とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語



8年前───

武州



俺が初めてまりんと会ったのは
8年前、まだ武州にいた時


その日も何も変わらない日だった
朝、普段通りに道場に行き
帰っているところだった


沖田「土方のヤロー、、やってくれたな」



その日は土方さんに1本取られた挙句
木刀が頭にあたり腫れてしまっていた




イライラしてた俺は姉上に惨めな姿を見られたくなくて、寄り道をしていた



沖田「クソっ!!!!」



沖田は目の前にあった少し大きめの石を思いっきり蹴飛ばした



『 あだっ!!!!なに、!?!』



沖田が蹴飛ばした石が前にいた女の子に当たってしまった



『 ちょっと!!危ないでしょ!!!
私の頭が割れたらどうしてくれるの!』



沖田「そんなところにいるのが悪い
割れてねぇからいいじゃねぇか」




『 この、ガキ…!!
その見た目じゃ絶対私より年下でしょ!』



沖田「俺は10だ」



『 10!?!?私とあまり背丈変わらないのに、私より2個上!?!?』



沖田「2個上ってことはお前、8かよ
お前の方がガキじゃねぇか」



『 ガキじゃないもん!!!!
言っておくけど私強いから!!絶対あなたより強……』



すると、急にその子が頭を抱えてしゃがみこむ



沖田「!?おい、どうしたんだよ!」




『 さっき、あなたが蹴って飛んできた石が当たったところが痛い……』



その子の頭を見ると、少し切れており血が出ていた
今にも泣きそうなその子


沖田「お前、名前は」



『 七瀬、まりん、、』



沖田「じゃあまりん、俺の家で手当してやるから泣くんじゃねぇ」


そういうと沖田はまりんに手を差し伸べる



『 うん……』



沖田はまりんの手を引っ張りながら自分の家へと向かう



しばらく歩くと目的の所へ着く



『 ここが、あなたの家?』


沖田「ああ、そうだ」



『 そういえば、あなたの名前まだ聞いてない…』



沖田「俺は沖田総悟」



『 総悟くんね』



沖田「あぁ」



玄関を入り部屋を案内する


沖田「姉上、ただいま帰りました」



ミツバ「そーちゃんおかえりなさい
あら??その子は???」



沖田「こいつはまりん、訳あって怪我させてしまいました…
手当してやって欲しいです」



沖田は姉のミツバに頭を下げてお願いをする
まりんはどうしたらいいか分からず、あたふたしていた


ミツバ「あら、それは大変!!
まりんちゃんどこを怪我したの??」



『 あ、ええっと、、ここです、』



まりんは切れてしまった部分を見せる


ミツバ「そーちゃん、まりんちゃんにちゃんと謝ったの???」



沖田「……まだ、、です……」



ミツバ「全くもう…手当終わったら謝るのよ??
じゃあまりんちゃん、ちょっとこっちに来てくれる??」



『 うん…』



まりんはミツバに連れられてどこかへ行ってしまう
手当してる間、沖田はどう謝ろうか考えていた



手当をしてる最中、ミツバはまりんに口を開く



ミツバ「そーちゃん、毎日1人で遊んだりしているの
道場の人たちもみんな歳上でね、まりんちゃんみたいに歳が近い子、年下の子は居なくてね
良かったら仲良くしてあげてほしいわ」

と、言われいた


『 ミツバねぇ、手当ありがとうございます
実は私も、道場ではないんですけど
稽古してるんです、そこには私より年上ばかりで、私もお友達と呼べる子が居なくて……』



ミツバ「そーちゃんならきっとお友達になってくれるわ
そーちゃんをよろしくね」



『 はい!!!』



まりんは一礼し部屋を後にする



1番初めにいた部屋へ戻ると沖田がいた



『 総悟くん、手当終わったよ』



沖田「ええっと、その、石蹴って怪我させちゃってごめん……」



『 ええぇ???どうしよっかなぁ〜??』



沖田「謝ったんだから許せよ!」




『 それが怪我させたやつのセリフか!!
もう……
じゃあ、私とお友達になってくれたら許してあげる』



沖田「とも、だち…??」



沖田は不思議な顔をしまりんを見る
まりんは笑顔で


『 そう!!私とお友達!!』



と、答える




沖田は少し恥ずかしそうな表情をして答える


沖田「そこまで友達になって欲しいって言うならなってやらないこともない」




『 何その上から目線
まぁいいや、これで私たちお友達ね!!』



まりんは沖田の手を両手で包み込み、握手する



沖田「おい!恥ずかしいからやめろよ!」




『 なんでよ、さっき手繋いでたじゃない』



沖田「それとこれとは別だ!!」



『 あっ、、そう』



パッと手を離すと、沖田は少しまりんから距離をとる


(なんなんだよ、まりん見てると心臓が早くなる…!)



『 総悟くんどーしたの??』




抑音「まりんさまーーーーー
どこですかーーー私ですよーーー
早く出てこないとーーーどら焼き全部食べちゃいますよーーー」



『 !!!!!
それは許さない!!!!!、!
総悟くん!私もう行かなきゃ!
また明日ね!!!』



まりんを探しに来た抑音に気が付き
沖田の家を飛び出す



沖田「また、、明日……」



手を振って出ていったまりんの姿が目に焼き付いて離れない
未だに鳴り止まない心臓にイライラする沖田


沖田「なんなんだよ、、これ、」


沖田は耳まで赤くなっていた



次の日





『 そーうーごーくーん!!!
来たよー!!!!』



まりんは沖田の家へと来ていた



ミツバ「あら!まりんちゃんおはよう」



『 ミツバねぇ!おはようございます!』



ミツバ「そーちゃんならもうすぐ出てくるわよ」




ミツバがそういうと、沖田が出てくる



『 あ!総悟くん!!遊ぼ!!』



沖田「!!!!
なんでいんだよ」



『 だって、総悟くんと遊びたいんだもん』




(また、心臓が…)



沖田「今日は特にすることないし
別に遊んでやってもいい」



『 ほんと!!!!やったあ!!!
じゃあ行こ!!!』



沖田「っておい!!」



まりんは沖田の手を引っ張り走り出す


ミツバ「気をつけるのよー!」




まず2人が来たのは大きな木があるところだった



沖田「なにここ」



『 ここは、私がこの武州ってところに来て一番最初に見つけた大きな木!!!』



沖田「武州に来たって元はどこにいたんだよ?」



『 私は今もずっと江戸ってところにいるの!
今は稽古のためにここに来てるだけなの
だから、後1ヶ月くらいで帰っちゃうの』



沖田「1ヶ月…」



沖田は少し暗い顔をする


『 この1ヶ月は総悟くんと毎日遊ぶの!!』



沖田「稽古は?」



『 夜してるから大丈夫!!!
それとも、総悟くんは私と遊ぶの嫌??』



悲しそうな顔で沖田に問う


沖田「別に嫌じゃねぇ」



『 良かった!!!総悟くんとこうして遊ぶの楽しいもん!』



沖田「お、俺も…」



『 じゃあ総悟くん!次行こ!!』


沖田「ああ!」



その日は2人で色んなところに回って遊んだ


その次の日も
その次も
まりんと沖田は遊んだ



そして1ヶ月後、まりんが帰る前日の日


『 じゃあね!総悟くん!また明日!!』



沖田「また明日」


いつも通りまりんと別れ家に帰る




沖田「姉上、ちょっといいですか?」



ミツバ「どうしたの??」



沖田「僕、まりんのことを見てると心臓が早くなって鳴り止まないんです
まりんと遊んでるのが楽しくて一日が過ぎるのがとても早いんです
明日、まりんが帰る日で、僕、なんでかよくわかんないけど、帰って欲しくないんです……」



ミツバは真剣な沖田を見て答える


ミツバ「そーちゃん、もし、まりんちゃんがそーちゃんじゃない他の男の子と遊んでるの見たらそーちゃんはどう思う??」



沖田「すごく嫌です」



ミツバ「ふふっ、そーちゃんそれはね
恋っていうのよ」



沖田「恋…?」



ミツバ「まりんちゃんとずっと居たい
遊んでたい、誰にも取られたくないって思ってるんでしょ??」



「なんで全部わかるんですか??」



ミツバ「それが恋だからよ」


ふふっ、とずっと嬉しそうに笑うミツバ


ミツバ「そーちゃんはまりんちゃんのことが好きなのね」



沖田「好きです」



ミツバ「あら!まりんちゃんには伝えないの?」



沖田「まだ伝えません」



ミツバ「まだって、まりんちゃん明日帰るのでしょう??
後悔しないようにね」


沖田「はい、姉上ありがとうございます」



部屋を後にし、縁側に座る


沖田「俺、まりんが好きなんだ」



沖田はその時、自分がまりんに恋してることを自覚した
(明日、まりんが江戸に帰ってしまうと知ってる以上、引き止めることなんてできない)


自分の気持ちを伝えてまりんに迷惑をかけたくないと思い、気持ちを伝えないことに決める沖田



そして、まりんが帰る日





『 総悟くん、1ヶ月私と遊んでくれてありがとう!!総悟くんといるの私の人生の中でいちばん楽しかった!!!
またどこかで会えるといいね!』



沖田「ああ、」



『 どうしたの??元気ないじゃん』



沖田「そんなことねぇ」



まりんに悲しいと思っている自分の感情を知られたくなくて必死だった


『 私本当は総悟くんとバイバイするの嫌なの
総悟くんは嫌じゃないの?』



沖田「……俺だっていやだ」



『 じゃあ約束しよ!!いつか2人で強くなったらまた会おうね』



指切りげんまんをして約束をする



沖田「約束だからな」



『 うん!!!!』





2人で約束をして、まりんは江戸に帰っていった


沖田「俺はいつか絶対に侍になって江戸に行く」



『 頑張ってよね、芋侍さん』



沖田「芋侍は余計だ」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



俺はその約束を果たすため
毎日死ぬ気で稽古した


江戸で一旗揚げると聞いた時はとても嬉しかった
まりんに強くなった自分を見てもらえると思ったからだ


江戸に真選組として活動を始めてしばらく経った頃、ある屋敷に襲撃があり
被害が出ていると通報がはいり、俺はその場へ向かった


その屋敷へ着くと、もう既に手遅れだった
屋敷は炎に飲まれ、原型をとどめてなかった
中から家臣だろう人物が出てきて俺にしがみつきながら



家臣「お願いです!!!、まりん様を!!
七瀬まりん様をおお、お助け下さい!
今、清祓瀬を持って必死に逃げているんです!!
私たちは助けてもらったのに、何も出来ず……お願いします」



家臣たちは俺の前で頭を下げて
頼み込む



沖田「……後のことは俺に任せてくだせぇ」




逃げた方向へ向かうと、地面には足を引きずったような血の跡があった
その跡を追うと、刀を大切に守りながら
今にも斬られそうなまりんが目に入ってきた

久しぶりに見るまりんは、大人びていた
姉上が見たら気が付かないだろうが
俺はすぐわかった
初恋の相手だからだ


まりんに襲いかかりそうなヤツらを俺は1人残さず斬る



『 まって!!!あなたの名前は?』



そうまりんに聞かれた時に、俺は自分の名前を答えられなかった
強くなると約束したのに、まりんの両親を救えなかったからだ
なんでもっと早く来てくれなかったんだって
幻滅されると思ったからだ



沖田「俺は、、ただの芋侍でさァ」



俺はもう金輪際、まりんと会うことなんてないと思っていた
この感情も忘れてしまおうと思っていた


なのに




土方さんの部屋へ入るまりんを見た瞬間
心臓が止まったように感じた


幸いなことにまりんは俺の事を覚えてなかった
だから、このままこれでいいと思っていた
好きなまりんに嫌われたくなかったからだ


まりんが抑音にやられた時は、とてつもない怒りを感じた
まりんが1人であんな大きなことを抱えてるなんて思っていなかったからだ

そして、まりんはあの時助けた俺の話をしだし、恨んでいないことを知った


今まりんは俺の目の前にいて、手を伸ばせば触れれる距離にいる。俺より一回り小さい手を握り、自分に誓った
まりんを守ろうと
そして自分の気持ちに整理が着いたら本当のことを言おうと



まりんの幸せを守るために
まりんを支えるために


まりんとまた一緒に笑えるように

俺はまりんのためなら何だってする
俺は、まりんが好きだ。
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