とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語
お母さん【どうして助けてくれなかったの??】
『うっ……』
お父さん【まりんがもっと早く助けに来ていれば俺たちは死なずに済んだんだ】
『っ……うぅ……』
抑音【全てまりん様のせいです。まりん様が犠牲になればよかったのに】
『ごめ……ん……なさい……』
【【【お前が死ねばよかったんだ】】】
『いやぁ!!!!!!!』
目が覚めるともう既に朝になっていた。
冷汗をかき、頬には汗と涙がつたう。まりんはゆっくりと体を起こし、先程見た悪夢を思い出す。
『私のせいだ……ごめんなさい……ごめんなさい……』
まりんの精神状態は崩壊寸前であった。
自分の死の恐怖や、抑音奪還への不安、そんな色んな感情がまりんを襲っていた。
??「七瀬隊長、朝早くにすみません。少し開けてもらえませんか??」
『!!だれ……?』
襖の方から声が聞こえる。人影と声から沖田や土方などではないとすぐ分かった。
まりんは襖を少し開ける
『あ、あの何か用ですか』
「はい。とても重大なことです」
今度は全身が見えるくらいに襖を開ける。
真選組の隊服を来ており、隊士なのだとすぐ分かった。が、様子がおかしい。
『あの、ひとつお聞きしたいのですが、私の部屋があるこの場所は男性立ち入り禁止なんですけど……、用事があるなら近藤さんや土方さんを通してからって決まり事なんですけど…………』
「ええ、知ってますよ。でもすぐ済みますので」
そういうとまりんの頭に強い衝撃がはしった。
鈍器のようなもので殴られたのだ。
急の出来事で状況判断ができず、そのまま倒れ意識を失った。
「任務完了です。計画通り彼女と清祓瀬をそちらの基地へ運びます。」
抑音「ご苦労様です。そのまま連れてきなさい。」
まりんは俵担ぎされ、誰にも気づかれず連れていかれてしまった。
───5時間後 ────
土方「おい、まりんはどこにいる?
いつもならとっくに来てるだろ」
沖田「……まだ寝てるんじゃねぇですかィ?」
いつもなら当たり前のように朝礼にいるまりんが、いつまで経っても現れず不思議に思う土方。
土方「決戦前に寝坊たァ、肝が据わってるじゃねぇか。
しかし、総悟。お前目の下のクマが酷いがちゃんと寝たのか?」
昨日まりんにフラれた沖田は、ずっと寝付けずにまりんのことを考えていたのだ。
沖田「大丈夫でィ。俺も肝が据わってるんで仕事中に寝まさァ」
土方「おい、堂々とサボり宣言してんじゃねぇ」
山崎「ふ、ふふ、副長ォォ!!!!沖田隊長!!大変です!!!!」
山崎が焦りながらこちらへと走ってくる。
土方「どうした山崎。」
山崎「いないんです!!!!」
沖田「誰が?」
山崎「まりんちゃんが!!!いないんです!!!!部屋も荒らされた状態で、!!」
土方 沖田「「!?!?」」
山崎「とりあえず!まりんちゃんの部屋に来てください!!!!」
土方と沖田は山崎に言われた通りまりんの部屋へと急ぎで向かう。
まりんの部屋へ着くと、そこにはまりんの姿はなかった。部屋は荒らされ、所々に血痕がある。
沖田「なんでィ……これ……」
土方「チッ、やられたか…」
山崎「この近くを通った時に部屋の襖が全開だったので、まりんちゃんはそんな事しないので不思議に思い見に行ったら既にもう……」
土方「まりんが誘拐された」
まりんの血痕を見て沖田は立ちつくす。
沖田「なんで……俺はいつもまりんを守ってあげれないんでィ!!!」
土方「総悟。気持ちはわかるがまずはお前が落ち着け」
沖田「こんな状況になって落ち着いてられるわけねぇでさァ!!!惚れた女が今、誘拐されて傷つけられてるかもしれねぇこの状況で……」
土方「こんな状況だからだ。お前がその状態でまりんを助けに行っても絶対に助けられない。
一人で行くつもりだろ。許可できねぇな。」
沖田「俺は一人でもまりんを助けられまさァ…
助けなきゃいけないんでィ……!!」
土方は一服すると沖田の胸ぐらを掴む。
土方「まりんには、俺を頼れって言ってたよなァ?だったらお前は俺 "ら" を頼れ。
俺が言えることじゃねぇが、案外1人じゃ何も出来ないんだぜ。無茶苦茶する馬鹿たちが居ねぇと調子でねぇんだ。」
沖田は自分の胸ぐらを掴んでいる土方の腕をどかす。
沖田「土方のくせに、生意気なんでィ……」
土方「そうかよクソガキ。さっさと支度しろ、助けに行くぞ」
沖田「言われなくても分かってまさァ」
沖田はもう一度まりんの部屋を見る。
すると、紙切れのようなものが落ちているのに気づく。
それを拾い見てみると、例の作戦が書いてあった。
沖田「まりんのやつ……絶てぇ許さねぇ
当分どら焼きはお預けでさァ」
その作戦が書いてある紙をぐちゃぐちゃにしゴミ箱に捨てると、沖田はまりんの部屋を後にした。
沖田「今度こそ助けてみせまさァ」
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??「ハァハァ……真選組……ここね……」