8.「妨害」と「終の舞」
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「水季」
呼ばれた気がして水季が振り向くと、翠がいた。
「翠」
水季が微笑むと、翠も嬉しそうな顔をした。
ふと水季はある車に目がとまった。
どこにでもある普通の車。
でも、どこか不自然。
それが猛スピードで向かってきた。
翠の方に。
「!」
身体が勝手に動いた。
水季が翠を突き飛ばし、距離ができた途端、水季の身体に衝撃が走った。
「・・・ぐっ!」
目を瞑りたくなる痛みに耐えながら、水季は車の窓を見た。
黒塗りされて中は見えなかった。
浮いていた身体が地面に叩きつけられる。
今度こそ痛みに耐えきれず、目を閉じた。
意識が遠くなる。
水季を呼ぶ、翠の声が聞こえた。
翠は目の前で起きたことが信じられなかった。
さっきまで微笑んでいた水季が急に表情を変え、翠を突き飛ばした。
瞬間、車が水季をはねた。
「水季!」
地面に広がる水季の血。
制服を、髪を、赤く染めていく。
病院には翠も付いて行った。
しかし水季の意識が戻る前に迎えに来た両親につれられて帰った。
水季が目を覚ましたのは翌朝だった。
最初に目に入ったのは水季の両親だった。
両親は
「犯人は捕まった」
「もう大丈夫」
と言った。
(随分と短い逃走だったな)
ひき逃げ犯は知らない。
水季がいた周辺の防犯カメラ、それを設置したのが誰なのか。
だから水季も油断してしまった。
検査の結果、出血は多かったが骨は折れてなかった。
安静にしていればすぐに退院できた。
事故から数日、水季は日常に戻った。
「・・・・・・はぁ」
放課後、水季はため息をついた。
「水季、疲れた?」
友人が声をかける。
水季は休んでる間に溜まった作業をしていた。
「いや、大丈夫だ」
水季はペンを動かした。
「そういえば、生徒がひとり退学したみたい」
「・・・え?」
水季の手が止まった。
友人が水季に顔を近づけ、声をひそめた。
「水季と関係があるんじゃないかって噂もある」
友人は水季と翠が幼馴染みなのを知っている。
周りは水季がアイドル科の生徒を庇って事故に遭ったと思っている。
だが、そのアイドルと水季が幼馴染みだとは知らない。
そんな時、生徒がひとり学院を去った。
自然と、無意識に関係を考えてしまう。
(どこまで話すべきか)
水季は何も話さなかった。
そして『終の舞』を舞う当日をむかえた。