6.「作戦」と「風邪」
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3日後。
水季の体調はすっかり良くなっていた。
「明日から再開するので、宜しく頼む」
「………」
水季はそう言ったが、英智は心配そうな顔をしていた。
「もう少し休んだ方が良いよ」
英智が言うと水季は驚いた顔をした。
「どうした急に」
英智はジッと水季を見つめる。
水季も英智を見つめる。
先に目をそらしたのは水季だった。
「わかった」
水季がそう言うと英智はニッコリした。
「会長は水季のことが心配なんだよ」
「わかっておるよ、桃李」
「………」
廊下を歩きながら、桃李はチラチラと水季を見る。
口を開いては閉じ、何か言いたげだ。
「どうした?」
「……あのさ」
「うん」
「会長と婚約してるって本当?」
ドサッ
水季はカバンを落とした。
桃李は水季の顔を見てギョッとした。
水季は今まで見たことない、不機嫌な表情をしていた。
「誰から聞いた?」
「……えっと」
昨年も同じことを聞かれた。
何度も
何度も
何度も
最初は驚いて慌てて否定した。
途中から可笑しくなって笑いながら。
最後にはうんざりした。
「2年か3年だろう」
「うん」
桃李は頷く。
「桃李も知っているだろう。私はただの庶民だ。そんなことはありえない」
そう、ありえない。
「ああ、その噂があったのは聞いたわ」
あんずが電話の向こうにいる水季に言う。
「でも直ぐにおさまったんでしょ?」
『……まあな』
(あ、細々と続いてるんだ)
水季の曖昧な返答にあんずは察した。
『まあでも、天祥院殿が卒業すれば、私がアイドル科に行く理由はなくなる。そんな噂もすぐ忘れられるだろう』
「…英智さんが卒業したら、水季ちゃんはもうアイドル科に来ないの?」
『一応仕事の為に来ているからな、許可はもう下りないだろう』
水季が夢ノ咲学院に入学した時、特別な許可がおりた。
前以て申請すればその日時、アイドル科に入ることができる。
英智が働きかけたと知った時は驚いた。
だが、同じ学院に通いながら帰宅してからお互いの家に通うのは、正直面倒だと感じていた。
それに英智はアイドルだけじゃなく、生徒会の仕事もある。
休み時間、放課後に水季がアイドル科に行けば、その分時間をかけなくて済む。
お互い負担も少ない。
「………」
『あんず?』
あんずは水季がアイドル科に来なくなる日のことを考えたこともなかった。
あんずだけじゃない。
他の生徒も普通科の水季がアイドル科に通うのを不思議に思っていない。
少し間隔があけば、
『最近来ないね』
とそちらを不思議に思ってしまう。
「そうなったら、淋しいな」
あんずの言葉に水季は驚きつつも嬉しく思った。
「今あんずが目の前にいたら抱きしめたい」
………
沈黙。
「……あんず?」
今まで何度もあんずを抱きしめていた水季。
(本当は嫌だったか?)
水季は不安になった。
すると、クスクスとあんずが笑うのが聞こえた。
『水季ちゃん、言い方が千秋さんみたい』
………
「え?」
守沢千秋に似ている?
「私はそんなにウザいか?」
『ち、違うよ!そういう意味で言ったんじゃないよ』
あんずは必死に説明した。
翌日。
「……はぁ」
水季は教室でため息をついた。
あんずは悪気があって言ったわけじゃない。
千秋が悪い人ではないと、水季もわかっている。
ただ、翠が千秋と親しくなった。
それだけで、胸がざわついた。
イライラした。
千秋に面と向かって「嫌い」と言ったことがある。
だが千秋は「好き」と言ってきた。
それに対して更に怒りが沸き起こった。
小さな子供のワガママみたいだ。
病み上がりだからか、いろいろ思い出してしまう。
「はぁ」
またため息が出る。
ピタッ
ふいに額に柔らかな感触。
「熱はないね」
友人が水季の額に手をあて、体調を気遣ってくれる。
私はこんなに恵まれて良いのだろうか?
To be continued.
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