9.「夢の中」と「夕立切」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
水季の母side
職場復帰する時、心配だったのは水季のことだけだった。
水季の祖母の銀髪。
この辺りでは知らない人はいない。
初めて挨拶に行った時、思わず見惚れた見事な銀髪。
綺麗な着物。
姿勢も所作も美しいかった。
自分はこの家に相応しいだろうかと考えてしまった。
それでも恋人を愛していた。
だから結婚が本気なのも、仕事を続けたいことも、隠さず、濁さず、正直に伝えた。
ひとつも否定されなかったのには驚いた。
「それはあなたの大切なもの。手放しては駄目」
実際、言われると思っていた『名家、長男の嫁』像を言ってきたのは親戚たちだった。
それでも自分の考えは変わらなかった。
大切なのは夫と義母の言葉だった。
水季が産まれた時、生まれたばかりだと言うのに、義母にそっくりだと思った。
そして知った。
この家で銀髪の者の存在が何を意味するのか。
「全て水季が自分で決めるのよ。もう、時代が違うのだから」
義母には自由がなかった。
水季には自由を。
周りの子どもたちと同じように。
楽しく、笑顔で。
そう思っていた。
なのに水季は悲しんだ。
銀髪というだけで。
学生時代の同級生に再会したのは偶然だった。
近くの商店街、その中にある八百屋。
声をかけられ、顔を見た瞬間、彼女との記憶が甦った。
明るく、頼もしい人だった。
何度も彼女に助けられた。
「ウチの翠と会わせてみよう!」
トントン拍子に話は進んだ。
そして当日。
翠くんは幼いながらも驚く程綺麗な顔をしていた。
その瞳が水季をじっと見ていた。
「髪、キラキラしてる」
その声を、言葉を聞いて、ああ、この子なら大丈夫だ。
そう確信した。