5.「好意」と「休日」
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その日、水季は病院にいた。
各病室のネームプレートを確認し、やっと目当ての部屋を見つける。
「あんず」
「っ!?水季ちゃん!どうして?」
「桃李から聞いた」
水季が知ったのは数日ぶりにアイドル科に足を運んだ時だった。
「あ、水季!」
「お、桃李。何かあったのか?」
「え?」
「何やら空気がおかしい」
「水季、知らないの?」
この時、初めてあんずが校内で倒れたこと、入院したと聞かされた。
「今はゆっくり休め」
「…うん」
あんずは力なく頷く。
「退院したら泊まりにこい。あんずならいつでも大歓迎だ」
「ありがとう、水季ちゃん」
病院を出た水季はふうと息をはいた。
あんなに弱っているあんずを見るのは初めてだった。
日頃から忙しく働いていたあんず。
最近できた新しい後輩の事情にも気をはっていた。
知らず知らずに溜め込んだ疲れが出たのだ。
「暫くはアイドル科には行けないな」
あんずが退院するまでは。
水季は帰路についた。
「!」
水季が家の門を通ると小さな音がした。
鈴が鳴るリーンとも、金属を引っ掻くキーンとも聞こえる音。
「………どうして」
水季は急いで家に入った。
自室に入り、押入れを開けた。
すると音は大きくなる。
水季は短刀をとる。
音はそれからしていた。
突然、水季を囲むように風がおきた。
「っわ」
水季は短刀を握りしめ、目を閉じた。
風がおさまると目を開けた。
「あ」
黒い、球体状の影が複数、水季を囲むように浮いていた。
カチ
刀を抜くと影は刀身に吸い込まれた。
「!」
刀を通して水季に流れ込んでくる。
影の不安、悲しみ、憤り。
恐らく、通院、入院している人たちの感情。
あんずの感情もあった。
知らず知らず水季に憑いてきてしまった。
それに短刀が反応した。
「ありがとう」
水季は短刀を抱き締めた。
その夜、水季は雨を降らした。
全てを浄化するように。