4.「恋愛」と「事件」
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翌日、水季の髪を見て、クラスメイトたちは驚いた。
「どうしたの!?」
「ちょっとね」
水季は曖昧に答えた。
そして教室の角にいる、あの日、水季を屋上に呼び出した女子生徒に先輩たちの教室を聞いた。
教室に行くと先輩たちは水季に気付いて目を見開いた。
水季は先輩たちに近付く。
そして周りに聞こえるように、はっきりと言った。
「これで満足ですか?」
途端、先輩たちは真っ青になった。
それを見た周りは察した。
いろんな噂が流れ、教師たちの耳に入り、職員室に呼ばれた。
「また伸びるので、もう、気にしてません」
水季はそう言った。
予想外な反応をしたのは天祥院英智だった。
短くなった水季の髪を見て、英智は目を見開いた。
「そのような顔、初めて見た」
「……その髪」
英智の声は震えていた。
「いろいろあってな」
「……そう」
天祥院家がよく水季の家に来るのは知っていた。
会えば挨拶くらいはした。
水季が英智と会話をするようになったのは祖母の手伝いをするようになってからだった。
以来、英智は用事意外でも水季の家に来るようになった。
天祥院家ということに緊張していたが、今では良い友人になった。
英智は水季の髪に触れた。
「水季、聞いてくれる?僕の秘密」
その声は悲しそうだった。
水季と英智は縁側に並んで座った。
「大切な子がいるんだ」
英智は静かに話した。
「初めは写真だった。水季みたいに長くて綺麗な髪だった」
初めて対面した時、その子の髪は短かった。
その時は髪の長さなんて気にしてなかった。
「少し前から、髪を伸ばしはじめたんだ」
写真で見るより、ずっと綺麗だった。
リボンをプレゼントしたら凄く喜んでくれた。
「だからかな。水季を見て、もしあの子がまた髪を短く切ったらと思ったら…」
英智は悲しげな表情で俯いた。
「その子が、好き、なのか?」
「うん」
英智は頷く。
「彼女の全てを愛してる」
水季は横目に英智を見た。
英智は庭を眺める。
愛しそうに。
まるで目線の先にその子がいるかのように。
自分にはそんな存在がいるだろうか。
ふと、翠の顔が浮かんだ。
(翠は、弟みたいな者だな)
やがて、翠が中学に入学してきた。
水季の髪は少し伸びた。
「髪、伸びたね」
翠がフワリと微笑みながら言った。
トクンと鼓動が鳴った。
同時に締め付けられる感じがした。