とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語
走っても走っても灯が見えない
鉛のように重い足が思うように動かない
騒ぎで目が覚め、駆けつけた時には両親は殺されていた
部屋一面は血で溢れており、まるで地獄絵図のような光景
そこに立っていたのは、血で汚れた潔祓瀬を持った┈┈┈┈。
『 うぅ…いや、待って…!!!!』
目が覚めると見覚えのある天井が見えた
いつもと同じ夢、同じところで終わってしまう夢にため息をつく
そして、左手には違和感があった
沖田「!!!近藤さん!土方さん!目ェ覚ましましたぜ!!」
近藤「ほんとうか!総悟!」
沖田が声をかけると、近藤と土方がまりんの近くへ来る
土方「まりんてめぇ、抑音と一悶着あったみたいだな」
まりんは沖田に支えられながら起き上がる
『 ごめんなさい…』
土方「ゴメンで済んだら警察は要らねぇんだ
あれほど、無茶するなって言ったよな?」
返す言葉もなかった
忠告を無視し、抑音と闘った結果がこれなのだから
近藤「まぁ何はともあれまりんちゃんが無事でよかった」
土方「怪我が治ったらじっくり話聞くからな」
そう言うと、土方と近藤は部屋から出ていった
部屋にはまりんと沖田だけになった
『 あ、あの沖田さん、?さっきから気になってたんだけど、この手は??』
左手に目をやると、沖田に手を握られていた
沖田「気にしねぇでくだせぇ」
『 気にしないでって…』
沖田「それより、抑音って何者なんですかィ?」
『 それは……』
沖田「教えてくだせぇ…」
左手を握っている沖田の手は少し震えていた
『 抑音は、尊喃弔抑音は私の許婚だった人よ』
沖田「許婚…」
『 七瀬家の長女として生まれた私は
七瀬家を継ぐもの、清祓瀬の継承者として小さい頃から鍛えられてたの、清祓瀬は父方のもので、抑音が持っている潔祓瀬は母方の刀なの』
『 清祓瀬と潔祓瀬は双刀でね、本来は二つで一つの刀なの、今よりもっと昔
私の先祖様はこのふたつの刀がまだひとつの時、あまりに強大な力を持ってる刀を制御出来なくて扱えなかった、だから刀を双刀にして清祓瀬と潔祓瀬で分けることで力を分散させていたの
そこで、潔祓瀬を抑音の先祖さま、初代潔祓瀬所持者に渡したってことよ』
『そして今まで2人の選ばれた所持者が共に協力をしながら清祓瀬と潔祓瀬を使って人々を守って来たのよ
そして、次の継承者が私と抑音って言う訳なの』
沖田の方を見ると、今日初めて目が合う
その目はとても真剣だった
(この人になら…)
まりんは続けて話し出す
『そして2年前、事件は起こった
私は既に清祓瀬を継承していたけど、
抑音はまだ認められず引き継いでいなかったの』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
2年前
『抑音!!!早く稽古するよ!!
じゃないとお母さんから潔祓瀬もらえないよ!?』
抑音「そのくらい分かってますよまりん様
でももう、5時間ぶっ続けでしてるじゃありませんか……」
『 あれ?もうそんなに経ってる??
じゃあ今日は終わりにしよっか』
まりんと抑音は毎日のように稽古を共にしていた
当時、まりんは14
抑音は20で6つも離れているが、抑音に負け劣らずだった
抑音「私はいつ認められるのでしょうかね」
『 きっともうすぐだよ!!お母さんがそろそろかなって言っていた!』
抑音「それは本当ですか?まりん様」
『 本当!』
抑音「早く継承して、2人でこの国を守りましょう」
『 当たり前!!!まぁ、結婚は絶対しないけど』
抑音「それは私も賛成です
誰が好き好んでまりん様のような人と結婚するんですか、こんな手のかかる子を」
『 悪口??ねぇ?悪口なの??
こんな私でも好きになってくれる人はいるから!?!舐めないでよ!?』
『 はいはい』
これが、まりんと抑音の日常だった
稽古をし、たわいもない話をし
どんな試練でもお互いに乗り越えてきた
『 じゃあ私はもう寝るとしようかな』
抑音「汗もかいてるのでしっかりお風呂に入ってから寝るように」
『 分かってる!!!抑音はお母さんか!』
そうして、まりんはお風呂を入り
自室へ戻って就寝の準備をする
明日の稽古のことを考えながら眠りへつく
そして、まりんが寝た数時間後、事件は起きる
屋敷内が騒がしいことに気が付き目が覚める
寝ぼけながら襖を開け確認をする
そして目に映ったのはまさに戦場だった
(ッッ!、!なに!?まさか敵襲!?)
急いで清祓瀬を取り、屋敷内を走る
七瀬家の家臣たちが色んなところで戦っている
家臣「まりん様!敵襲でございます!早くお逃げ下さい!!」
私を心配して来た家臣が血まみれになりながらこちらへ走ってくる
『何を言っているの!!こんな状況を見て逃げるわけないでしょ!!私も戦う』
家臣「しかし、!!!」
『 私を誰だと思ってるの??七瀬家を継ぐ、清祓瀬を継ぐ七瀬まりんよ??
私を信じて』
そういうと、まりんは走り出す
(まずは人命救助が優先ね、この状況なら
家臣たちは結構手こずってるみたい)
まりんは家臣たちが戦っている敵たちを
素早い身のこなしで斬っていく
家臣2「まりん様!!」
『 早く逃げて!!!ここにいる敵は私が対応する!』
まりんはある場所に向かいながら、道中の敵を斬っていく
(数が多い…!!一体どこの回し者…?)
しばらく走ると目的の場所へ着く
まりんは思いっきり扉を開ける
『 お父さん!!!お母さん!!!』
両親の部屋へ向かうと、そこは地獄絵図のような光景だった
血まみれになり息絶えている両親がまりんの目に飛び込んでくる
状況が飲み飲めず、思考が止まる
呼吸が乱れだしその場に立っていられなくなる
そしてそこに居たのは
『 抑音、???どう、、して、、』
そこには、潔祓瀬を赤く染め
冷たい目でまりんを見る抑音がいた
気が付くとまりんは囲まれていた
抑音「捕らえなさい」
抑音の合図とともにまりんに襲いかかってくる
まりんは力を振り絞り、その場から逃げる
暗い夜、先には灯りもない
(なんで?ねぇ、なんでなの??抑音!)
色々な感情が入り混じって混乱状態になったまりんは適切な判断が出来ずにいた
そして、普段なら避けることが出来るところで躓き転んでしまう
追いつかれたまりんはどうしたらいいか分からずにいた
『 やめ、て、』
まりんの言葉など通じる訳もなく
容赦なく振り下ろされる刀
覚悟を決めたまりんは強く目を閉じる
だが、いつまで経っても思っているような痛みはない
聞こえてくるのは、男たちの騒ぎ声。
次に目を開けた時には先程までいた男たちが全員倒れていた
ただ一人立って居るのは、黒い隊服をまとった男の子だった
きっとまりんとそう大差ない
夜で暗いせいか彼の顔が見えない
??「あんた名前は」
『 七瀬、、まりんです、』
急に名前を聞かれ咄嗟に答える
??「七瀬、まりんか
あ、こいつら全員俺が斬ったんでもう大丈夫でさァ」
『 あ、あの!!!あなたの名前は、!』
??「俺は、、ただの芋侍でさァ」
『 まって!!』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『 って言うことがあったの
これが私の過去、親の仇をとるため抑音を探していたの
後、私を助けてくれた彼にもお礼が言いたいの
助けてくれてありがとうって』
まりんは自分の過去を話したのは沖田が初めてだった
沖田「そんな事があったんですかィ
辛いことなのに話してくれてありがとうな」
『 ううん、沖田さんだから話したの
最後まで聞いてくれてありがと』
そういうと、まりんの左手を握っている沖田の手の力が少し強くなる
沖田「んで、その助けてくれたやつのことは恨んでないんですかィ??」
『 恨む???なんで???恨むことなんてないよ??だって、あの時あの人が助けてくれなかったら私は死んでいた
だからとても感謝してるの、いつか会ってお礼が言いたい』
沖田「そうか」
(俺は勘違いしてたみてぇだな)
『抑音が江戸にいるって聞いて居てもたってもいられなくて
独断で行動してごめん、、』
沖田「次は俺を頼ってくだせぇ
まりんの力になりてぇんでさァ」
『 うん、次は頼る、ありがとう沖田さん』
微笑むまりんの顔を見て、沖田は安堵する
沖田「それで、ひとつ提案なんだが
これからも、一番隊の副隊長としていねぇか?
特殊部隊の仕事と兼任になっちまうが…
そうすれば抑音の件に俺も協力できまさァ」
『 え、、いいの??迷惑じゃない?』
沖田「迷惑じゃねぇ」
その言葉が嬉しく、まりんは沖田に抱きつく
『 沖田さんありがとう!!じゃあこれからもよろしくね!!!!』
沖田「おいまりん!!怪我してるんだから
大人しくしてなせぇ!!!」
『 ごめんごめん笑』
沖田「ったく…」
(心臓がいくつあっても持たねぇ)
そしてまりんは、沖田と共に一番隊として活動を続けることを決めた