とある武士道女の事情 〜『幕府の猫』と呼ばれた少女の物語


江戸から少し離れた人気のない廃墟
そこには今日も2つの人影があった。


コンコン


抑音「どなたですか」


麗奈「抑音様、私です。綾部です」


抑音「入りなさい」



ギィィっと扉を開けると、麗奈は部屋へと入っていく。
散らかった床。物を踏まないように抑音の方へ進んでいく。


麗奈「どうして、あの場で清祓瀬を奪わなかったのですか??あの状態でしたら、奪えたはずなのに」


抑音「私はね、清祓瀬とまりんさんの状態を確認しただけなのでね」


ある装置をいじりながら、麗奈の質問に答える。


抑音「清祓瀬だけを奪って目的が達成するのなら、問題はないのですが、そうもいかなそうだったのでね」


麗奈「…と、言いますと?」


抑音「清祓瀬がまりんさんの家系で代々受け継がれるという話はしましたよね?」


麗奈「はい」


抑音「まりんさんの両親が死んでる今、清祓瀬を扱える人間はまりんさんしかいない。まりんさんが子供を産まない限り後継者は現れないということ
そして、なにより重要なことは、まりんさんが今まで清祓瀬を所持してきた人間の中で一番、清祓瀬との相性がいいのです。」


麗奈は少し理解ができてなく、困っていた。


抑音「つまりね、清祓瀬はまりんさんをとても気に入っている。きっと金輪際、清祓瀬を持てる者は現れないでしょう。まりんさんが最後の後継者なのですよ」


抑音はずっとやっていた作業をやめ、麗奈の方へ向く。その手には、銃のような物を持っていた。


麗奈「ならば、まりん様から清祓瀬を奪えないのでは…??」


抑音「今の説明なら、そうなりますね
でもね、一つだけ清祓瀬を奪える方法があるのだよ」


すると、誰かが部屋へと入ってくる
どこかで見たことあるような、黒い隊服を纏った男だった。

麗奈「!!何者だ!!」


抑音「麗奈、落ち着きなさい。この者は私たちには危害を加えませんよ」


麗奈「しかし抑音様!こいつは!」


麗奈と抑音の目の前に現れた男は、まりんと沖田と同じ、真選組の隊服を着ていた。


抑音「まぁ、見てなさい」


抑音は、隊士に近づく。
しかし攻撃するどころか、抑音の前で跪いた


麗奈「これは…」


抑音「彼は私の思うがままなのですよ。このおかげね」

抑音は手に持っている銃を見せる
銃口は少し大きく、メガホンのようになっている。

抑音「これは、融脳銃と言ってね。これから出る光線を浴びることで、私に逆らえなくなるのだよ。そして、私の操り人形と化する
まだ、試作段階だったのでね。試しに彼に撃った」


麗奈「つまり、その方は洗脳済みということですか?」

抑音「えぇ、少し心配でしたが上手く洗脳できてるみたいですね。これならまりんさんにも効く」


先程まで真顔だった抑音の顔から笑みが零れていた。しかしそれは誰が見ても、恐怖を感じてしまうような不気味な笑みだった。

抑音「彼には私たちの役に立ってもらいます。さぁ、行きなさい」


隊士「はい。抑音様の思うがままに」


そう言うと、隊士はどこかへ行ってしまう


麗奈「彼は一体どこへ?」


抑音「そのうち分かりますよ」


麗奈「………」


抑音「まりんさんを洗脳して清祓瀬とまりんさんの意識を融合してしまえば、私は最強の力を手に入れることが出来る。必ず手にしてみせる」


廃墟からは不気味な笑い声が響いていた。
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