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スモモside.
*********
ズキン
「っ!」
教室で眠っていた私は痛みを感じて目を覚ました。
辺りはすっかり暗くなっていた。
「痛い」
痛みを感じたのは左手首、巻かれた包帯に血が滲んでいた。
血を認識するとズキズキと痛みが増した気がした。
……久しぶりの痛み。
包帯をとくと薄くなった傷の上に、新しい傷があった。
「……何これ」
その傷は他の傷と明らかに違っていた。
保健室。
「凛月くんに噛まれたわね」
そう言って新しい包帯を巻いてくれるのは、親友のあんず。
「凛月?」
「そう」
私はガックリと項垂れた。
「………まだ話したこともないのに」
私、スモモが夢ノ咲学院に転校したのは、あんずに逢ったのがきっかけで、ちょっとした賭けだった。
それは朔間凛月に近付く為。
転校前、家出中だった私はあんずに拾われた。
学校も違う、共通の友達もいない。
私服でフラフラしてた私にあんずの方から声をかけてきた。
『ウチにこない?』
私が彷徨いていたのは通学路で、あんずは前から私に気付いていたらしい。
隣にいたあんずの弟は吃驚してた。
だがあんずはお構い無しに私の左手をとった。
『新しい包帯を巻いてあげる』
その日は家に連絡して、あんずの家に泊まらせてもらった。
シンプルなあんずの部屋。
でもそれは、あんずがきちん片付けていて、いろんな物があった。
友達との写真もコルクボードに飾ってあった。
女友達との写真はどれも可愛くて、魅力的だった。
一方、男友達との写真は違った。
服装が和装だったり、スタイリッシュで、そして高貴な雰囲気を感じる、そんな不思議な衣裳に身を包んだ人たち。
その中に気になる人物を見つけた。
『ねぇ、この人誰?』
『そのこは、すずちゃん』
『この2人は?』
『れいかさんと、ひまりちゃん』
先ずは適当に選んだ人物の名前を聞いた。
『アドニスくん』
『晃牙くん』
あんずは丁寧に答えてくれる。
そして一番聞きたい人の名前を聞いた。
『この人は?』
『零さんの弟の凛月くん』
凛月。
数時間で私はすっかり朔間凛月に夢中になった。
あんずのふかふかベットに横になった途端、深く眠ってしまった。翌日、起きた時は昼過ぎだった。
『あ』
壁に私の服が掛けてあった。
シワだらけだった服。
そのシワが延ばされ、綺麗に仕上がっていた。
私が寝た後、あんずがやってくれたらしい。
夕方、学校から帰ってきたあんずは当たり前のように言った。
『ただいま、スモモちゃん』
『おかえり、あんず。服、ありがとう』
あんずはニッコリと微笑んだ。
私は彼女に話をせがんだ。
さりげなく、凛月のことを多めに。
それを抜きにしても、あんずの学校は面白い。
私の日常はつまらない。
毎日同じ。
同じ格好、姿勢、行動。
少しでも周りと違うことをすれば、すぐ弾かれる。
私は同じことができなかった。
結果、弾かれた。
『変わる必要なんてないよ』
あんずは言った。
私は写真を眺めた。
写真の中のあんずは周りに比べれば大人しい。
でも飾らない笑顔は素敵だった。
だから、皆、あんずが好きなんだ。
……凛月も。
(………あんずは普通科に転校予定だった)
私は賭けに出た。
あんずと連絡先を交換して、私は家に帰り、両親と話をした。
『夢ノ咲学院に転校したい』
その日はそれだけ言った。
数日後、あんずが家に来て両親を説得。
転校が決まった。