番外編2.one-sided love.Ⅱ
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智が女子の制服を着て登校してから、智を異性として意識する生徒が増えた。
ゆうたは苛立ちを隠そうとした。
桃李は苛立ちを隠そうとしなかった。
「智ちゃん、俺とデートしない?」
「……しません」
智は薫の誘いをあんずの後ろに隠れながら断る。
明らかに警戒していた。
「智ちゃん、何で薫さんが嫌いなの?」
あんずが聞く。
「神崎先輩がこの人には気を許すなと」
智はそうこたえた。
「なるほど」
「……ひどいなぁ」
あんずは納得し、薫はがっくりと項垂れる。
数日後、智は再び男子制服で登校した。
「ええ!?またそっち着るの?」
ひなたが驚きの声をあげる。
「似合ってたのになぁ」
「でもこっちの方が楽だから」
ひなたはガッカリしていたが、ゆうたは安心していた。
女子の制服を着ていた智の仕草は、いつも以上に『女性らし』かった。
いつも以上にドキドキした。
「智が好きな格好をすれば良いと思うよ」
ゆうたが言うと、智はニッコリした。
「ありがとう」
だけど、その笑みはどこか淋しげだった。
最初はこの感情が解らなかった。
『ゆうたくん』
智がゆうたを呼ぶ度、鼓動が大きくなった。
智の笑顔を見る度、頬が熱くなった。
智が告白された所を見た瞬間、相手に苛立ちを覚えた。
その気持ちが日に日に大きくなった。
ひなたと桃李が智に『大好き』と堂々と言っているのが羨ましかった。
(ああ、そうか)
やっと解った。
(俺、智が好きなんだ)
恋愛として。
智が薫以上に誰かを避けているのにも、薄々わかっていた。
あの放課後以来、英智が智を見ているのには気付いていた。
一致するのに時間はかからなかった。
だから智が英智が一緒にいるのを見て、胸騒ぎがした。
ゆうたは教室を出るとあんずに連絡した。
暫くして顔色の悪いあんずを見つけた。
「あんずさん」
ゆうたの呼び掛けにあんずはハッとした表情をした。
「ゆうたくん、ありがとね」
あんずは力なく微笑んだ。
翌日、智は登校してこなかった。
ゆうたは前日のことをひなたに話した。
「そっか、会長だったんだ」
ひなたは落ち着いていた。
「だから、いつも緊張してたんだ」
「え?」
……気づかなかった。
「智自身も気付いてなかったみたいだけどね」
ひなたは苦笑した。
「単独行動したり、校内でお昼寝してるのを見た時は、もう大丈夫だと思ってたんだ」
考えが甘かったね、とひなたは俯きながら言った。
だから、ひなたは常に智の傍にいた。
手を引いていた。
智の緊張を和らげる為に、
抱えている恐怖心を薄める為に。
自分は何かできただろうか。
ゆうたは夜、忍に教えてもらった公園にいた。
智がいたという公園。
少し広くて遊具もある。
灯りは少なく、小さかった。
暗闇が多くて、不気味だった。
「っ!」
フワリと見えた白い物体。
暗闇に慣れてきた目が見たのは。
「智」
白いワンピースを着た智だった。
フリルと赤いリボンが装飾された、暗闇でも眩しいくらい白いワンピース。
それは智にとても良く似合っていた。
(やっぱり可愛い)
「…ゆうたくん」
「!…どうして」
ゆうたは驚いた。
この時、ゆうたはヘッドホンもヘアピンもしていなかった。
智はゆうたに近づく。
「ゆうたくんは、私に触れないもの」
拒まれるのが不安でできなかった。
それが裏目に出ていた。
「智がいないと、つまらないよ」
淋しい。
ゆうたは呟くように言った。
手を伸ばせば届く距離。
それ以上、距離が縮むことはなかった。
先に伸ばしたのはだった。
ゆうたの頬に触れる。
いつの間にか、ゆうたは涙を流していた。
ゆうたは智の手に触れる。
ずっと触れたかった。
会う度に、話をする度に『好き』という感情が大きくなった。
伝えたかった。
だけど怖かった。
伝えた人が羨ましかった。
「大好きだよ、智」
やっと言えた。