とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語
まりんが抑音と一悶着あってから1ヶ月
仕事に復帰できるまで回復したまりん
沖田「怪我はもう大丈夫なのか??」
『 うん!お陰様で』
土方「次は無理すんじゃねぇぞ」
『はい……すみません……』
沖田に抑音との事情を話した後、同じように近藤、土方にも話した。
初めは、なんでひとりで抱え込むんだと怒られたが、それ以上は強く責められず真選組総出で協力してくれると言ってくれた。
近藤「じゃあ今日からまた頼む」
『はいっ!』
沖田とまりんはこうして見回りへと出た
『久しぶりのお外だ…』
沖田「引きこもりみてぇなセリフだな」
『そりゃ、1ヶ月も怪我治すために休養してたんだから仕方ないじゃん!2週間くらいで治ってたのに過保護なんだから』
ブツブツ文句を言いながら歩く
沖田「心配で1ヶ月休ませるようにお願いしたのは俺だけどねィ((ボソッ…」
『ん?何か言った?』
沖田「いや、なんでもねぇ」
そう言うと沖田は、まりんの頭をポンポンっと撫でる
『????』
まりんは理解出来ずにいたが、考えても分からないと思い沖田に続き歩き出す
しばらく見回りをしたあと、前に訪れた甘味処でまた食事をする
沖田「復帰祝いってことで好きな物頼んでいいぜ、俺の奢りでさァ」
『なにか企んでる?』
沖田「なんでそうなるんでィ」
『なんとなく……』
いいから早く頼め、と急かしてくるので
どら焼きを2つ頼む
沖田「2つでいいのか?この間は5個は食べてただろ」
『いや、なんか、奢りだって言われて食べるのってなんか申し訳なくて…私なりの遠慮というか…』
モジモジしながら答える
沖田「いつもは、奢り!?行こ!ってはしゃぐくせに」
『なんか、違うんだもん』
沖田「ふーん、まぁいいけど」
しばらく他愛もない話をしてると、2人の前にどら焼きが2つ来る
『沖田さん、これ、はい!』
沖田「え?」
まりんは沖田に自分のどら焼きをひとつ差し出す
『二人で食べた方が美味しいから…沖田さん何も頼んでなかったし…』
少し戸惑いながらも、沖田は差し出されたどら焼きを手に取りひと口食べる
沖田「うめぇ」
『でしょ!!どら焼き美味しいでしょ!!好きになった??!』
そう聞かれた沖田は迷うことなく
沖田「好きになった」
と答える
(まぁ、別の意味だけどねィ)
『やった!どら焼き仲間だぁ!』
そして、一通り食べ終えたあと甘味処を出た
『あ、沖田さん、私これから特殊部隊として行かなきゃ行けないところあるから先帰ってて』
沖田「どこ行くんでィ?」
『これは特殊部隊としての仕事なので企業秘密!!』
沖田「なら仕方ねぇな、でも、また1人で抱え込むんじゃねぇぞ」
『分かってる』
そういうと、互いに別方向へ歩き出す
まりんはある場所へと向かっていた。
階段をのぼり、インターホンを押す
『銀さーん私です、七瀬です〜』
すると、ドアの向こうからドタドタと走ってくる音が聞こえてくる
神楽「まりん!!待ってたネ!!」
ドアが勢いよく開くと、神楽ちゃんがまりんに飛びついてきた
『神楽ちゃん!待って!力加減!死んじゃう!』
神楽「あ、ごめんヨ」
新八「神楽ちゃん、急に飛びついたらまりんちゃんがびっくりするでしょ
まりんちゃんいらっしゃい、どうぞあがって」
『ありがとう、お邪魔します』
新八「銀さん、まりんちゃん来ましたよ」
銀さん「おー」
そこには、天パで銀色の髪をした坂田銀時がいた。
『進捗があったのでお話しに来ました』
銀さん「たくっ…面倒な依頼受けちまったぜほんと、金も発生しないのに……」
まりんが、抑音と一悶着ある少し前
万事屋という何でも屋が江戸にあることを知り、抑音の調査を依頼していたのだ。
『お金払いますって言ってるのに、子供からお金巻き上げるほど飢えてないって言ったのは銀さんでしょ』
銀さん「そうだけどよぉぉ……ほら、プライドとかあるじゃん?」
『銀さんにプライドなんてあったんですね』
銀さん「銀さん泣いていい?」
新八「それでまりんちゃん、進捗っていうのは?」
新八がまりんに聞く
『そう!えっとね』
まりんは、抑音と一悶着あったこと
怪我をしたこと、今は一番隊副隊長を兼任していることを話した
『万事屋の近くの花屋の路地に抑音はいたの、だからあそこら辺を見張ってて欲しい
私だと身バレしてるから……万事屋にしか頼めないの』
神楽「そんなのお易い御用アル!!私に任せるネ!!」
『神楽ちゃんありがとう!頼もしい
でも、本当に危険な依頼だって自分でも分かってる。だから命の危険を感じたら逃げて』
銀時は、へーへーと適当に返事をする
銀さん「んで?まだあるんだろ、言うこと」
銀時はまりんの方を見て言う
『……うん、これは私の憶測に過ぎないけど
多分私があの時会った抑音は、抑音じゃない』
新八「え、?それはどういうこと?」
『私を幼い頃からお世話してくれてたのが抑音、だから抑音をいちばん知ってるのは私
そんな私だからこそ分かる、あの抑音が抑音じゃない理由』
まりんはいつになく真剣な目で3人を見る
『抑音は、私を呼ぶ時"まりん様"って呼ぶの
でも、あの時の抑音は私のことを"まりんさん"と呼んでいた
あれは、抑音の姿をした別人……
もしくは、抑音は誰かに乗っ取られてる』
銀さん「なるほどな…」
『そうなると、両親の部屋に行ったときにいた抑音は既に乗っ取られていたことになる
両親を殺したのは抑音じゃない、』
(薄々気づいていた、抑音がそんなことするはずが無いって、今回のではっきりした)
『私は抑音を助けるためにこれから動く』
銀さん「だってよぉ〜沖田くん〜」
『え?』
後ろを振り向くとそこには先程別れたはずの沖田がいた
沖田「そういうこと、なんで俺じゃなくてこいつらに相談してんでィ」
『や、あの、後で沖田さんにも話そうと思ってたの!ほんとだよ!というか、なんで居るの!?』
沖田はジリジリとまりんを壁に追いやる
逃げ場をなくしたまりんはあたふたしていた。
沖田「そういうのは俺に一番に言え」
『は、はい』
銀さん「彼氏さん怖ぇー」
『彼氏じゃないです!銀さん辞めてください!てか助けて!!私だって怖いよぉぉ!!』
銀さんに助けを求めるが、一切動こうとしない
まりんは銀時を睨むが、ケラケラと面白いものを見るかのように笑っているだけだった
神楽「おいサド!私のまりんから離れるネ!!!」
すると、神楽が沖田に飛び蹴りをする
沖田「何するんでィ!!クソチャイナ!!」
神楽「ざまーないネ!!」
『今のうち!』
沖田が神楽に気を取られてる隙に
まりんは沖田の間を抜け出すことに成功する
『じゃ!情報掴んだら教えてくださいねー!!』
そういうと、再びお願いをしてまりんは万事屋を出ていく
沖田はそれに続き追いかけるように出ていく
神楽「まりーん!また来てヨ!絶対だヨ!」
『うん!今度は一緒に遊ぼうね』
沖田「何勝手に約束してんでィ」
『お友達と遊びの約束くらいいいでしょ!
それに!万事屋に来てからの沖田さんなんか変!』
いつもなら、まりんのすることにはとやかく言ってこない沖田が何かと口を出してくる
『それに、企業秘密だからって言ったのに!』
沖田「着いてくるなとは言われてねぇ」
『っ……確かに言ってない……』
何も言い返せなくなり黙り込む
沖田の方を見ると、少しだけど苦しそうな顔をしていたように見えた
(どうしてそんな顔するの?)
沖田「俺を頼れ、約束しただろ」
『さっきも言ったけど、後で沖田さんにも話すつもりだったんだよ?ほんとだよ?』
沖田「それは、抑音が乗っ取られてるって話か?」
『そう』
沖田「抑音の調査は万事屋だけか?」
『これはね、ちゃんと理由があるの
私も沖田さんも、あいつに身バレしてるの
だからもし、沖田さんがあいつと何かあって怪我しちゃったら嫌なの…
万事屋ならあいつの範疇にいない、だから依頼したの』
沖田「……」
『沖田さんを頼るって約束したもん!だから遠慮なく頼る!
あと私は、沖田さんが傷つく姿見たくない』
沖田「俺は怪我なんかしねぇ、大丈夫でィ」
そしていつの間にか、いつもの沖田の表情へと戻ってきた
ポーカーフェイスの沖田の表情はいつも読めない
だからこそ、まりんは沖田の苦しそうな表情が脳裏に焼き付いて離れなかった。