6.「作戦」と「風邪」
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水季はよく水の中にいる夢を見る。
何をするわけでもなく、ゆらゆらとさまよう。
流れに身を任せる。
それが心地好い。
だけど時には苦痛に感じた。
息が苦しくて、水面を目指そうとしても、腕をあげられない。
体が重く、どんどん沈んでいく。
(……まさか)
ピピッ
「あらあら、熱があるわねぇ」
水季の母が体温計を見て言った。
(……ああ、やっぱり)
ぼんやりとする意識、水季は窓の外を見た。
小さい頃、体調を崩すと必ず雨が降っていた。
だけど今日は
(晴れてる)
水季は目を閉じて、眠った。
目が覚め、時計を見ると昼だった。
熱はまだ下がらない。
(お腹すいた。喉渇いた)
台所に行くとリンゴがあった。
シャクシャクとあっという間にたいらげた。
お腹が落ち着くとまた眠くなった。
帰宅した翠は母親に柿を持たされ水季の家に行った。
インターホンを鳴らし、暫く待ったが、誰も出ない。
(まだ帰ってないのかな?)
「水季ー?」
扉を開けたのは水季の母親だった。
この時に水季が体調を崩したと、翠は初めて知った。
『水季』
遠くから声がした。
小さい頃から聞いていた。
低くなっても変わらない。
澄んだ、好きな声。
「翠」
水季は呼んだ。
だけど、声が返ってくることはなかった。
「水季」
母の声がして、水季は目を開けた。
外は暗くなっていた。
「具合はどう?」
「うん。大丈夫」
「さっき翠くんが来たのよ」
「そうなんだ」
「柿を貰ったの。食べる?」
「食べる」
体はいくらか楽になっていた。
ゆっくり起き上がる。
母が剥いた柿を一口かじる。
たしかな歯応えと溢れるような甘い果汁。
「美味しい」
『暫く休む』
『どうしたの?』
『風邪をひいた』
『わかった。お大事にね』
英智と短めのやりとりをすると水季は再び横になった。
身体のだるさはなくなったが、熱はあまり下がってなかった。
『水季』
あの声は本物か。
夢か。
幻聴か。
水季は寝返りをうつ。
熱は次の日の昼には下がった。