9.「夢の中」と「夕立切」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
水季side
「?」
未だ瞼が上がらない##NAME1##は、その分敏感になった聴覚に何かを感じた。
(誰か呼んだ?)
『水季』
「!」
確かに聞こえた。
自分を呼ぶ声。
とても優しくて、愛しい。
この声は
「翠!」
水季が声を発すると、魔法が解けたかように、自然に瞼が上がった。
「!?」
水季は暗闇の中に立っていた。
「此処は」
見回しても黒一色、そう見えた。
遠くで灯りが見えた。
しかしそれは灯りではなく、
「・・・銀髪」
長い銀髪の人の後ろ姿だった。
水季はそっと近づく。
「あの」
呼ぶと相手は振り向く。
「!!」
水季は驚いた。
その人物は水季にそっくりだった。
水季似の少女は声を発することもなく、ただ涙を流していた。
(ああ)
その時、初めて気づいた。
最後に涙を流したのはいつだろう。
中学生だったあの時、もう顔も覚えていない上級生に髪を切られた時、涙は出なかった。
変わりに雨が強く降った。
目の前にいる少女はあの時涙を流せなかった自分だ。
切り離されてしまったもの。
「おいで」
そう言うと、少女は駆け寄ってきた。
水季は少女を抱き締めた。
少女は透けて消えた。
同時に水季の目から涙が流れた。