3.「教室」と「環境」
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放課後。
水季は友人と教室を出た。
「今日は何を買うのだ?」
「……実は」
「?」
「水季に紹介したい人がいるの」
「ほう」
友人の知り合いかと、水季はこの時、そう思った。
数十分後。
学院近くの喫茶店。
水季は無表情を保ち、眉間に皺を寄せるのを必死に耐えていた。
向かいに座る相手は人懐っこい笑みを水季にむけていた。
友人に説明を求めようとしたが、友人は『急用ができた』ができたと言って帰ってしまった。
「まさか紹介したい人が、羽風先輩とは思わなかったな」
「あ、俺のこと知ってるんだ。嬉しいなぁ」
薫は嬉しそうに笑みを深めた。
「前々から君と話してみたかったんだよ。でも君、すぐに帰っちゃうしさ」
確かに水季は用事が済めばすぐにアイドル科を出ていく。
「申し訳ないが、私は話すことがない」
水季は席を立とうとした。
「あ、雨また降ってきたぁ」
他の客の声を聞いて、水季は窓の外を見た。
雨が再び降りだしていた。
水季は薫の荷物を見た。
傘は見あたらなかった。
「羽風先輩、傘は」
「学院に忘れた」
水季は席に座り直した。
「雨が止むまでなら、相手をしよう」
出来るだけ笑顔で言った。
「相合い傘とか…」
「断る!」
水季の眉間にシワができた。
羽風薫のことは知っていた。
あんずとの食堂のおいかけっこのことも聞いた。
『でも気さくで、良い人だよ』
あんずは初めて会った時のことを笑いながら話していた。
それでも水季は、聞いた限りでは薫を好きになれなかった。
実際、薫と話すまでは。
薫とはただ世間話をした。
普通に楽しかった。
雨が止んで、水季と薫は喫茶店を出た。
「またね、水季ちゃん」
そう言うと薫は学院の方に歩いていった。
(……気さく、だったな)
水季はそう思った。
「愉快な奴だったな」
水季は笑みを浮かべた。
今度あんずに会ったら、話そうと思った。
空を見ると、雲が切れ、光がさしていた。
翌日。
普通科。
2年教室。
「……き、昨日はどうだった?」
友人は恐る恐る水季に聞いた。
水季と薫を会わせた時、水季が苛立ったのを感じつつも帰ってしまったことを気にしていた。
「なかなか楽しかったぞ」
水季はにっこりと返した。
アイドル科。
「水季ちゃんと薫さんが?」
あんずは驚きの声をあげた。
「うん。楽しそうに話してた」
スバルが言う。
帰り道、2人を見かけたのだ。
「………そう」
「あんず?」
「昨日、レッスンに来ないと思ったら…」
(……言わない方が良かった)
スバルはあんずの笑顔を怖く感じた。