第十話 任務
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今日は任務に出てもらう。いいな」
『はい』
という訳で、今日は初の任務に行く事になりました。
「内容は小規模な組織の殲滅だ。それほど難しい仕事では無い」
『了解です』
「では、行こうか」
『………………アヤナミ様も来るんですか?』
「当たり前だ」
『他には誰か来るんですか?』
「いや、私とお前の二人だけだ」
――嫌だっ!!
二人っきりとかやめてくれ。精神的に辛い。
「行くぞ」
『…………はい…』
しかし、断る事も出来ず、私は彼と共に要塞を出た。
* * *
ってわけで、やってきましたー。
目の前にあるのは、いかにも誰か居そうな廃墟っぽい建物。
『ここですか?』
「他にどこがあるというのだ」
『そうですね……』
周囲は雑木林。……いや、広葉樹林か?
そんな細かい事はどうでもいいが、とにかく周りにあるのは木。
目の前の建物以外に目的地と思われる場所は無かった。
…………いや、もしかしたら、その辺を掘ったら地下へ続く階段とかが出て来たり……。
「入るぞ」
『了解でーす』
無駄な思考は頭の端に追いやって、アヤナミ様の言葉に返事を返す。
それから私達は薄暗い建造物の中へ足を踏み入れた。
* * *
カツカツと、足音がやけに響く。
ろうそく等も無いこの廊下を照らしているのは、壁に開いた穴や近くの窓から差し込む頼りない日光だけだ。
さらに、ぼろぼろの内装が不気味な雰囲気を醸し出している。
やろうと思えば肝試しでも出来るのではないかと思うような感じだ。
しかし、残念ながら私はこんなボロ家を怖がったりしない。
……むしろ怒ったアヤナミ様の方が怖そう。
――……!?
『……アヤナミ様』
「ああ、分かっている」
一瞬感じた、鋭い殺気。
おそらくこの先で敵さんが待ち伏せしているのだろう。
そのまま少し歩くと、
「はぁっ!!」
やはり敵が出て来た。
物陰から長剣を振りかぶって襲い掛かって来たが、アヤナミ様のザイフォンによって吹っ飛ばされた。
向かい側の壁に叩きつけられて、かはっという乾いた声と共に床へ落ちる。
そして、それを合図にしたように、一斉にたくさんの人間が姿を現した。
皆、それぞれの手に剣や棒等の簡素な武器を持っている。……中には拳銃を持っている奴も居るが。
いつの間にか、狭い廊下の前にも後ろにも敵があふれている。
――何処からこんなに湧いたんだよ。
『……倒すしかないみたいですね』
「そのようだな」
アヤナミ様は腰のサーベルを抜き、私は手の平にザイフォンを発動させて戦闘体制に入る。
そしてアヤナミ様は進行方向に、私はその逆側に居る敵に向かって突っ込んでいった。
* * *
(アヤナミside)
時間が経つにつれて、廊下にあふれていた“生き物”が減っていく。
それとは対照的に、過去形になってしまった“生き物”が増えていった。
彼らを包むのは濃い赤。
未だ動ける者達は、ある者は憎しみをその瞳に湛え、またある者は恐怖を映しながら私に向かって武器を振り下ろす。
そしてその両方がすぐに動かなくなった。
あっという間に終わった。
――大した事は無かったな。
銀色に光る刀身に付いた血を落としてから鞘に収める。
後ろを振り返ると、ルフィアはまだ戦っていた。
私などに比べればまだまだ弱いが、周囲の雑魚に比べれば彼女は圧倒的な強さを誇っていた。
右に左にとステップを踏む動きは、返り血を浴びないための努力だろうか。
風に舞うザイフォンと、それに合わせて吹き上がる紅の血飛沫。
その中心に立つ彼女は、何故かとても美しく見えた。
周囲の赤に、ルフィアの水色の髪は良く映えた。
少しして、音が消えた。
『終わりました。アヤナミ様』
そう言って振り返った彼女の笑顔に、私は強く魅せられた。
――この少女を、自分だけのモノにしたい。
何故だろうか、無意識にそう思った。
「ああ。……行くぞ」
『はい♪』
――一体、自分はどうしたというのだろうか。
一目惚れ、とは違う。それでも、ふとした瞬間に恋に落ちるという事も有り得るのかも知れない。
後ろから付いて来る足音を聞きながら、この時間が、彼女と二人だけで居られるこの時間がもう少し続けばいいと、柄にも無い事を思った。
* * *
(ルフィアside)
「はっはっは、こんな所まで何の用だね?軍の犬が」
他の場所に比べるとかなり豪華な部屋。
片っ端から殺しまくった私達が最後に辿り着いたのはそこだった。
無駄に装飾に凝った椅子に座りながら喋る目の前の人物が、おそらくこの組織のボスなのだろう。
「大した用では無い。ただ……死んでもらうだけだ」
アヤナミ様が言う。
「……そんな事が出来ると思っているのか。たった二人で…!」
にやりと笑った男が合図をすると、周囲の家具やら何やらの影から武装した男の人達が出て来た。
何処にそんな大人数が隠れられたのか、なんていう本日二度目の疑問は置いといて。
彼らはすぐにこちらへ襲い掛かってきた。
……しかし、所詮はザイフォンも使えない雑魚の寄せ集め。あっという間にほとんどが動かなくなる。
――流石はアヤナミ様だ。
ようやく自らが不利な状況に立たされている事に気づいたらしい男は、慌ててこの場から逃げ出そうと試みた。
転びそうになりながら走り、そしてアヤナミ様の操作系ザイフォンに搦め捕られて盛大に転んだ。
……馬鹿だ。
「や…やめろ、やめてくれ!!命だけは勘弁してくれ!!」
この期に及んで命乞いか……。
呆れる。先程までの威勢は何処へやら。
私達がザイフォンで縛られた男に近付くと、彼は思い切りこちらを睨みつけた。
「……こんな事をして良いと思っているのか?!貴様等は…こんなに人間を殺して何とも思わないのか?!化け物共が!!」
「……お前のような、今までに何人も殺してきた人間に言われたくはないな」
――これだから人間は嫌いだ。
散々他人を貶めておいて、自分が不利になれば綺麗事ばかり並べ立てる。
自分の事など棚に上げて、自分勝手な理屈ばかり言う。
結局は自分の身がかわいいのだ。
他人の事なんて考えない、身勝手な生き物。
『……アヤナミ様、こんな奴さっさと殺しちゃってくださいよ』
「そうだな」
アヤナミ様が攻撃系ザイフォンを発動させた。
男の顔が恐怖の色に染まる。
「ま…待て!待ってくれ!何でもやるから!何でもやるから命だけは勘弁してくれ!!
金だって山ほどあるぞ…!奴隷だって居る、女だって……」
買収でもする気なのか、男はぺらぺらと並べ立てた。
アヤナミ様もそういうのが好きなのかなー、と思って横を見ると……
「…黙れ」
目茶苦茶不機嫌でした。
ああっ、眉間にシワが……。
そして今すぐにでもザイフォンを飛ばそうと腕を動かす。
目の前の男が、ひぃ、と奇妙な声を漏らす。
そして、
乾いた発砲音がした。
一瞬、何が起こったのか分からなかった。反応が遅れた。
左腕に違和感。
見ると、穴の開いた軍服の袖。そこからわずかに覗く肌色と赤。
――何だか拳銃にでも撃たれたみたいで痛そうだな。
他人事のようにそんな事を考えていたら、本当に痛みが襲ってきた。
前を見ると、震える手の中に小型の拳銃を握り締めた男が、引き攣った笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
『っ……』
「は、はは……ざまあみろ…!」
そんな声を絞り出した男は、そのまま血を流してばたりと倒れた。
アヤナミ様に殺されたのだという事は容易に想像がついた。
「大丈夫か?」
心なしか心配そうなアヤナミ様が、こちらに駆け寄って言う。
『大丈夫ですよ、これくらい!…………痛っ…』
別に何とも無いという事をアピールしたくて左腕を振り回してみたが、逆効果だった。
痛い……。
「見せてみろ」
アヤナミ様に、ぐい、と腕を引かれた。
……痛いです。地味に痛いですよアヤナミ様。そんなに強く握らないでください。
『大丈夫ですよ。少し掠っただけみたいですから。
これくらい自分で治せます』
「だが……」
『大丈夫ですよ』
「……そうか」
アヤナミ様に手を離してもらい、私は癒し系ザイフォンを発動させた。
実際、そんなに深い傷ではなかったので、すぐに塞がった。
……そんな事より、問題は軍服の方だ。
どうしよう、まだまだ新品なのに…。穴開きじゃあもう着れないじゃん。せっかく返り血浴びないように頑張ったのに無駄な努力だったのかよバカヤロー。最悪じゃん。全部あのジジイのせいだ。つーか、もしかしてまた新しいの買わないといけない系?やだよーただでさえ貧乏なのにー。それに今月は色々あって出費がかさんでるっていうのに…。
「…………軍服ならば支給品だから心配無いだろう」
『えぇっ!?……もしかして、口に出てました?』
「……ああ」
――ミスった!!
でもまあ、軍服はタダで貰える事が発覚したから良しとしよう。
「…………すまない、ルフィア。私が付いていながら…」
『あ、いや、アヤナミ様が謝らないでくださいよ!私がぼーっとしてたのが悪いんですから!』
――本当に、アヤナミ様が謝る必要なんて無いのに…。
心配そうに眉根を寄せた彼の顔を見て、この人は本当は優しい人なのかも知れない、と思った。
『ほら、早く帰りましょうよ!任務はもう終わったんですから!』
「……そうだな」
血液特有のにおいが充満する、居心地の悪い部屋から早く退散したくて、私はさっさと歩き出した。
いつの間にかオレンジ色に染まり始めていた陽光が、先程までは戦場だった場所を柔らかく包み込んでいた。
* * *
おまけ。
「おかえりルゥたん!!怪我とかしてない?大丈夫?」
執務室の扉を開いた瞬間、ヒュウガ少佐が飛びついてきた。
若干ウザいと思ってしまったのはご愛嬌という事で。
『大丈夫ですよー。見てのとおりピンピンしてます』
「嘘をつくな」
――アヤナミ様!?バラさないでくださいよぉ…。
「ルゥたん!!撃たれたの?!大丈夫?!ねぇ!!」
左腕に目を留めたヒュウガ少佐が、先程よりもさらにうるさくなる。
『そんなに叫ばなくていいじゃないですか…。もう治りましたよ』
「嘘はいけないよルゥたん!!痛くない?動かせる?大丈夫?」
……なだめてみたものの、取り乱したヒュウガ少佐に聞こえているのかどうかは謎だ。
「大丈夫?!本当に大丈夫?!何ならオレが癒してあげr…ぐっはぁ!!?」
やっぱりウザかったので蹴りを入れてしまったが、それもご愛嬌という事で。
.