MainStory 13
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「失礼いたします。ただ今帰還しました」
「ご苦労」
プロフェッサーの眼前に立ち、こなしていた任務の成果について報告する。
報告と言っても無論この僕に失敗などあるはずもなく、いつも通りに成功を伝えるだけだ。
簡潔に顛末を話し、それが終われば次の任務が課されるまでの間は待機となる。
カードにして回収してきた脱走兵達を渡し終えて広間を出ようとすると、珍しくプロフェッサーに呼び止められた。
「ユーリ」
「はい?」
「あれは元気か?」
「あれ、とは…?」
「…………澪織のことだ」
プロフェッサーの口から思いもよらぬ人名が出てきて、僕は少し目を見開いた。
珍しい。
プロフェッサーがあんな何の役にも立たないような人間に関心を示すなんて。
いつも研究に没頭しているあの人が名前を覚えているのなんて僕を含めた一握りの精鋭やアカデミア上層部の人間くらいだと思っていた。
「君が近頃澪織と親しくしているらしいと報告が上がっていてな」
「親しい……のかは分かりませんが、時々会ったりはしています。一応僕が拾ってきたようなものですし、万一スパイとかだったら困るでしょう?あの調子だと全くそんな様子は無いですけどね。デュエルも弱すぎるし。……元気かと言われると、大体いつも元気そうというか能天気というか、そんな感じです」
「そうか。それならば良い」
そう言ってプロフェッサーはどこか満足げに目を伏せて頷いた。
その様子に僕は一層首を傾げる。
「珍しいですね。プロフェッサーがこんな話をするなんて。あの人に何かあるんですか?」
そう問うと、プロフェッサーは眉間に皺を寄せて、少しの間を置いてからこう答えた。
「あれは、私の娘のようなものだ」
「……えっ?」
それは予想だにしていなかった言葉だった。
「アカデミアに来る以前、私がスタンダード次元に居たことは知っているだろう。その頃の話だ」
まさか、プロフェッサーと澪織さんがそんな関係だったとは思いもしなかった。
娘。
家族とか親子とか、そういうものは僕にはよく分からない。
僕自身はそういうものとは無縁だし、アカデミアに身を置いているとそんなものに触れる機会もそうそう無い。
無論知識としては知っているし、任務で外に出た時にそれらしい者達を見かけたこともあるが。
「何だ、澪織から何も聞いていなかったのか?…………まあ、彼奴も好んで話そうとはしないだろうが」
「……初耳でした」
澪織さんがアカデミアに来てからそれなりの時間が経っていたけど、プロフェッサーは勿論、澪織さんの方もそんな事は今まで一言も口には出さなかった。
思わぬ事実を知った僕はその後しばらく上の空で、普段はそれなりの礼節を持って接しているプロフェッサーにも適当な返事をして、呆けたような状態のまま大広間を出た。
冷静に考えてみればあの二人が親子だからといって何かが変わるわけでもないのだが、今の僕には驚きと、もう一つ、何かもやもやした気持ちが渦巻いていた。
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