とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語
まりんが一番隊に入隊してから一週間が経とうとしていた
足の怪我は思っていたよりも早く回復し
今は稽古に出れるくらいの状態になっていた
『 早く任務に行けるようにしなきゃね
稽古稽古!!』
道場へ向かうと既に隊士数人と沖田がいた
全員汗を流しながら一生懸命稽古をしている
沖田「足はもう大丈夫なのかィ??」
『 うん、もう稽古はしてもいいって言われた
だからこの訛ってる体を動かそうかなって』
軽くストレッチをし、竹刀を持つ
沖田「そーいや、まりんの実力をまだ知らねぇや
1本手合わせ願まさァ」
『 前は土方さんに邪魔されたもんね
いいよ』
そういうと、沖田とまりんは向かい合わせになり竹刀を構える
2人の目はまるで戦場の敵を見るかのように鋭い目をしている
沖田「あり、清祓瀬じゃなくていいんですかィ???」
『 それだとフェアじゃないでしょ
それとも、私の事女だと思って舐めてる?』
沖田「そういうつもりで言った」
『 最初にも言ったけど、私結構強いから
女だからって舐めないでよね!!』
まりんはそれを合図に沖田へ向かって竹刀を振る
が、簡単に避けられてしまう
沖田「へー、なかなかだねィ」
体制を戻し、沖田の攻撃を防ぐ
『 沖田さんこそ』
周りにいる隊士はまりんを見て驚く
「沖田隊長の攻撃を防ぐなんて……」
沖田「じゃあ次はこっちから!!!!」
素早い速さですぐに間合いにはいられる
が、まりんは沖田の攻撃を全て防ぐ
道場には竹刀同士が強くぶつかり合う音が響く
『 私結構やるでしょ』
沖田「その余裕が命取りですぜ」
『 !!!!!』
沖田はまりんの後ろにまわり竹刀を振る
沖田「もらった!!!!!」
誰もが沖田が勝ったと確信したが
まりんは沖田の攻撃を飛びかわす
『 次は私』
着地と同時に素早い速さで体制を整え
沖田へ連続技をする
沖田「あれを交わすとは、」
『 だから言ったでしょ
私強いって、!
この勝負私がもらう!!!!』
沖田「いや俺でさァ!!!!」
激しい奮闘の末
最終的に沖田が勝った
『 沖田さんのずる!!!!
ずるドS!!』
沖田「負け惜しみ〜」
そしてまた2人で言い合いをする
この光景も1週間で見慣れた光景になっていた
「いやぁ、でもまりんちゃんすごいよ
沖田隊長とあんな互角に戦えるなんて」
沖田「一番隊副隊長してるなら、あのくらい出来て当然でさァ」
『 その前に私、隊長なんですけど』
そんな話をしていると土方さんが道場へやってきた
土方「まりん稽古中すまないが、ちょっといいか??例の件について情報を掴んだ」
まりんの表情は一気に変わり真剣な顔になる
『 分かりました今行きます』
竹刀を片付け、土方さんについて行く
すると腕を握られる
『 沖田さん???あの、』
沖田はまりんの腕を掴みまりんを見つめる
沖田「あ、ああ、悪ぃ」
『 すぐ終わると思うから』
まりんは沖田の顔を見ながら微笑む
沖田「待ってまさァ」
沖田に手を振りまりんは道場を出ていく
土方(あいつも分かりやすいな)
土方の部屋へ着くと近藤もいた
向かい合わせに座り本題へはいる
『 それで土方さん、情報というのは』
土方「ああ、見回りをしていたらまりんが言ってたヤツに特徴が近いやつを見つけた」
『 本当ですか!?!、それは、どこですか!!??、』
土方「まだ、そいつと決まったわけじゃねぇけどな
街中にある花屋の近くの路地に入っていった」
まりんは今まで入ってこなかった情報を聞き
ヤツの存在が江戸にあると確信する
『 やっぱり、あいつは江戸にいるのね
抑音、、、絶対親の仇をとる』
近藤「あまり無理するんじゃないぞ
今は俺たちがいるんだ、頼ってくれ」
『 近藤さん、ありがとうございます、
でもこれは私の問題です、近藤さんや土方さんにはとても感謝しています、だから巻き込みたくないんです、もう誰も失いたくないんです
私だけで何とかしてみせます』
まりんはそう言うと立ち上がり部屋を後にする
土方「おい、そこにいるのは分かってるんだぞ
総悟」
沖田「バレてたか」
部屋の外には話を盗み聞きしてた沖田がいた
沖田「んで、抑音って何者なんでィ」
土方「尊喃弔抑音。俺達も詳しい話は知らねぇ
ただ、ひとつ知ってることは、そいつがまりんの両親を殺しているってことだけだ」
近藤「総悟、まりんちゃんはああ言っていたがあの子は無理をする、きっとトシからの情報を聞いてその場に行くだろう」
沖田「わかってまさァ
まりんの行動くらい、あいつは俺が守る」
いつになく真剣な沖田
土方「まりんと本当は前回会ったのが初めましてじゃねぇんだろ?
ならなんでそれを伝えない?まりんが"あの時"のがお前だって分かったらもしかしたら」
沖田「そのもしかしたらが怖いんでィ。まだ、俺の中で準備が出来てねぇんでさァ」
土方の話を遮るように沖田が言う
沖田の顔は少し寂しそうだった
沖田「俺だったって知って拒絶されるのが怖いんでィ
あの時、早く駆けつけてたらまりんの親は殺されなくて済んだかもしれねぇ……
なんで早く助けてくれないんだって憎んでるはずでさァ……」
沖田はその言葉を最後にし部屋を出ていく
近藤「総悟!!まりんちゃんは!」
近藤さんの声は沖田には届かなかった
近藤「まりんちゃんはあの時助けたお前を憎んでなんていないのに、、な、」
土方「ったく、勘違いが激しい野郎だ」