とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語


??「早く入れてちょうだい!!!!沖田総悟って人に話さなきゃいけない事があるのよ!!!」


隊士「ですから!!部外者を入れることは出来ないんです!!!」


??「あなた頭固すぎなんじゃないの!?いいから早く沖田総悟を出してちょうだい!!」


まりんが誘拐されて切羽詰まっている真選組に急に押し寄せてきた女。
門が騒がしいことに気づいた近藤、土方、沖田はその場所へと向かう


土方「おいおい、何事だ??こっちは今立て込んでんだ日を改めてくれねぇか」


??「そんなこと言ってる場合じゃないわ!!
急いで!!」


近藤「このお嬢さん、何かワケありか?」


すると沖田がその女を凝視する。
灰白色の長い髪を高めに結っている気の強そうな女。


沖田「!!!!
てめぇ……あん時の……。」


沖田は女の存在を確認するとズカズカと近づき
隊士から離して壁へと追いやる。

土方「総悟!!!」


沖田「黙っててくだせぇ土方さん。
よォ、あん時は世話になったな女狐。1人で敵陣攻めてくるたァ、その度胸は評価してやらァ。まりんをどこにやったさっさと答えろィ」


いつになく真剣で、低いその声に普段のサボってる沖田の姿は微塵も感じられず緊張感が走る。

近藤「総悟……その人は…」


沖田「こいつは抑音と一緒につるんでた女でさァ。まりんが抑音にやられた時に俺を邪魔してきたやつでィ。」


土方「報告書に書いてあった女ってこいつの事だったのか」


麗奈「綾部麗奈よ………
そんなことより大事な話があるわ」


沖田は麗奈の顔を睨みつける。


沖田「そんなこと???てめぇ……まりんを誘拐しといて……自分の立場分かってんのか」



麗奈はその鋭く、目だけで人を殺せそうな沖田に恐怖を感じる。


麗奈「わかってるわ…だから来たのよ……
私はどうなってもいい、だからせめて話だけでも聞いてちょうだい…お願いします…」


そういうと麗奈はひざまつき、頭を下げる。
その有り得ない姿に周りは驚きを隠せなかった。


沖田「おい、何のつもりでィ」


麗奈「抑音様と七瀬まりんを助けてください……お願いします……」


その声はとても震えていた。


土方「どういう事だ」


麗奈「確かに私は抑音様と一緒に七瀬まりんを誘拐し、清祓瀬を手に入れるという計画に協力していました……。しかし私も薄々気づいていたのです、あれは私の知ってる抑音様では無いと……」



近藤「総悟、話だけでも聞いてやらねぇか?
まりんちゃんを助ける手がかりが見つかるかもしれない」


近藤が沖田にそう言うと、沖田は麗奈から少し離れる。


沖田「言っとくがまだてめぇを信用したわけじゃねぇ勘違いすんな。まりんを救うために利用するだけでさァ」


麗奈な抵抗することなく手錠をかけられ
屯所の中へと入っていった。


部屋に案内され本題へとはいる。


麗奈「私が抑音様と出会ったのは今から3年前です。幼くして両親を無くした私はしばらくは両親が残したお金で生きてはこれましたがそれも尽きそうになったある日のことです」



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「人の恋心を弄びやがって!!!!金が目当てだったのか!!この女狐!!!!」


麗奈は両親のお金が尽きそうな頃、生きていくために男を騙して金品を盗んでいたのだ。


麗奈「騙される方が悪いのよ!!!」


バチン!!!!


男が麗奈を強く平手打ちをする。
麗奈は必死の思いで盗んだ金品を持ち去る。
寒い冬の中麗奈は無我夢中で走る。
そしてとある屋敷の敷地へと入った。

物置小屋の近くに隠れ座り込む。


麗奈「男なんて嫌いよ……」


抑音「そこにいるのは誰ですか?」


麗奈「!!!!」


麗奈の目の前に現れたのは抑音だった。


抑音「見ない顔ですね……それにこんな寒いのになぜ裸足なんですか!!」

そういうと抑音は自分の羽織ものを脱ぎ、麗奈の足を優しく包む。

麗奈「あ、あの……」


抑音「事情は分かりませんが、何かあってここに逃げ込んだのでしょう、あなたのような若い女の人がこんな寒い中裸足で、大金を持っているのなんて不自然すぎます。」


麗奈「すみません、すぐ出ていきますから…」


麗奈はそう言って立ち上がりその場を去ろうとする。


抑音「あぁまって!今夜は大雪らしいですよ
良かったら屋敷にあがっていってください。ここの屋敷にもね、あなたくらいの女の子がいるのですよ。それを思うとあなたを見放すことなんて私にはできません。」


抑音は麗奈を屋敷の中へと案内した。
屋敷の中はとても広く、数え切れないほどの部屋があった。

少し歩くとある部屋から声が聞こえる。

抑音「あれがまりん様です。この七瀬家の長女にして清祓瀬の継承者なのです。
私も尊喃弔家として潔祓瀬を継承するために日々鍛錬しているのです。」


麗奈「七瀬家ってあの…!?!」


抑音「江戸では知らぬ人などいないと噂のあの七瀬家ですよここは」


七瀬家とは江戸では知らない人などいないほどの大きな財閥なのだ。


麗奈「あのやっぱり私……帰ります……」


すると抑音は静かに笑い出す


抑音「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったのです。私とまりん様はね、困ってる人は誰であろうと助ける。そんな馬鹿げた目標を持って日々鍛錬しているのです。
だから私はあなたを見放すことなどできません。」


抑音の真っ直ぐなその瞳には嘘偽りはなかった。
本当に助けたかったという気持ちがひしひしと伝わってくる。
麗奈は人からここまで親切にされた事がなかったため涙が溢れた。


麗奈「ごめんなさい……こんなに親切にしてくれる人私、初めてで……」


抑音「私はあなたの過去はしりませんが悪行だけは決してしては行けません。あなたには無限の未来が広がっているのですから。」


それからというもの、麗奈は七瀬家にたびたびお邪魔し、抑音と会っていた。
抑音の広い心や優しい態度に次第に惹かれていき恋心を抱く。
そして1年が経過した時に事件は起きた。

七瀬家が何者かによって襲撃されたと江戸中大騒ぎになったのだ。
麗奈が駆けつけた時にはもうあの屋敷は焼け落ちており、更地となっていた。


麗奈「そんッ……な……。」


膝から崩れ落ちその場にしゃがみこんでしまう。


麗奈「抑音様……。」



抑音「麗奈」



麗奈「!!!」


すると後ろから聞きなれた声がした。
振り返るとそこには抑音が立っていたのだ。

抑音「私に着いてきてくれますか。麗奈。」


麗奈「はい、どこまでも…」


麗奈は差し伸べられた手を取り、抑音と一緒に江戸を離れた。

そして抑音と生活を始めだしたが、時が経過するにつれてその異変に気づく。
以前はまりんのことを楽しそうに話したり、鍛錬したりしていたがそれが一切無くなったのだ。
その代わりに


抑音「まりん "さん"が持っている清祓瀬を私が手に入れる必要があります。麗奈、協力してくれますか?」


と、聞かれた。まりんとは関わりこそなかった麗奈。抑音が楽しそうにまりんのことを話していたあの時の抑音とは雰囲気がまるっきり違っていた。
でも、自分を助けてくれたあの時みたいに
つぎは自分が抑音を助けなくてはという強い思いでその作戦に協力していた。



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麗奈「抑音様にあの日あった出来事を聞いても何も答えてくれないのです。
私は抑音様の助けになりたい一心でここまで仕えてきました。でも最近になって思うんです。あれは抑音様ではないと……」



一通り話を聞いた沖田達。
麗奈の過去、そして今までの抑音の経緯。
全てが繋がった気がした。


沖田「まりんが言っていた、抑音は誰かに乗っ取られてるって。つまりてめぇはそいつに上手く利用されたってことでさァ」


麗奈「やはりそうなのですね……、あの装置を見てから感じてはいました…」


沖田「装置…?なんでィそれ。」


麗奈「人を操る装置です…抑音様はそれを使い
七瀬家の家来、そして真選組の隊士を洗脳したのです。七瀬まりんを誘拐したのは抑音様に洗脳された真選組隊士です」


麗奈の言葉に周りが驚く。


土方「真選組の隊士だと!?!」


麗奈「はい……抑音様…いえ、あいつは卑怯な手を使って七瀬まりんを誘拐し、清祓瀬と七瀬まりんの意識を融合させ最強の力を手に入れることが目的です。」


沖田「融合……?」


麗奈「清祓瀬と潔祓瀬は継承者、つまり抑音様と七瀬まりんの意思でないと扱うことが出来ないのです。奴はそれを利用して2人の意識を刀に融合させることによって力を手に入れる気なのです…!
今、抑音様の体ではありますが意識は奴のものだとしたら刀を扱えているのは不自然です…
抑音様の意識は既に潔祓瀬と融合しているとしたら……辻褄が合います……!!
そうなると七瀬まりんが危険です!!清祓瀬と七瀬まりんの意識が融合してしまえば七瀬まりんの体は言ってしまえば亡骸となってしまいます!!!そうなってしまえば奴は七瀬まりんをどうするか……!!」


沖田「近藤さん!!!!!」


近藤「分かってる!!!すぐに向かうぞ!!」


麗奈「私も連れていってください!!!今度こそ抑音様を助けたいのです!!!」


沖田「好きにしろィ」


そして沖田達はまりんと抑音がいる場所へと向かう。
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