風の声
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そしてまた時が過ぎて、スモモは泉と契約せず、この世を去った。
ひなたとゆうたは京に旅立った。
暫くして、あんずに見合いの話がきた。相手は京の術師だった。
あんずはその話を承けた。
「伝えに来たのがね、その術師と契約してるあやかしだったの。可愛い鼠さんと虎さん」
あんずは笑顔で話していたが、ふと寂しそうな顔をした。
「ひなたとゆうたの事、話してくれた。2人と仲良くしてくれたの」
「そう」
「……嵐ちゃん、一緒に行かない?」
あんずは嵐を真っ直ぐ見る。
真剣な目で。
「私のものにならない?」
「断るわ」
嵐も真っ直ぐ応える。
どちらともなくクスクスと笑った。
「このやりとりも、もう終わりだね」
「そうね」
楽しかった。
当たり前なやりとり。
もう言えないと思うとなんだか淋しい。
「私、次に嵐ちゃんを見つけたら、また声をかけるよ」
「ええ、待ってるわ」
「また友になってくれる?」
「ええ、良いわよ」
「ありがとう」
笑顔で別れを告げた。
また会えると信じて。
あなたを好きになれて幸せだった。
***********
夢ノ咲学院。
2ーB教室。
嵐が窓から外を見ると、校門に他校の生徒が立っていた。中学の制服を着た少女。
「あら、校門に女の子がいるわ」
「え?」
あんずが窓に寄り、校門を見る。少女は誰かを待っているようだ。
あっ!っとあんずは声をあげて、時間を確認する。
「もうこんな時間!」
バタバタと帰り支度をする。
「知り合い?」
「妹、約束してたの。今日はもう帰るね」
「そう、またね、あんずちゃん」
「またね、嵐ちゃん」
あんずはニッコリして教室を出た。
嵐は校門にいる少女を再び見る。葵兄弟が少女に話しかけていた。
淡々とした話し方、驚いた表情、柔らかい笑みがあんずとよく似ていた。
「スモモ!」
あんずの声が響いた。
風に乗るような通った声。
あまり喋らないのが勿体ないと思う程。
その声を近くで聞けると嬉しくなる。
あんずが嵐に気づいて手を振る。
嵐も振り返した。
翌日。
あんずが慌てた様子でB組教室に入ってきた。
「嵐ちゃん、ちょっと来て!」
嵐の腕を引っ張っていく。
「ちょっと、どうしたの?」
「~~~~~」
2人は空き教室に入った。
「あんずちゃん?」
「……どうしよう~」
「どうしたの?」
「スモモがね、泉さんの話ばかりするの。目をキラキラさせて」
「あらあら」
校門には泉もいた。
いつにもなく泉が優しい表情をしていて珍しく思っていた。
まさかスモモがその泉にときめいてしまうとは。
「恋しちゃったのね」
「……元々恋してたんだけどね」
あんずの言葉に嵐は目を丸くした。
END