風の声
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それから時が過ぎ、スモモは外に出て泉に出会った。
出会い方は最悪だったが、今は親しい間柄になった。
それにはあんずも喜んだ。
「さすが私の妹!見る目があるわぁ~。あんな綺麗なあやかし、絶対逃しちゃ駄目よ!」
「お姉ちゃん、私は泉さんと契約する気はないよ」
スモモはそう言って、ひなたとゆうたを抱き寄せた。
「私には、ひなたとゆうたがいるもの。これ以上は贅沢だよ」
ひなたとゆうたも嬉しそうにスモモを抱き締める。
あんずは不服そうだ。
嵐はお茶をすすりながら2人を見ていた。
(似てるようで、似てないわねぇ)
「ひなた、ゆうた、お兄ちゃん欲しくない?」
あんずの言葉に嵐はお茶をふきそうになり、むせた。
まさか式神の方をせめるとは思ってもみなかった。
ひなたとゆうたはキョトンとする。スモモも吃驚して目を見開く。
あんずが更に畳み掛ける。
「スモモが蛇さんと契約すれば、貴方たちのお兄ちゃんになるのよ?」
「ちょっと、お姉ちゃん…」
「ゆうたはご希望みたいね」
「え?」
ゆうたを見ると尻尾が揺れていた。気づいたゆうたは慌てて尻尾をおさえた。
スモモは首を傾げる。
「ゆうた、泉さんのこと本当に好きよねぇ?」
ゆうたも首を傾げる。
「スモモだって泉さんのこと怖くないでしょ?」
「うん」
「だからだよ。御焼きくれるし」
ゆうたは満面の笑みで言った。
(餌付けされてる!?)<あんず>
(悪い虫がついた!)<ひなた>
「泉ちゃんったら、噛み付いたこと、悪く思ってるのかしら?」
「優しいですね」
嵐とスモモが言った。
「どうしてスモモちゃんと泉ちゃんを契約させたいの?」
嵐の問いにあんずは口をキュッと結んだ。
「スモモ、欲がないの」
あんずは静かに言った。
「優しい、いいこに育った。ひなたもゆうたも、ちょっとやんちゃだけどね」
「そうね、優しすぎるくらい」
嵐が同意するとあんずは嬉しそうに微笑む。
「そう育てた。慈悲深くで、臆病で、自ら座敷牢に入るように」
静かに、歌うようにあんずは言う。くるりと回って嵐に背を向けた。
「だけどね、嵐ちゃんを見つけた時、スモモに、外の世界を見せてあげたいって思ったの」
家族と話し合って、スモモを外に出すと決めた。
自身に結界を張らせることを条件に。
しかし、スモモは外に出ることを拒んだ。
だから、あんずは嵐に声をかけた時、契約を断られてもスモモに嵐を紹介しようと思った。
スモモは嵐を通じて外に興味を持ち、修行に励んだ。
泉と逢ったのは外に出始めて、まだ数日しか経っていなかった。
「スモモ、蛇さんの話ばかりするの。目を輝かせて」
あんずはクスクス笑う。
「スモモと契約するなら、ひなたとゆうたとの相性も大事だけど、蛇さんは大丈夫みたいだし。後ね、嵐ちゃん…」
あんずは嵐を見る。
目を輝かせて、嬉しそうに。
「スモモは気付いてないけど、あのこ、私にそっくりなの。蛇さんに恋してる」
あんずが嵐に恋したように。