怪盗様のお戯れ
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・ネームレス
・微糖…?
・実装前(11/26時点)の幻覚
・まだ世界観考証とかキャラ解釈とかゆるふわなのでなんでも許せる人向け
* * *
「やあ、君も参加するんだね。今日はよろしく」
魔界への降下を控えた緊張感の中、不意に背後から声を掛けられた。
振り返った先にあったのは、見知った顔。
『煤墨先輩!こちらこそよろしくお願いします』
今日の探索地点は危険度が高いからと、我々ガーデナーに加えて護衛・掃討役の騎士が数名付くと聞いていた。
その中の一人が煤墨先輩だったようだ。
彼とはこれまでの作戦でも幾度かご一緒したことがあり、物腰柔らかで気配りの利く好青年と仲間内でも評判だった。
そんな彼だが、今日は何やら煌びやかな衣装を身に纏っている。
ゴテゴテの重装備に着られている私達とは違い騎士の方々はいつも心配なくらいに身軽だが、今回の先輩は別の方向性で気になる服装であった。
『ところで、どうしたんですか?その衣装』
「ああこれ?この間の作戦の時に仕立ててもらったものなんだけどね、陛下が今日はこれを着ていくようにって」
困っちゃうよね、と全然困っていなさそうな声音で笑う煤墨先輩。
「あの時は鉉くんが急に怪盗ごっこしようなんて言いはじめるから大変だったんだよ。陛下も面白がって全然止めようとしないし。あ、実はこの怪盗衣装は鉉くんとお揃いなんだ。このあたりのデザインなんかは──」
第四騎士団の方々や皇帝陛下の話をする時の煤墨先輩はいたく饒舌だ。
時折布地を翻しながらあれやこれやと説明してくれる先輩を微笑ましく見守ること数分。
「でもやっぱり、僕にはあんまり似合ってないかな?」
不意に仄暗い面持ちで眉尻を下げた彼。
『いえ!そんなことないですよ!とても良く似合ってます!!』
「そう?ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいよ」
先程の翳りは一瞬のうちに鳴りを潜め、何事も無かったかのようにいつもの彼の笑みが戻った。
「そうだ!せっかくだからちょっと怪盗らしいことでもしてみた方がいいのかな」
『?』
かと思うと、今度は悪戯っ子のように口角を上げて笑みを深める。
こういう時の煤墨先輩には気を付けたほうがいいと以前鉉覇先輩が言っていた気がした。
身構える私の前に彼は恭しく跪き、するりと私の手を取る。
「この怪盗が今宵、君の心を頂戴しよう…………──なーんてね」
一瞬、意識が飛んだ気がする。
この人は自分の顔の良さとかに自覚が無いのだろうか。
それとも分かっていてわざとやっているのだろうか。
どちらにしても困ることこの上無い。
『……………………あの、先輩、そういうのあんまり人にやらないほうがいいと思いますよ』
「そう?これ陛下には大ウケだったんだけど」
『大ウケだったんですか!?』
今のが大ウケで済むのか。
皇帝陛下の心臓は鋼か何かなのかもしれない。
「さ、そろそろ時間だ。少しは緊張も解れたでしょ?今日も一日頑張ろうね〜」
そう微笑むと、煤墨先輩はひらひらと手を振って集合地点へ去っていってしまった。
言われてみれば作戦へ臨むことへの緊張感は何処かへ吹き飛んでしまっていたが、それとは別の動悸が止まらなくなっているのは気のせいではないはずだ。
親愛なる皇帝陛下へ。
あの格好の煤墨先輩をうろつかせるのは何か……風紀的な何か的に良くないと思います。
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