とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語


現在まりんは万事屋に来ていた。


銀時「突然来たかと思えば、ずっと隅っこでブツブツと、えなに??呪いでもかけてるの??」


神楽「私が話しかけてもずっとあの調子ネ」


新八「まりんちゃん何かあったんですかね??」



3人は様子のおかしいまりんを見つめる
まりんは隅っこで体育座りをしながらずっとブツブツ何か言っている。

銀時「七瀬ちゃーん??何も言ってくれなきゃ、銀さんたちエスパーじゃないから分からないんだけどぉ???」


銀時がまりんに近づいて話しかける
すると、次はちゃんと聞こえる声で


『沖田さん、最近おかしくなっちゃったんです』



やっと喋りだしたかと思えばそんなことで、3人は口を開けてポカーンとする。


神楽「おかしくなってるのはまりんの方アル
今更気づいたアルか、アイツは元々おかしいネ」


新八「そうだよ、神楽ちゃんの言う通りだよ
沖田さんは一歩間違えたら殺人鬼になってた、取り柄と言えば顔だけのゴミクズ野郎だよ」


銀時「新八、なにか恨みでもあるの??」


『違うの、沖田さんが正常な人だとは私も思ってない、だけど最近もっとおかしいの』


銀時「何がおかしいんだよ??」



『え、えっと、最近、私にやたらと触れてこようとしたり、とか……』


3人「「「え?????」」」


それは遡ること2週間前


まりんはいつものように起床し、身支度を整え朝礼へと行く。
そこには、近藤や土方、隊士、そして沖田がいた。

『あれ、沖田さんがいる。珍しい
いつもはまだ寝てるはずなのに、今日はお空から槍でも降ってくるかな』

沖田「心外でィ。俺だってたまには早起きしまさァ」

土方「それが毎日続けばいいがな」


近藤「よし、全員集まったな!!整列しろ!」


隊士達は自分の隊ごとに綺麗に整列をする。
各隊の隊長は1番前の方へ並ぶ。特殊部隊であるまりんの隊には、隊士が一人もいないので近藤の隣へとまりんは並ぶ。


沖田「おいまりん、何してんでィ
まりんは1番隊の副隊長なんだから、俺の隣に来い」


『えっ??1番隊の副隊長になってからも
朝礼はいつもここだったのに、急になんで??』


沖田「いいから」


手招きをして急かすように、沖田はまりんを呼ぶ。まりんは理解が追いつかないまま沖田の隣へと行く。
すると沖田はべったりとまりんにくっ付く

『ちょっと沖田さん、暑い、もっとそっちに行って』

沖田「嫌でィ」

『なんで!!そっちスペースあるじゃん!離れてぇ〜!』

沖田を離そうとするがビクともしない。

近藤「そこ!!静かに!」

『すみません…って、なんで私が怒られるの!』

沖田「ほら、騒いでるのはまりんだけですぜ???静かにしなせぇ」

『元はと言えば沖田さんが悪いのにぃ…!』


その後はそのまま朝礼が始まり、いつものように進んでいく。
そして朝礼も終わり、各自の職務に就く。


沖田「今日は何するんでィ」

『今日は沖田さんが暴れまくって壊した
建物とか物とかの始末書を書くの!毎回いってるけど、ちょっとは加減してよね!』

沖田「何事にも全力でやれって教わったんでさァ」


『綺麗事並べない!ほら書くよ!』


まりん達は机へと向かい始末書を書いていく。
その間もグダグダと言いながらも、少しずつ書いていく沖田。


数時間後───

『よし!これが最後の1枚!ほら、沖田さん早くやって、って寝てるし……』

隣に目をやるといつものおかしなアイマスクを付けて寝ている沖田がいた。
そのすぐそこには、沖田が書いたであろう始末書が重ねてあった。

『まぁ、沖田さんにしては頑張った方だね
しょーがないから最後の1枚は優しい私がやってあげる』


まりんはそう言うと、最後の1枚を丁寧に書いていく。


『よし!終わった!沖田さんの書いたやつとまとめて土方さんのところ行かなくちゃ』

沖田の書いた始末書を取ろうと少し移動する。すると、反対側を向いてた沖田の顔が見えた。アイマスクをしていたので、顔までは見えないがぐっすり眠っていることだけは分かった。


『ほんとに寝ちゃってるし……まぁいいや。
沖田さん置いて提出に行ってこよっと』


まりんは、寝ている沖田をそのままにして部屋を後にした。
そして土方の部屋へと向かう。


『土方さん、七瀬です』


土方「入れ」


部屋の前で一言声をかけてから入る。


『始末書がかけたので提出しに来ました』


土方「肝心なやつが居ないんだが」


『気持ちよさそうにお昼寝中です 』


土方「たくっ………」


土方は大きな溜息をつき、まりんから始末書を受け取り、ペラペラと1枚ずつ確認していく。

『でも、ほとんど沖田さんがやったんですよ。』


土方「それが当たり前なんだがな
たくっ、サボり癖があるのは承知の上だが、まりんが副隊長になってからさらに磨きがかかってやがる………
まりんもわかってると思うが、あいつをあまり甘やかすなよ」


『分かってますよ!!だからこの後は叩き起して一緒に見回りに行く予定です!』

ガッツポーズをして、土方に意気込む。
土方はタバコに火をつけて一服する。

土方「まりんが副隊長になってからもう2ヶ月くらい経つのか」

『早いですね。ほんとに沖田さんの無茶ぶりには驚きました。そのおかげで私は寝不足が続いてますけど』

土方「特殊部隊の仕事と兼任だもんな
いつもほんとに助かってる」

『ずっと疑問だったんですけど、なんで沖田さんは私なんかを副隊長にしたんですかね??
他にも隊士は沢山いるだろうに』


土方「まだ気づいてないのか??あいつはまりんのこt(((」

沖田「死ね土方ァァァ!!!!!!」


すると大きな音とともに、土方の部屋にバズーカが飛んでくる。
部屋はたちまち煙に覆われる。

『土方さーん!?!??大丈夫ですか!?』


土方「あぁ…なんとか…」


沖田「チッ、殺りそこねた」


土方「殺りそこねたじゃねぇよ総悟!!
危うく直撃するところだったじゃねぇか!!」


沖田「そのまま直撃して死ね土方」


いつもの調子で土方に嫌がらせをする沖田。


『土方さん、そういえばさっきなんて言いかけたんですか??』


土方「あぁ、それはだな」


沖田「まりん、提出も済んだ事だし飯食いに行きやしょう」


そう言うと、沖田はまりんの腕を掴み部屋を出ていく。


『えっ、ちょ、沖田さん!まだ話の途中!!』


沖田「ニコチンマヨラーの話なんて聞いたら脳内マヨネーズだらけになりまさァ」


『それは嫌すぎる……沖田さん助けてくれてありがとう……』


沖田「お易い御用でィ」

2人はそのまま見回りに行くついでにご飯を食べに行った。


─────────────────

一方その頃土方は


土方「まだ話の途中だっつぅのに……
しかもあいつ、まだまりんにあの事話していないのか、ほんと、何考えてんだか分からないやつだ」


近藤「まぁ、総悟も年頃だ。色々考えてるんだろう」


土方「近藤さん、いつからそこに」


近藤「あぁ、さっき総悟がバズーカ撃ったあとくらいからだ。
にしても、あいつ分かりやすいなぁ。絶対まりんちゃんのこと好きだろ。オレがお妙さんに向ける目と同じ目をしている」


土方「近藤さん、それはない
総悟がまりんに気があるのは確かだが、近藤さんとは同じ目はしてない」


近藤「なに!?!?!俺と総悟の何が違うっていうんだ!!!」


土方「全部だよ」



────────────────


ファミレスにて


『私、オムライス!オムライスください!』


沖田「俺は唐揚げ定食で」


「かしこまりました!少々お待ちください。」


店員さんは丁寧にお辞儀をすると厨房へ入って行った。


沖田「そーいや、黒子集団の身元は分かったのかィ????」


『ううん、まだだよ。今ザキに色々調べてもらってる。』


沖田「何か分かったら俺にも伝えなせぇ」


『うん!!そのつもり!』


そんな話をしていると、2人のテーブルにはオムライスと唐揚げ定食が運ばれてくる。
まりんは既に少しヨダレが垂れていた。

『美味しそう…!!いただきまーす!!!』


沖田「ゆっくり食べなせぇ」


バクバクと口にオムライスを運んでいく。


沖田「ほんと、まりんってよく食べるねィ」


『だって美味しいんだもん!』


沖田「そんなに美味しいんなら、俺にも1口くだせぇ」


『やだもん、沖田さんには唐揚げがあるじゃん
!!これは私のオムライスだもん!』


沖田「じゃあ俺の唐揚げと交換でさァ
それなら文句ねぇだろ??」


沖田はまりんのお皿に自分の唐揚げを置く。
まりんはその唐揚げをじっと見つめ、少し考える。


『まぁ、そこまで言うんなら1口くらいいいけど…??はい』

オムライスを沖田の方へ寄せる


沖田「唐揚げ一個とひと口じゃ、割に合わねぇでさァ。だから、そのオムライスまりんがあーんしてくだせぇ」

いつもの調子でそんなことを言われたまりんは戸惑いが隠せなかった。

『え、え??つまり私が沖田さんにオムライスを食べさせてあげるってこと??』


沖田「そうでィ、それとも唐揚げは要らないのかィ??」


『うっ……唐揚げはほしい…』


沖田「じゃあ、あーんしなせぇ」


早く、っと口を開けながら待っている
まりんは困惑しながらもスプーンでオムライスを掬って、沖田の口へと運ぶ。
口の中に少しスプーンを入れた所でパクッと食べる。


『これでいいの??』


沖田「あぁ、交換成立でさァ」


『何だかよくわかんないけどオムライスも食べれて唐揚げも食べれてラッキー!!』

そして再び、オムライスを食べ始める。

沖田「まりんそれ」


『ん???』


すると沖田はまりんの持っているスプーンを指さす。

沖田「関節キスでさァ」


『………!?』

まりんは顔をみるみる真っ赤にして口からスプーンを外す。

『や、、えっとこれは違くて、不可抗力というかなんというか……』


もじもじとしながら下を向く。しばらく沈黙が続いた後、急に立ち上がり


『わ、私!!用事を思い出したから!!先に帰る!!』


と、お金を置いて走りながらお店を出ていった。沖田はお金と、まだ少し余ってるオムライスを見る。


沖田「あり、ちとやりすぎたか」


残っている自分の唐揚げ定食と、まりんが残したオムライスを全て食べ終え
お会計を済まし、沖田は屯所へと帰った。

そして、その次の日も


沖田「あ、まりん、頭に葉っぱが付いてるぜ」


『!!!
あ、ありがと』


そのまた次の日も


沖田「口にクリーム付いてまさァ」


『え、ほんt……!!?!』


沖田「これで大丈夫でさァ」


沖田はまりんの口元についているクリームを自分の指で拭き取るなど、この2週間、沖田は何かとまりんに触れようとしたり、距離が近かったりしていた。

そして、今に至る



銀時「これは完全にあれだな」


新八「あの沖田さんが、まさかあれとは」


神楽「絶対あれアル!!!マジムカつくネ!!!!!!」



3人口を揃えて、"あれ"と言う。


『"あれ"って何???何か分かったの??沖田さんがおかしな理由!!!!』


銀時「あぁ、分かったがこれは沖田くんの為にも銀さんの口からは言えねぇな。まぁいつか、本人の口から聞けるさ」


『なんで教えてくれないの!!とても困ってるのにぃ!!』


銀時「大丈夫大丈夫、七瀬ちゃんは今まで通りにしてればいーの。
ちなみになんだけど、七瀬ちゃんは沖田くんのことどう思ってるの?」


『沖田さんのこと???
んー、仕事はいつもサボるし、いじわるしてくるし、土方さんのこと常に殺そうとしてるし、あでも、話してて楽しい』


銀時「ほぼ愚痴だな
好きとか思う??」


銀時がまりんにずっと沖田について質問攻めをするので、頭の上にはハテナでいっぱいだった。

『なんでそんなこと聞くの???』


銀時「いーからいーから、どうなの??」


『んーー、、私、好きとかそういうの分からない
あでも、どら焼きが好きって気持ちに近いかも!!!』

銀時「こりゃ、沖田くん苦労しそうだな」


『さっきからほんとどういうこと????』


すると、まりんのケータイから音が鳴る
表示を確認するとそれは、山崎からであった。

『ザキからだ、もしもし??どうしたの??』


山崎(大変だよまりんちゃん!!!今、あの謎の黒子集団の正体が分かったんだけど!!─────!!!)


『!!!!!!
今すぐ行く!!!ごめん、銀さんたち!相談乗ってくれてありがとう!まだよくわかんないけど普段通り接してみる!!じゃあね!』



そしてまりんは万事屋を出ていった。


新八「何か嫌な予感がしますね」


神楽「まりん顔、すごく焦ってたアル
心配ヨ」


銀時「まぁ、今俺たちは見守ることしか出来ねぇからな、また何かあれば報告に来るだろ
俺たちは俺たちに出来ることをしよーや」


新八「そうですね!」


神楽「まりんの助けになるネ!!」
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