6.「作戦」と「風邪」
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荷物を持って水季と智は乗降口に向かっていた。
反対側から英智が歩いてきた。
「水季、おつかれさま。智、今日は可愛かったよ」
そう言って智から水季の荷物を持つ。
「水季と話があるから僕が持つよ。智はもうお帰り」
「うん、わかった。じゃあよろしくね」
智は水季の方を向く。
「水季さん、今日はありがとうございました」
「またな、智」
智は教室の方に歩いていった。
『箱庭に閉じ込めた』
以前、英智はそう言った。
「智は『箱庭』を『箱庭』と思ってない」
水季は言った。
「そう」
英智は安心したような、けれど、複雑そうな表情をした。
「閉じ込めた気は、ないのだろう?」
水季は続ける。
「守っていたのだろう?」
英智は頷いた。
守っていた。
智の優しい心を、
純粋な感性を。
あの東屋で。
隣で。
「でも両親譲りの好奇心旺盛なところはどうにもならない」
籠の鳥になることはなかった。
いつか離れていくと覚悟していても、少しでも側にいたかった。
着付けの時、智は2人との思い出を楽しそうに話していた。
成長するに連れ、自我を抑え始めた智。
その変化に瑛智と敬人はすぐに気づいた。
それでも変わらず接した。
表立つことも、裏で働きかけることもしなかった。
「天祥院殿」
水季は英智の前に立つと、真っ直ぐ見つめた。
「智が変わらずにいるのは天祥院殿と蓮巳先輩がいたからだ」
たとえ智が誰かに恋をしても、瑛智と敬人への尊敬と友愛は変わらない。
翌日、普通科の正門前が少し騒がしかった。
「なんだ?」
水季が門に近づくとある人物がいた。
「鳴上」
「あ、来たわね」
水季に気づくと、嵐は早足で近寄った。
その顔は険しかった。
(私、何かしたかな?)
水季は身構えた。
嵐は水季の前で歩を止め、腰に手をあてた。
完全に絵になる姿。
「水季ちゃん」
「な、なんだ?」
瞬間、嵐は拗ねた顔をした。
「ズルいわ」
「なにが?」
「智ちゃんの着物姿、アタシも見たかった!」
………
「ああ!アレか」
「そうよ!しかも水季ちゃんの一人勝ちじゃない!」
「しかし、智は可愛いとは言われてないぞ」
「今朝の智ちゃんの顔を見れば充分よ!」
『鳴上先輩、おはようございます』
『おはよう、智ちゃん。随分ご機嫌ね』
嵐がそう言うと智は目をキラキラさせて嵐に近寄る。
『あのですね。今度の休日、紅郎先輩と出掛けることになりました』
『あらデート?』
智は頬を染め、目をそらした。
『ち、違います。昨日、水季さんに着物を着せてもらって…』
そこに一緒に並べられた簪等の飾り。
試しに付けてみたが、どれもピンとこない。
「それで、今度の休日に髪飾りを買いに行くんですって」
「デートだな」
ふと水季と嵐は思った。
(まさか、あの人たち)
(デートについてくるんじゃ)