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泉は人の言う『妖』だった。
人より長い時を過ごしていた。
人にも化けられたから、時々町にも行った。
妖仲間がいたから退屈はしなかった。
ある日、こんな話を聞いた。
「術師の家に凄い子がいるんだって」
「アタシも聞いたわ。産まれた時から力が強いのよねぇ」
「そうなんだけどね、ずっと結界で護られてるらしいんだ」
「力が強いから狙われやすいんでしょ?本人はまだ小さい子どもだもの」
仲間たちの話を泉はぼんやりと聞いていた。
泉たちは正体がばれても、恐れられたり、退治されたりしない、わりと平和な所に住んでいた。
「泉ちゃん、気にならない?」
「別に」
力が強くても此所では意味を持たない。
上手く調整して、そのうち家業を継ぐなりして泉より短い生を終える。
余程のことがない限り、自分は関わらない。
そう思っていた。
泉たちが住んでる森にはよく子供たちの笑い声が響く。
妖の中には子どもに化けて一緒に遊ぶものもいる。
その日はひとりだった。
ひとりの子どもの笑い声が響いていた。
森の奥、普段子供たちも近寄らない拓けた場所、そこに少女はいた。2匹の仔狐とじゃれあっていた。
(あの狐、式神だ。それに…)
泉はすぐに気付いた。
広場は膜のようなもので覆われていた。
(結界が張られてる。じゃあ、あのこが術師)
無邪気にはしゃぐ少女。
何処にでもいる普通の子どもに見える。
泉は結界に触れ、力を込める。
パリン
結界は呆気なく解けた。
「!」
「誰だ!?」
仔狐が叫んだ。
瞬間、ポンッと音と共に人に変化した。
少女より少し幼い少年。
耳と尻尾はそのまま、同じ顔、同じ髪色、色違いの髪飾りと服装。
少年2人は少女を守るように立つ。
「何者だ?」
青い服の少年が言う。
「ただの蛇だよ」
泉はゆっくり近付く。
妖艶な笑みを浮かべて。
「それ以上近付くな!」
白い服の少年が強力な狐火を放った。
「ふぅん」
泉は片手で狐火をバシッと祓った。そして少年2人を見る。
「!」
「っあ」
少年2人は動けなくなった。
泉はその横を通り過ぎ、少女に近寄った。
「スモモに近付くな!」
青い服の少年が叫ぶ。
「ひなた!ゆうた!」
スモモと呼ばれた少女が、初めて声を発した。
穢れを知らない、驚く程、透き通った声。
式神の少年2人にかけよろうとするスモモの手首を泉は掴んだ。
「!」
スモモは泉の手を振り払おうとしたが、びくともしない。
「本当に子どもなんだぁ」
やっと10歳になったくらいの容姿。
「離して!」
泉の手を叩こうとした。
「スモモ、駄目!」
「お兄さん、離れて!」
ひなた、ゆうたと呼ばれた式神が叫んだ。
ペチン
スモモが泉の手を叩いた。
子どもに叩かれたって、痛くも痒くもない。
なのに………
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