see you……
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『やっと出来ました』
優しい笑顔。
『これからも、ひなたとゆうたと仲良くして下さい』
優しすぎる願い。
「……そっか、知ってたんだ」
自分の最期が近いことを…。
「スモモは今、何処にいるの?」
屋敷の奥の部屋にスモモはいた。結界が何重にも張られていたが、スモモのまじないのお陰で泉は入ることができた。
スモモは眠っているようで、今にも目を開けそうに見える。
泉はスモモの頬に手をあてる。
手、腕以外に触れるのは初めてだった。
冷たかった。
笑った顔がゆうたに似ていた。
拗ねた顔がひなたに似ていた。
真剣な顔があんずに似ていた。
落ち着いた雰囲気は多分祖父。
今のスモモの顔は誰の表情とも重ならない。
「こんなに綺麗な顔してたんだ」
静かに眠る、美しい少女。
『こんにちは、泉さん』
声を聞かせて。
名前を呼んで。
『また会いましょう、泉さん』
決して『さよなら』とは言わなかった。
必ず再会を願った、ちいさな少女。
だから泉も『さよなら』とは言わない。
「またね、スモモ」
「俺とアニキ、京に行きます。スモモのまじないが効いてるうちに」
「そう。アイツ、京に行きたがってたもんね」
「スモモの代わりに見てきます。多分、こっちには帰らないです」
スモモのまじないが消えれば、ひなたとゆうたは今度こそ消える。
「元気でね」
「泉さんも」
それから1年後、京から泉のもとにひなたとゆうたの友人だという者が尋ねてきた。
用件はわかっていた。
「消えたんだね」
友人は頷いた。
組紐は埋めて、小さな碑を建てたと言った。
「伝言があります」
「何?」
「また会いましょう」
『さよなら』は言わない。
「伝えて。またねって」
友人は頷いて、帰って行った。
「……いなくなっちゃった」
季節が変わる度に、ことあるごとに思い出していた。
夏の夕立。
秋風に舞う紅葉。
雪が眩しかった冬。
春を感じた桜。
変わっていく空色。
村雨の後の湿った空気。
植物の香り。
溶け込むような透き通った声。
『泉さん』
決して褪せることなく、鮮やかに覚えている。
思い出す度に涙を流した。
声をころして泣いた。
生まれ変わったら、また会いたい。
話をしたい。
だから『さよなら』は言わない。
また会うから……。