第十二話 新人ベグライター歓迎パーティー~協奏曲~
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前回のあらすじ!
“よしルフィア、しっかり説明してみせろ”
大丈夫だよ!
えーっと……色々あって拉致られて、パーティーに行ってきました。
そしたらいきなり撃たれたりザイフォンで攻撃されたり大変な事になっちゃったんだよね。
で、変な人が出て来た所で終わったんだっけ?
“……まあ、そんな感じだな。だがそれじゃあ及第点には遠く及ばないぞ!”
えぇっ!?何で!?
“そんな説明じゃ前回の話を読んでない人には分かってもらえないだろ!!”
前回の読まずにこの話読む人って居るの!?
“それを想定するのがプロってもんだぜ”
……ごめん。私、プロじゃないから。
“なら今からプロになれ”
無理だよ!つーか嫌だよ!!
“………………役立たずが”
何で!?
* * *
屋敷の庭園に響き渡った爆発音。
舞い上がる土埃。
しかし、
「この程度で俺に勝てると思うなよ」
相手には全く効いていない様子だ。
飛んでくる闇徒をかろうじて避けながら多少の反撃をする。
ドレスは予想以上に動きにくく、ハイヒールというのも常に転ばないように注意を払わないといけなくて大変だ。
極力動かないようにしたいのだが、そう簡単には行かない。
「どうした?お前の実力はその程度か?」
沢山の闇徒が飛んでくる。
それを防ぎ切れず、私は地面に倒れ込んだ。
「黒法術師相手にザイフォンで太刀打ち出来ると思っているのか?」
至極もっともな事を言いながら、彼はまた私に向けて闇徒を放つ。
「お前も黒法術師なのだろう?だったらその力を使ったらどうだ」
――やっぱりザイフォンじゃ無理なのかな。
攻撃が命中する前に、私は闇徒でそれをガードした。
「……やっと使ったな」
『本当は使いたくないんですけどね』
黒法術はそれほど得意ではないし、それなのにリスクを伴うものを使うのはあまり良くないと思う訳で。
大体、見た所彼は私よりも強い。
黒法術を使ったところで勝ち目があるかどうか分からないのに……。
――何でこの人は私に黒法術を使わせようとしたのだろう。
私が黒法術師である事は――隠していた事ではあるけれど――ブラックホークのメンバーだという事から想像がつくと思う。
だが、何故その力を使わせようとするのか。
まるで、私の事を試しているような……。
「…………だが、まだまだだな。そんな力では俺には勝てないぞ!」
そう言うと、彼はますます攻撃を強くした。
* * *
天使の生まれ変わりだからって、目茶苦茶強い訳じゃなくて。
第一、天使の力なんていうのは護る為の力であって戦う為の力などではない。
その上、その力も転生を繰り返しているせいか昔ほど強くはない。
おまけに私は、ザイフォンの才能だけはあるみたいだけど、黒法術の才能はそんなに無かったらしい。
はっきり言って、黒法術師相手の戦闘なんて初めてだし(ヒュウガ少佐と戦ったりはしたけど、あれは黒法術は使わなかったから)。
相手が強いなら、なおさら私に勝ち目なんて無い。
そんな訳で、
絶賛大ピンチ中です(笑)
敵の攻撃を何とか受け流したり避けたりして怪我をしないように頑張っているが、このまま体力が持つかどうかは分からない。
――どうするんだよルーク!!
“オレに言われても困る。
多分お前の今の実力じゃ勝てない相手だ。諦めろ”
――簡単に言うなよ!
“仕方ないだろ。事実だ”
まったく……こうなったらあの方に頼むしか……。
“……そうだな”
内心でため息をつく。
それから、心の中である人物に呼びかけた。
――ネレさーん。ショタコンなネレさーん。出番ですよー。
“…………ですから、その呼び方は何とかならないのですか?”
今日はいつもより早く出て来てくれたネレ。
少し不機嫌そうなのは寝起きだからだろう。
“……状況は芳しくないようですね。貴女、今度は何をしでかしたんですか?”
――全く身に覚えの無い事だよ!いきなり襲われたの。
“そうですか。……で、あれをどうにかすれば良いのでしょう?”
流石ネレさん。話が早くて助かる。
“分かりました。それでは……”
ネレがそう言ったのを合図に、私は足を止めた。
「どうしたんだ?これで終わりか?」
男が闇徒を放つ。
私はゆっくりと目を閉じた。
* * *
少女はゆっくりと目を閉じ、そして開いた。
――死ぬ覚悟でも出来たのか…?
男がそんな事を思った瞬間、彼女に向かっていた闇徒の動きがぴたりと止まった。
「な、何だ?何が起きた?」
戸惑う男。それを見て、少女は不敵に笑った。
彼女が腕を動かす。
すると、まるで指揮者に従うかのように闇徒は一斉に男の方を向いた。
いつの間にか、彼の闇徒は操縦不能になっていた。
指揮権が全て目の前の少女に奪われている。
「何だよ……何だって言うんだよ?!」
初めて体験する出来事に、男は狼狽する。
『これ、貴方にお返ししますね』
にっこりと少女が笑う。
先程までとはまるで別人のように。
そして闇徒が男に襲い掛かった。
防御する術を持たない彼は必死にそれを躱すが、避けきれなかったものが傷を作る。
横から出て来た別の闇徒が男の手足に纏わり付き、彼の四肢を拘束した。
動けなくなった男の所へ、未だに笑みを崩さない少女が歩み寄る。
男がありったけの殺意を込めて彼女を睨みつけるが、相手は全く動じない。
『……貴方に幾つか聞きたい事があるのですけれど、よろしいですか?』
「……どうせ俺に拒否権は無いんだろ。仕方ねぇから答えられる限りは答えてやるよ」
男は意外と素直に承諾した。
『では。
貴方は何故私を襲撃したのですか?』
「最初にも言っただろ。主の御命令だ」
『…………その“主”というのは?』
「それは言えねぇな。
だが、我等が主はお前を欲している。主の御計画にはお前が必要なのだ」
『……その計画というのは?』
「それも言えねぇ」
男は、答えても良い事と答えてはならない事とをしっかりと弁えているらしい。
それ以外の事には一切言及しなかった。
『……では、質問を変えましょう。
貴方は黒法術師ですね。しかし、その貴方がどうやって今まで帝国軍やバルスブルグ教会の人間に見つからずに生きてこられたのです?』
「決まってるさ。黒法術師を飼ってんのは皇帝陛下だけじゃねぇって事だ」
『“主”が貴方の事を匿ったと?』
「そういう事だ」
『…………』
淡々とした応答が続く。
少女は少し考える素振りを見せてから、再び男を見据えた。
『では、これで最後の質問にしましょう。
貴方は、あちらに居る人達とは何か関係があるのですか?』
少女が大きな建物――先程まで居たダンスホールを示しながら言った。
「いや。あいつらの事は知らねぇ。
俺が聞きてぇぐらいだよ」
『…………そうですか。分かりました。
色々と教えていただき、ありがとうございました』
「……お前に礼を言われる筋合いはねぇよ」
丁寧に頭を下げる少女に、男は困ったような表情を浮かべた。
それから少女が言う。
『もう貴方に用はありませんし…………的にでもなっていただきましょうか』
急速に血の気が引いていく男を気に留める事無く、少女は彼から少し離れた場所まで歩いていき、立ち止まって手の平を天に翳した。
そこに、徐々に黒々とした闇徒が集まってくる。
『大分鈍っているみたいね……最近あまり身体を動かしていなかったからかしら…?』
そんな少女の呟きを他所に、闇徒の塊はどんどん巨大化していく。
まるで夜の闇をかき集めているかのように。
既に少女の身長よりも大きくなったそれは、まだ成長を続ける。
「…………おいおい……そんなのアリかよ……」
目の前の光景に、男は冷や汗をダラダラと流す。
手足や口元も心なしか震えているようだ。
『このくらいで良いでしょうか?』
少女が言う。
そして、
『――さようなら、』
小さな声でそう言ってから、えいっというこの場には似つかわしくない掛け声と共に、手の上の大き過ぎる闇徒を男に向かって投げた。
* * *
――どうすんのよコレ?!!
『おかしいですね……もっと加減したつもりだったのですけれど……』
現在、目の前に広がる光景。
それは、庭園に出来た巨大なクレーターと半分消し飛んだダンスホール。
いやいやいや、ちょっと待とうよ。何でこんな事になってんだよ。
『どうしてでしょうか?』
――原因はアンタだろ!?
大体、ネレは反則的に強いんだからちゃんと力を抑えてくれないと……。
『私はそうしたつもりだったのですが……』
“嘘だろ”
――……ちなみに、予定ではどのくらいにするつもりだったの?
『とりあえずは、人一人が消える程度に……』
――つまり、あいつ一人だけを消し飛ばすつもりだったのに庭と建物半分もついでに消えちゃったと。
『まあ、そういう事になりますね』
――…………はぁ…。ちなみに、何割くらいの力を使ったの?
『そうですね……1割弱でしょうか』
何でだろう……次元の差に泣けてくる……。
『もしかすると、あちらの方で起こっている事と関係があるのかも知れませんね』
ネレが呟く。
――どういうこと?
『おそらく今、あちらではブラックホークの方々が戦っているのでしょう。
そこで殺された人間の魂が紛れ込んでしまい、それを闇徒達が取り込んで力が巨大化したという可能性があります』
“……なるほどな。一応理屈は通ってる”
――確かに……。
それなら納得出来そうだが……。
――本当にそんな事出来るの?
『闇徒のパワーにもよると思いますが…………。人生というのは、何が起こるか分からないものです』
――……。
変な風にまとめられて腑に落ちない点もあるものの、考えるのを諦めて前を見る。
そこにあるのは、やはり先程の攻撃の傷痕。
これは、どうすれば良いのだろうか。
“……証拠隠滅は厳しいな。大人しく諦めるか知らないフリしか無いだろ”
――そうだね……。
『私はそろそろ戻ってもよろしいでしょうか?』
――あ、うん。ご苦労様ー。
スウ…、と感覚が戻ってくる。
『…………さて、どうしようか。
やっぱり知らないフリ?』
“バレなければそれでもいいと思うが……”
『じゃあそーゆー事で』
とりあえずダンスホールへ向かい、壁に開いた穴――と言うには大きすぎるが――から中の様子を覗いてみる。
すると、最初に見た時より大分少なくなっている敵さんと、まだまだ元気そうなブラックホークの皆さんが目に入った。
「あ!ルゥたんじゃん!!」
目敏く私を発見したヒュウガ少佐が、こっちこっちと手招きする。
行くと、何故か怒られた。
「どうしてくれるのルゥたん!!」
『な、何ですか…?』
「さっきのアレ!!危うく巻き込まれそうになったんだけど!!」
肩を掴まれて前後にガクガクと揺らされる。
『しょ…少佐……首が……』
「あ!ごめん!」
何とか解放してもらい、ふらふらする頭を押さえる。
「で、さっきのは何だったの?」
少佐が聞く。
『アレは………………事故だと思います』
「……そうなの?」
『私にはよく分かりません…』
そう言うと、少佐は納得出来ないというような顔をした。
再び口を開こうとした時、
「てめぇら、オレ達を無視するなぁぁぁあああっ!!」
話し込んでいる私達に向かって敵の一人が突っ込んできた。
しかし、ヒュウガ少佐はそいつに目も向けないまま片手で斬り捨てる。
「もぉ、邪魔しないでよ……。
仕方ないから、こいつらを先に片付けよっか」
面倒臭そうに呟いてから、敵さんに向き直る。
私も彼等に目を転じた。
「そうですよ少佐!無駄話なんてしていないでしっかり戦ってください!」
近くに居たコナツさんが言う。
「わかったよ……コナツってば、いっつも生真面目なんだから……」
ぶつぶつ言いながらも、少佐はまた戦い始めた。
無駄の無い動きで敵を倒していく。
他の皆さんも同じだ。
素早く、そして的確に敵を倒す。
他の人の背後に敵が迫っているのに気付いたりした時にはさりげなくフォローしてみたり。
――流石はブラックホーク。強いなぁ……。
………………あれ?私の存在要らなくない?
「…………くそっ!!何なんだよお前らは!!」
最後の一人となった敵の親分(名前何だっけ…?)が苦々しい顔をして吐き捨てる。
他の人達は皆倒されて床に転がっている。
それに対して、ブラックホークの皆さんはほとんど……いや、完全に無傷。
「……さて、どうしてくれようか」
サーベルの切っ先を突き付けながらアヤナミ様が言う。
「…………くそっ!!何故だ?何故なんだ?!
私は…私はこの日のために何ヶ月も綿密に準備してきたんだぞ!!
資金を調達し、腕利きの部下もたくさん集めた!私の息のかかったクラムにわざわざパーティーを主催させた!
全ては計画通りのはずだった!
なのに…!何が足りなかったというのだ!?」
半泣きの状態で喚き立てるオッサン。
ヅラがずれているような気がするが、空気を読んで突っ込まない。
……思い出した。この人の名前って確かカツラだったよね。
「……貴様が我々を甘く見ていたという事だろう。残念だったな。
お前はここで終わりだ。この私に盾突いて、生きて居られると思うな」
その言葉と共に、彼の命の灯は呆気なく散った。
* * *
『何だったんでしょうね。あの人』
「きっと、我々ブラックホークに恨みがあったんですね」
「まあ、身に覚えがありすぎて分かんないけどね」
「少佐……それって笑い事ではありませんよね…?」
あはは、と笑うヒュウガ少佐にコナツさんが呆れた口調で言う。
しかし二人共それほど気にしてはいないらしい。
他の人達もそうだった。
まさか、これは日常茶飯事なのか?
こんな事に慣れちゃうような職場で、私はやって行けるのか…?
“ルフィアなら大丈夫だろ。どうせならちょっとくらいデンジャラスな所の方が楽しいさ”
いやいや、私はそんな事求めてないし。
「そろそろ帰ろーよ!僕もう疲れちゃった……」
「そうですね、クロユリ様」
眠たそうにしているクロユリ君にハルセさんや他の皆さんも同意する。
「ルフィア!行こう?」
クロユリ君が私の手を掴んで歩き出した。
……無邪気な笑顔が可愛いです…!
私がニヤニヤしていたのか、ハルセさんが怖い顔でこちらを見ている。
しかしそれを無視して、私はクロユリ君と共に歩き始めた。
コナツさんやカツラギ大佐、ハルセさんも後ろからついて来て、皆で雑談などをしながら歩いた。
* * *
(アヤナミside)
部下達はさっさと帰ろうと既に歩き出していた。
意味も無く楽しそうにしている彼等の後ろ姿を眺めていると、
「で、アヤたんはさっきのどう思う?」
ヒュウガが横に来て言った。
「……ルフィアの事か?」
「うん。アヤたんだって感じたでしょ?一瞬だったけど…あのすっごく強い力。
アレが敵のものだったら、ルゥたんは無事ではいられないハズだよね?」
「…………そうだな」
「そうすると、アレはルゥたんのものだった事になる」
「…………」
「あの子、何なんだろうね~」
ヒュウガはそう呟いてから、どんどん遠ざかっていく他の部下達を追い始めた。
途中で、アヤたんも早く来ないと置いてっちゃうよ、等とふざけた台詞を叫ぶ。
――本当に、何なのだろうか。
ぱっと見た感じでは、彼女がそれほどの力を持っているようには見えなかった。
それどころか、黒法術師としての腕前は大した事は無いと思っていた。
――少し調べてみるか。
もしかしたら、何か解るかも知れない。
ふと見ると、部下達は大分遠くまで行っていた。
私も彼等の後を追ってダンスホールを出た。
* * *
(ルフィアside)
「昨日は災難だったようだね、アヤナミ君」
一波乱あったパーティーも終わり、その翌日、私とアヤナミ様は何故かミロク理事長に呼び出されていた。
「ミロク様、今日は一体何の用ですか?」
アヤナミ様が問う。
「アヤナミ君には話しておきたい事があるのでね。
そうそう、ルフィア。君にも渡したいものが……」
そう言いながら何かを取り出した理事長。
「ほら、君がベグライターに就任したお祝いがまだだっただろう?
後日もっとちゃんとした物を送るが、君はコレの方が喜ぶと思ってね」
はい、と渡されたのは長方形の紙切れ。
派手な色で『スイーツ食べ放題!』という文字が書かれている。
………………食べ放題!!?
『いいんですか?!コレ貰っちゃって……』
「構わないよ。その券を見せれば無料で食べられるそうだ」
『やったー!!』
“…………すっげぇ嬉しそうだな…”
――当然だよ!!
タダだよタダ!!
お金を払わずにケーキを山ほど食べられるんだよ!!
貧乏庶民にとってこれほど嬉しい事は無いよ!!?
“…………そうか”
「君の用はそれだけだから、もう帰って構わないよ」
『はい!失礼しました』
ミロク理事長にそう言われたので、私はそのままその部屋を出た。
ブラックホークの執務室へ帰る道すがら、すれ違う人達が奇妙な物を見るような目で私を見ていた気がするが、きっと気のせいだろう。
“いや違うだろ。お前がニタニタしながらタダ券を眺めてたからだろ”
* * *
(アヤナミside)
「…………話というのは何でしょうか」
「ああ。君にはルフィアの事を話しておきたいと思ってね」
「ルフィア……ですか…」
先程まですぐそこに居た部下の名が上がり、私は少し不審に思いながら目の前の老人を見る。
「そう。ルフィアの事だよ、アヤナミ君」
――確かに昨日、いずれ話すと言ってはいたが……。
彼は含み笑いをして、それから言った。
「実はね、あの子は私の養女なんだよ」
「ミロク様の……ですか?」
「ああ。彼女が5歳の時――今から10年前に引き取ったのだ」
初耳だった。
この老いぼれに養女が居たなどとは聞いた事が無い。
しかも、それがルフィアだとは。
「……そのような事は初めて聞きますが」
「当然だよ。この事を知っている人間はほとんど居ないからね。
権力者の親族となれば物騒な輩に狙われたりもするだろう?それを避けたくてね。極力秘密にしているのだよ」
当たり前だというように、彼は淡々と語っていく。
「君になら彼女の事を任せられると思ったから、あの子をブラックホークに推したんだよ。
だから……よろしく頼むよ、アヤナミ君」
所々に気になる言葉が混じる。
――この老いぼれは、一体何を考えているのだ。
普段にも増して、彼の考えている事が読めない。
…………苛立つ。
「……貴方は一体何を考えているのですか」
「どういう意味だね?アヤナミ君」
「私には、何故貴方があの少女を引き取ったのか理解出来ません」
「ただの気まぐれだよ」
「貴方はそのような事で行動するような人間ではなかったと思います。
テイト=クラインの場合でもそうでした。彼は“ミカエルの瞳”の操者だった。
…………ならば、ルフィアにも“何か”があるのではないのですか?」
「……………………さあ、どうだろうね」
私が問い詰めると、ミロク様はまた笑って言った。
――やはり、そうなのだろうか。
否定しないのだから、可能性は捨て切れない。
だが、もしそうだったとしても、ルフィアに何があるというのだろう。
彼女に、ミロク様が求めるようなものがあるとは思えない。
それとも、昨日感じた力に関係があるのだろうか。
――分からぬ……。
「引き止めてしまって悪かったね。君も色々と忙しいだろう?
仕事に戻ってくれて構わないよ」
「…………分かりました。では、私はこれで」
一礼して、部屋を出る。
釈然としない思考を隅に追いやり、自らの職場へと足を向けた。
「ふふふ……。詮索したいようだが、あまり深入りはしない方が良いよ、アヤナミ君。
私の手にも余るような子なのだからね……」
私が去った後にミロク様がそう言っていた事など、私は知る由も無い。
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