6.「作戦」と「風邪」
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「水季さん、すみませんでした」
着物から制服に着替えた智はペコリと頭を下げる。
「よいよい。智も知らなかったのだろう?」
「……はい」
智に協力するチームと協力しないチームで決めたルール。
紅郎に直接『可愛いか?』と聞かないこと。
「私が知らないところでそんなルールができてたなんて……、あれ、そう言えばひなたくんが」
『智、自分から聞くのはなしだよ』
言っていた。
かなりニヤニヤしながら。
「さて、そろそろ片付けるか」
「は、はい」
友也と創が先輩達に連れていかれ、紅郎と敬人も智が着替えるからと帰してしまった。
片付けは2人だけ。
「あの、水季さん」
「何だ?」
「本当に、こんなに沢山必要だったんですか?」
改めて並べられた着物を見る。
「涼しい」から「肌寒い」季節になってきた。
なら薄物や浴衣は用意せず、袷か単衣を数枚でよかった。
そしたら帯も飾りも少なくて済んだ。
だが、智は選ぶ間もなく、予め水季が別にしていた着物を着た。
「演劇部の衣裳部屋には程遠いが、数も量も必要だったのだ」
水季は智の方を向き、ニヤリとした。
「鬼龍先輩が選べるようにな」
今まで智は演劇部で着替えて紅郎のところに向かっていた。
そして智は聞く。
『似合いますか?』と。
ただその展開は1回もなかった。
「多分、鬼龍先輩なら必ず『似合う』と言うだろう。悔しいが日々樹先輩のセンスは良いからな」
「…はい」
「だけど、そこからどう『可愛い』と言わせる?」
「『それだけですか?』と聞きま………っは!」
智は気付く。
水季も苦笑する。
今まで一度も言われたことがない言葉、それがすぐに出てくる筈がない。
『自分から聞くのはなしだよ』
にやつきながら言うひなたを思い出す。
多分、ひなたは予想していた。
半分遊ばれたとわかり、どんどん不機嫌になる智。
(明日は教室が荒れるな)
と、水季は思った。
「ほら、智」
着物を智の肩にかける。
「あ、これ」
「先程、鬼龍先輩が選んだ物だ。良く似合う」
水季は写真を撮る。
「言ったとおりだったろう?」
智は頬を染め、微笑みながら頷いた。
『この着物を着ている時に後の夫となった男性に口説かれた』
それを聞いた智は緊張した。
告白の返事を聞き、紅郎と付き合うことになったが、仕事と日常の会話のみで、恋人らしい会話をした記憶がない。
だから紅郎が智に似合うと着物を選んだことが嬉しかった。
「私が着ても有効なのかわかりませんが、あの時間はとても楽しかったです。ありがとうございます」
満面の笑みで智は言った。