許可を捥ぎ取ってきて、あれよあれよという間に私を本土へ向かう連絡船に押し込んでここまで来たというわけである。
僕が言えば大抵のことはどうにでもなる、なんて豪語して憚らない程度には彼はアカデミアでの地位を有しているらしかったけれど、本当にこんなことまでどうにかするとは思ってもみなかった。
そもそも遊園地の話をした時には興味のある素振りも見せていなかったのに。
私はただただ呆然としながら流れに身を任せたのだった。
『すごい……!!広い!!遊園地!遊園地だよユーリ君!!』
「さすがにはしゃぎすぎじゃない?見れば分かるでしょ」
『ほら!でっかいブルーアイズ居るよ!!記念写真撮ろう!?』
「はぁ……。わかったよ、好きにすれば?」
このテーマパークには、創設者のエースモンスターであるという青眼の白龍をモチーフにしたものが随所にあるようだった。
エントランスに鎮座する巨大な像の他、ジェットコースターなどのアトラクションや土産物のぬいぐるみ、果ては立ち入り禁止区域の看板に至るまであらゆる所で目にすることができる。
こういう形でなら、私もデュエルモンスターズというものと楽しく関われそうだ。
何かと不自由な人生だったこともあり、生まれて初めて訪れる遊園地に私は目を輝かせていた。
やれやれと言いたげな雰囲気を出しておきながら写真にはしっかりキメ顔で写ってくれたユーリ君と共に、パンフレットを広げながら奥へ進む。
『遊園地といえばジェットコースターでしょ!』
そんな安直な考えで、私達はまずはジェットコースターへ向かった。
聞くところによると、ユーリ君も遊園地は初めてらしい。
初めて同士となれば、やはり定番と呼ばれるアトラクションから挑戦していくのが一番だろう。
本や雑誌で予習してきた知識を存分に役立てる時である。
『結構並んでるねぇ……』
「これがここの目玉らしいからね」
『先に他の所回る?』
「時間ならたっぷりあるし並べばいいんじゃない?澪織さんはジェットコースター乗りたいんでしょ?」
『そうだね…!よし、並ぼう!』
そんなやり取りの末、予定通り行列の最後尾に並ぶことにした。
数十分待ちという表示であったが、次に何処に行こうか話し合ったり、上空から響いて来る悲鳴を聞きながらそんなに怖いのかなぁなんて談笑したりしていると案外あっという間に私達の番が来ていた。
スタッフの案内に従って、コースターに乗り込む。
運の良いことに席は一番前、特等席だ。
シートベルトを締めて上から降りてきたバーを握る。
楽しみだね、なんて隣の席のユーリ君と笑い合った。
『し…………死ぬかと思った…………』
「その有様でよくジェットコースター乗ろうと思ったね」
『ま、まさかこんなに怖いなんて……』
ジェットコースターを降りてどうにかこうにかベンチまで辿り着いた私は、完全に生まれたての子鹿だった。
未だに身体が半端に浮いているような感覚がして足元がおぼつかない。
スリルがあって楽しい、なんてものではなかった。
恐怖しかなかった。
落下の浮遊感に怯え、縦横無尽に駆け回るコースターから振り落とされないようにひたすら安全バーに握り締めながら耐えていたら終わっていた、という感じだった。
キャーキャーと可愛らしい悲鳴を上げる暇も無い。
あの雑誌に書いてあったジェットコースター体験レポートは詐欺だ。
「初めてだったの?」
『うっ……実はそうなの……。ユーリ君はよく平気だったね……』
「確かにちょっとびっくりはしたけど、なかなか面白かったよ」
『そっか。ユーリ君はすごいなぁ……』
「もう一回乗っとく?」
『イヤ!!!!』
全力で拒否する私に、ユーリ君はケラケラと笑う。
鬼!!悪魔!!
二度と乗らない!!と私は心に誓ったのだった。
暫しの休憩を取り、落ち着いてから他のアトラクションへ向かう。
「次はあれの予定だったけど──」
『これひょっとして怖いやつじゃない!?』
人の乗ったゴンドラが塔の周りを旋回しているアトラクション。
地上から見ている分には回転のスピードも大して速くないように見えるし、少し前までの私は楽しそうだと思っていたけれど、今の私はジェットコースターのトラウマで猜疑心の塊である。
地上からは大したスピードに見えなくても、乗ってみるととんでもなく恐ろしい可能性があるというのは今さっき痛感したばかりだ。
「大丈夫だって。ただ回ってるだけでジェットコースターみたいに急に落ちたりひっくり返ったりしないんだからそんなに怖くないよ」
『ほ、本当…?』
「本当本当。せっかく来たんだから色々乗ってみないと」
隣のユーリ君がそう言って私の背中を押す。
確かに、遊園地に来るなど滅多に無い機会なのだから乗れるものには乗っておきたい。
それにここに連れて来てくれたのは他でもないユーリ君である。
彼のほうは何だか乗り気なようだし、私がそれに水を差すわけにもいかない。
『そ、そうだね…!うん!乗ってみよう!』
頷いて、私達はまた列の最後尾に並んだ。
『ユーリ君の嘘吐き!!!!』
「アハハハハ!」
べしべしと彼の肩を叩くが、ユーリ君はそんなことは意にも介さずに笑っている。
結論から言うと、やっぱりこのアトラクションも怖かった。
体感速度と遠心力が想像以上で、これまたひたすら安全バーにしがみついていたら終わっていたという有様だった。
降りてきた私はもうフラフラである。
「もっかい乗る?」
『乗らないってば!!』
これも二度と乗らない!と私は新たな誓いを立てた。
「ホラー館だってさ。ここなら乗り物系じゃないし大丈夫じゃない?」
『そうだね。色々なのがあって良かった』
次に来たのはお化け屋敷だった。
ようやく乗り物系ではない所に来られて安堵する。
私は幽霊が怖いというわけでもないし、ここなら問題無く楽しめるだろう。
『よーし、行こう!』
そうして私は意気揚々と順番を待つことにした。
『こ……怖かった……』
「澪織さんは幽霊もダメなの?」
『そ、そういうわけじゃないの、ただいきなり上とか背後から出てきたりするとびっくりするってだけで…!!』
お化け屋敷から出てきた私はまたもや満身創痍だった。
余裕振って入ったはいいものの、リアルソリッドビジョンをも駆使した迫力ある演出はいささか迫力がありすぎた。
数々の仕掛けに飛び上がるほど驚いたのも事実だし、正直に言うとお化けやゾンビも想像の数倍怖かった。
子供騙しのお化け屋敷だろうという生温い考えは見事なまでに裏切られたわけである。
『ユーリ君は本当に怖くなかったの…?!』
「うーん、まあ、結構迫力はあったけど。隣にめちゃくちゃビビってる人が居ると逆に冷静になるってやつ…?」
『そんなぁ…』
「せっかくだしもう一回入る?」
『だから入らないってば!!』
食い気味で拒否すると、なぁんだ、残念、と笑いながら肩をすくめられた。
──…………さてはこの子、怖がっている私を見て楽しんでるな……?
その後も色々なアトラクションやゲームコーナーを周った。
序盤に行った場所が悪かったのか、お化け屋敷以降は特段恐怖に身を震わせることもなくなり、徐々に私も楽しさが勝るようになってきた。
子供達の歓声が響くヒーローショーや軽食の並ぶ屋台などにも寄りながら園内を周り、今はデュエルスタジアムの中。
観客席に一人座り、インストラクターに勝つと景品が貰えるというイベントに参加しに行ったユーリ君を眺めている最中である。
私もデュエルに誘われはしたが、勿論丁重にお断りした。
遠くのデュエルスペースの中に居るユーリ君は、やっぱりデュエルをしている時が一番楽しそうだ。
そんな姿を見ていると、ついつい私の口元も緩んでしまう。
頑張れ、と小さな声で応援しながら、彼の試合を見守った。
マッチ戦に難なく勝利したユーリ君は、景品のカードパックと小さなブルーアイズのぬいぐるみを持って帰ってきた。
『お疲れ様!全勝だったね〜さすがユーリ君!』
「当然でしょ。僕を誰だと思ってるの」
ふふん、と得意げな様子が可愛くてよしよしと頭を撫でているたら、にべもなく手を払い退けられてしまった。
「……子供扱いしないで」
『えぇー、少しくらい良いじゃない』
「それより、これあげる」
ずいっ、と突き出された彼の手には、先程のデフォルメされたブルーアイズのぬいぐるみ。
手のひらサイズの小さなそれは、実を言うと先程見た時から可愛くて良いなぁと少しだけ思っていた。
『えっ、ほんと…?でもせっかくユーリ君が貰った景品なんだから、ユーリ君が持ってた方が…』
「僕が欲しかったのはこっちだから」
カードパックを翳して見せながらそう言ったユーリ君は、半ば強引にぬいぐるみを私の手に握らせる。
そういうことなら良いのかな、と少々気後れしつつも私はそれを受け取った。
『ありがとう、ユーリ君』
──せっかく彼から貰ったんだから、大事にしよう。
そう思いながら、ユーリ君にお礼を言った。
『今日は楽しかったね!』
「まあ、案外悪くなかったね」
遊園地を隅から隅まで満喫し、最後には土産物屋さんでも幾つか買い物をして、私達は遊園地を出ることにした。
色々あったといえばあったが、それでも終わり良ければ全て良しである。
遊び疲れた心地良い疲労感と共に、日が傾いた茜色の中を歩く。
『また二人で来れたら良いね』
「……そうだね」
そんなやり取りをしながら、私達は家路に着いたのだった。
.