7.「幻想」と「忘却」
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「水季、ちあきをいじめちゃ、だめですよ」
「・・・・・・」
奏太は噴水で水浴びをしながら、水季に諭すように言った。
水季は噴水の縁に座り、奏太の方を見なかった。
水季が千秋に平手打ちをしてから一月は経っていた。
「水季」
奏太は水季を呼ぶ。
水季はゆっくり、奏太を見た。
「深海殿」
「なんですか?」
「守沢先輩はいい人だ」
水季の言葉に奏太はにっこりする。
「でも、あの感情は迷惑だ」
苦しそうに言った。
「ぼくもそうおもいます」
「!」
「ときどき、ですよ」
奏太はどこか、いたずらっ子のような顔をした。
「やあ、水季さん!」
明るい呼び掛けに水季は振り向いた。
背の高い男がいた。
夢ノ咲学院の制服を着ているので、生徒なのだろう。
「誰ですか?」
男は笑顔で水季に歩み寄る。
「知らないのはしょうがない。俺は君に知られないようにしてたからなぁ」
「・・・・・・」
男が2歩近付けば、水季は1歩下がる。
何故だろう。
水季にとって、この男は危険な気がした。
探るように男を見る。
だけと男は水季の全てを知っているような気がした。
2人の距離が縮まる。
「ママ!」
「!?」
「!」
突然の声に男は一瞬動きを止め、声がした方を向いた。
その隙に水季は走って逃げた。
斑が水季に向き直すと、水季はすでに見えなくなっていた。
「おやおや、逃げられてしまった」
斑は自分を呼び掛けた人物を見た。
「レオさん」
レオは斑をじっと見る。
「水季が怖がってた」
「それは申し訳ないことをしたなぁ」
あっけらかんと言う斑にレオは眉をひそめた。
「ママ、水季は何者なんだ?」
「レオさんには水季はどう見える?」
質問に質問で返す。
「キレイ、しかわからない」
レオの澄んだ声が風にのる。
「でも、それだけじゃない」
水季に何かを感じるが、それが何なのか、レオはわからなかった。
『銀髪の美しい一族』
斑が『雨の一族』のことを聞かされたのは、幼い頃、奏太と過ごす時間が増えてからだった。
『銀髪の綺麗な子に会った』
奏太がそう言った時、大人たちの顔つきが変わった。
深海家が、三毛縞家が永く探していた人物。
龍神の加護をうけていた『雨の一族』の末裔。
それが水季だった。
大人たちは斑と奏太に語る。
『雨の一族』の話を、その末路を。