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スモモはゆうたを抱え直す。
「ゆうた、大丈夫?」
「うん。……なんでアニキは平気なの?」
「本当に不思議ねぇ」
ゆうたは眉をよせる。
「造りは同じなんでしょ?」
泉が聞く。
「見た目と力の共有だけです」
応えたのはスモモだった。
ゆうたの服を少しずらし、右肩を出した。
「利き手も、好みも、役割も違います。…式神と言えど、私たちと同じです。この子たちにも感情がある」
スモモは震えるゆうたの頭を優しく撫でる。安心させるように。
「泉さん、どうぞ」
「力が戻ったら、また襲うかもしれないよ」
「大丈夫です」
泉はゆうたの肌に牙をあてる。
ゆうたの震えが伝わってくる。痛みも感じるのだろう。
躊躇われたが、力が無ければ泉も困る。
思いきり噛んだ。
「いっ…」
血の味と共に力が湧く感覚がした。
「では泉さん、変化してみてください」
スモモはゆうたの手当てを終えてから言った。
傷はすぐに治らず、消えるのも数日かかるらしい。
ゆうたは具合が落ち着いて、寝息をたてていた。
「変化でわかるもんなの?」
「変化ができれば、それだけ力が戻ったと思って下さい」
「………本当に少しなんだ」
言われた通り、変化した。
「ちょっと、どういうこと!?」
泉がスモモを見上げて怒鳴る。
「可愛いですよ、泉さん」
「ふざけないで!」
「ふざけてないですよ」
泉は人に変化できた。
できたが、いつもより背が低かった。
丁度ゆうたとスモモの間くらいだ。
「暫くはそれで我慢してください。時間が経てばちゃんと元に戻りますから」
また会いましょう、そう言ってスモモたちは帰って行った。
自身に結界を張って。
入れ違いに嵐が現れた。
「あら可愛い」
「………」
泉は何も言わず、森の中を歩いた。
嵐も黙って歩く。
(何なの、あいつ)
「……力が強いって、そういうこと?」
触れただけで力を盗られた。
「……厄介だな」
「厄介よねぇ」
嵐が同意した。
あれから数日たったが、スモモも仔狐も姿を見せなかった。
泉の力は少しは戻ったが、変化するとまだ子どもの姿だった。
『また会いましょう』
「何で来ないの?」
らしくもなく、その言葉を信じて待っていた。
「こっちから行こうかな?」
スモモの家は有名だから知ってる。
あやかしも相談に来やすいようにと、家には結界が張られていない。
実際、術師に相談に行ったあやかしの話も聞いている。
「本当だったんだ」
家に結界は張られていない。
だけど正面から入って「力を返せ」なんて恥ずかしい真似出来るわけがない。
泉は蛇の姿になり、敷地に入った。木に登って屋敷を見るとすぐにスモモとゆうたを縁側で見つけた。
ゆうたは人の姿で、座布団の上で丸くなって寝ていた。その隣でスモモも横になっていた。
泉が近付いて人の姿になっても起きる気配がない。
「……無防備過ぎ」
呆れてしまった。
こうして見ると、本当にただの子どもだった。
身体に張られた結界が不自然なくらいに。
スモモのそばには本が開いて置いてあった。呪術に関する本だった。
「こんな複雑なの読んでるんだ」
理解はできるが、泉は人の呪術は扱えない。
得るのは知識だけ。
「力のある人間は大変だねぇ」
「んぅ」
ゆうたがコロンと寝返りをうち、仰向けになった。
「…あ!」
泉は家に来た目的を思い出した。
力を返して貰う為。
「どうしよう」
どちらかが起きるまで待つべきか、起こさずにゆうたを噛むか。
起きるのを待っていて、ひなたが現れたら面倒な気がする。
『後が面倒』
そう言ったスモモとゆうたの顔のしかめかたが似ていた気がした。