4.「恋愛」と「事件」
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数十分前。
インターホンが鳴った時、水季は手が離せなかった。
後から来る予定の智が来たと思ったから、あんずに玄関に行ってもらった。
「あんず?智は来たか?」
水季も少し遅れて玄関に行ったが、あんずも智もいなかった。
「ん?」
扉の前に何か落ちていた。
水季はそれを拾った。
「飴?」
玄関を開けるとまた飴がひとつ落ちていた。
門のところにも、ひとつ。
その時、水季の携帯が鳴った。
『飴ちゃんを追いかけて』
あんずからだった。
飴は門の外にも点々と落ちていた。
「なんだ?」
言われるまま、飴が落ちてる方へ歩いていく。
「まるでヘンゼルとグレーテルだな」
やがて、あるアパートに辿り着いた。
「ここか」
覚えのない場所だった。
「水季?」
「!」
覚えのある声がして、そちらを向くと顔を青くした友人がいた。
「……さっき妹から連絡があって、水季が家にいるって」
友人の声は震えていた。
「ああ、成程」
水季は納得した。
「あんずを連れていったのは妹か」
「あんず?」
「私と間違えられた娘だ。プロデュース科の」
水季の顔は更に青くなった。
部屋に行くとあんずと友人の妹がいた。
「はじめまして。私が水季だ」
そう言うと妹は目を見開いた。
「あんず、無事か?」
あんずはニッコリした。
「さて」
色とりどりの飴がテーブルに広がっている。
「妹さんは中学生だろう?だったら、もう話しても大丈夫だろう」
友人は心配そうに妹を見る。
「お主も同じくらいの頃に知ったのだろう?心配ない」
フワリと水季は扇子で妹に風を送る。
「私の祖母とそなたの祖父が昔、夫婦だったのは知っているな?」
妹は頷く。
「だが、祖母は祖父を追い出した。まあ、それは間違いない」
水季は扇子をタパンと畳む。
「だが、家系はどこまで知っている?」
「家系?……っあ!」
妹は姉を見る。
姉、友人は頷いた。
「どう考えても、お爺ちゃんの家系とあの家の繋がりが無いの。2人が夫婦だったということ以外」
姉の言葉に妹は固まった。
「水季はその後再婚した人とのお孫さん」
理解が追いつかない。
『真実』を受け入れられなかった。
風が当たった。
水季が扇子で妹に風を送っていた。
優しい風だった。
「辛かったろう」
妹の身体はカタカタと震えた。
「……なんで、お爺ちゃんは…あんな嘘を」
「あの家だ」
「え?」
水季は扇子を口元にあてる。
「自分で言うのもアレだが、なかなか立派な屋敷だ」
手入れは大変だがな、と水季は苦笑する。
「祖母との結婚は乗り気ではなかった。だが、家は欲しかった」
生活は1年ももたなかった。
祖母は問答無用で祖父を追い出した。
「最低」
妹は呟いた。
同時に涙を流した。
水季は妹の背後を見る。
黒い影が消えていく。
少し前まで姉にも付いていた。
祖父の欲望に憑かれた姉妹。
やっと解放された。