5.「好意」と「休日」
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「う~ん」
水季は自宅の縁側でゴロゴロしていた。
湯治の客は天祥院の紹介でくる。
今、その役目は英智がやっている。
その英智に休めと言われた。
つまり、暫くは客はこない。
「暇だ」
思い出してみれば最近、来客が多かった。
お茶菓子を買いに行ったり、掃除をしたり、水季は何かと動いていた。
急にやることがなくなった。
「暇だ」
本日何度目になるかわからない呟きをしていると玄関のインターホンが鳴った。
「?」
水季は起き上がり、玄関に向かった。
玄関の戸を開けると知らない女性が立っていた。
何故か『客』だと、水季は感じた。
「始めまして、当主様。私、――と申します。先代様には大変お世話になりました」
女性は名乗ると綺麗に礼をした。
粋な着物が良く似合う。
水季も仕事の時は着物を着るが、まだまだ形だけと思う程だ。
「私、もうすぐ異国の地に旅立ちます。最後に此方のお風呂に入りたくて、無理を承知で参りました」
「そうでしたか。どうぞ、おはいり下さい」
水季は女性を家に入れた。
台所でお茶の準備をしながら英智にメールを送った。
その時、携帯のバッテリーが少ないのに気づいた。
「後で充電するか」
水季が客間に戻ると女性は静かに中庭を眺めていた。
その瞳に水季は覚えがあった。
だが、いつ、どこで見たか思い出せなかった。
「大変お待たせしました。準備ができましたのでご案内します」
女性を案内し、お茶のおかわりの準備をしていたら、英智から着信があった。
『今、大丈夫かい?』
「大丈夫だ。何かわかったか?」
『うん。水季、よく聞いてね』
「何だ?」
『その人、亡くなってる』
「え?」
英智の言っていることが解らなかった。
こんな冗談を言う人ではないことは知っている。
『水季は御子だから害はないと思うけど…』
ブツっと音がし、通話が切れた。
同時に携帯から聞こえる音。
「しまった、充電が…」
その時、玄関のインターホンが鳴った。
英智が家に来た?
水季は小走りで玄関に向かった。
ガラッ
「ぅわっ!」
水季が勢いよく戸を開けると、段ボールを持った翠が驚いた顔をして立っていた。
「翠」
「どうしたの?水季」
翠は首を傾げながら聞くが、客の履き物に気づいた。
「お客さんが来てるんだ」
「……あ…ああ、そうだ」
「そう。じゃあこれ、そこに置けば良い?」
段ボールの中身は旬の野菜が入っていた。
先日、水季の母が翠の店に頼んだ物だった。
「ああ、ありがとう」
翠を巻き込みたくない。
水季の頭はその言葉でいっぱいだった。