8.「妨害」と「終の舞」
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『終の舞』を行う前にすべきこと、
舞の稽古、だけ。
他にはない。
はっきり言ってない。
英智はある紙を見ていた。
書かれているのは一部の富豪、歴史ある家のリスト。
水季のことを知る存在。
『終の舞』の後、水季と手分けして挨拶回りをしなければならない。
先に報せると止められたり、最悪、妨害される危険がある。
だから『終の舞』を行った後にすることにした。
当然、相手は自分たちより年上の人ばかり。
正直、気難しい・・・・・・面倒臭い人もいる。
(令嬢がいる家は水季で良いけど・・・)
幸い令嬢と仲が良い水季。
そうなりそうな人物だけを紹介していた。
「天祥院先輩?」
聞こえた声に英智は顔を上げた。
そこには幼馴染みの女の子、智がいた。
英智はにっこりする。
「なんだい?智」
「難しい顔してましたけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。それより用事は?」
智は英智に書類を渡す。
「来週、再来週に開催するイベントとそれに参加するユニットです」
「ありがとう」
中途半端な時期に転校してきた智。
すっかり学院に慣れ、仕事をこなしていた。
だけどまだ心配事はある。
それを解消しなければ。
普通科、2年教室。
「買い物をしたいんだか、つきあってくれぬか?」
水季の誘いに友人は笑顔で頷く。
放課後。
「おお!」
友人は店内をキョロキョロと見渡す。
あっちを向いても扇子。
こっちを向いても扇子。
水季たちが来たのは扇子の専門店だった。
「近々、大事な舞をするのでな、一緒に選んでほしい」
「舞を?」
「ああ、一生に一度だけ舞う、特別な舞だ」
「そんな大事な舞、私が一緒に選んで良いの?」
友人は不安げに聞く。
「大事だから選んでほしいのだ」
水季は友人を見る。
数日後。
「やられた」
水季は苛立ちながら言った。
目の前には折れた扇子。
友人と選んだものとは別の物。
どこからか『終の舞』を行うことを知った人物の嫌がらせ。
水季は携帯で英智に知らせ、直ぐにアイドル科に向かった。
アイドル科、生徒会室。
「という訳で、当日まで預かってほしい」
大事に包まれた扇子を英智は受け取った。
「刀は?」
「大丈夫だ。誰も『夕立切』には触らせない」
『夕立切』
水季が持つ短刀の号。
水季が当主である証。
英智は一度だけ見たことがある。
特別な装飾はない、シンプルな拵え。
それでも、その存在感は本物だった。
そして水季が持ち主に相応しいことも。
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