1.「校門」と「出逢い」
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水季があんずを連れて来たのは学院近くの喫茶店だった。
扉前のボードには
『スイーツフェア開催中』
と書かれていた。
入ると甘い香りが充満していた。
(ゆうたくんとか、苦手そう)
あんずはそんなことを思った。
店員に案内され、水季と奥の席についた。
「好きな物を頼め」
「でも私、お財布…」
あんずは傘だけを持って教室を出た。
財布も携帯も教室に置いてきたカバンの中だ。
「気にしなくてよい。支払いは私が持つ」
「ですが…」
そう言いながらも、あんずの目は美味しそうなお菓子に向いてしまう。
水季はクスクス笑う。
「翠がもうすぐ来る。あんずの荷物を持ってな。だから安心するがよい」
「あ、じゃあ…」
あんずは少し安心した。
数分後。
テーブルにはあんずが頼んだチェリーパイの他にパフェやケーキ、タルト等が並べられていた。
「…おぉ」
水季が店員に
「一通り頼む」
と言ったのには仰天したが、承けた店員も
「かしこまりました」
と慣れた様子で笑顔で対応した。
「い、いただきます」
あんずはチェリーパイを一口食べる。
「美味しい」
「アップルパイとレモンパイも絶品だぞ」
そう水季は言うと、それぞれ半分に切ってあんずの前においた。
水季とあんずは楽しくおしゃべりをしながら食べすすめた。
テーブルに並べられたお菓子はあっという間に半分になった。
殆どは水季がひとりで食べた。
「彼女じゃないんですか?」
「ふふ。翠は弟みたいな者だ。母同士が仲良しでのう」
水季はパフェをつつく。
あんずは水季より小さめのパフェを食べる。
「昔は私より背が低くて、可愛かった。いや、図体がでかくなった今も可愛いがな」
ふうっと水季はため息をついた。
「なのに、中学からか、急によそよそしくなって。それでも、高校は夢ノ咲学院を受験するというから、待ってたのだ」
「そうなんですか」
(水季さん、3年生なんだ)
あんずは水季の大人っぽさに納得した。
否、しかけた。
水季はあんずの方を見る。
「あんず。同い年なのだから敬語は不要だぞ」
「え?」
あんずは目をパチクリさせた。
「言わなかったか?私はあんずと同じ2年生だ」
「……え!?」
あんずが驚くと同時に店の扉が勢いよく開いた。
「水季!」
翠が水季の名前を叫びながら入ってきた。
が、来たのは翠だけではなかった。
「あんず殿!無事でござるか?」
「うわっ!甘い匂いがスゴイっす」
「俺やっぱり無理!!」
「あ、ゆうたくん!」
忍、鉄虎、ゆうた、ひなたが付いてきた。
(やっぱり、ゆうたくんは駄目だったか)
自身の置かれた状況をすっかり忘れていたあんずは、パフェのクリームを食べた。
「おお翠!やっと来たか」
水季が嬉しそうに言う。
その表情に翠は苛立ちを隠さなかった。
「何やってるの!あんず先輩を連れ出し…て…」
水季とあんずの席に近付くが、テーブルを見て言葉を失った。
あんずはイチゴとバナナにチョコレートソースと生クリームをたっふりかけたジャンボパフェ。
一方、水季はイチゴ、バナナの他、メロン、パイン、ベリー類と複数のソースがふんだんに使われた、あんずのパフェより巨大なメガ盛りパフェ。
そして数枚の空のお皿。
『………』
忍も鉄虎も無言でパフェを見た。
「翠、あんずの荷物は持ってきてくれたか?」
沈黙を無視するように水季は聞く。
「持ってきたよ」
翠はカバンをあんずに渡す。
「ありがとう、翠くん」
あんずは翠からカバンを受けとると携帯を出した。
水季も携帯を出す。
2人は連絡先を交換した。
「これから宜しく頼むぞ、あんず」
水季はにっこりして言った。
To be continued.
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