番外編2.one-sided love.Ⅱ
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暗闇の中、智が泣いていた。
大きな瞳からポロポロと涙を流して。
は自分で涙を拭うが、拭ったそばからまた溢れてくる。
『どうしたの?
何で泣いてるの?』
桃李は問いかけるが、智は答えない。
泣き続ける。
やがて顔を上げるが、桃李を見ない。
どこかを見つめながら、何かを呟くと走り去ってしまった。
『待って!』
桃李は手を伸ばそうとした。
「!!」
桃李は目を覚ました。
一瞬、何処にいるかわからなかった。
ようやく自室のベットにいると、夢を見ていたと解った。
起き上がり、呼吸を整えた。
「……なんで?」
桃李は智が校内で泣いているのを見たことがなかった。
校内でしか会わないので普段、どんな服を来ているか知らない。
(なんで…知ってるの?)
泣いている姿に、白いワンピースに、桃李は覚えがあった。
数日後。
昼休み、智が泉と話しているのを見かけた。
2人の顔が近付いた時、胸騒ぎがした。
「何してるの?」
苛立った声を出していると自分でも気づいた。
智と泉は顔を青ざめさせて、素早く離れた。
2、3言話して、会話を終えた。
智は桃李と教室にむかった。
智のサラサラの黒髪が、
俯いた愁い顔が、
とても綺麗に見えた。
でも
「大好きだよ」
桃李がそう言うと智はニッコリした。
笑った顔の方が、ずっと可愛かった。
「素敵な人だね」
弓道部で弓弦に会った智はそう言った。
桃李にとって弓弦は大切な存在だ。
弓弦が褒められるのは正直嬉しい。
だけど、今回はチクリと胸が痛んだ。
「大好きだよ、智」
友達としてじゃなく、恋愛として。
「ありがとう。でも、桃李くんの気持ちには応えられない」
悲しげな智の顔に、胸がしめつけられた。
夜、桃李は自室で静かに泣いた。
帰宅中はずっと堪えていた。
家族にも気付かれないよう、明るく振る舞った。
あの時の英智と同じように。
弓弦だけは何か言いたげだった。
気付かれたかもしれない。
かまわなかった。
智に気持ちを伝えたことに、後悔はなかった。
翌日、智は登校してこなかった。
「昨日、智に伝えた」
昼休み、桃李がそう言うと、ゆうたは目を見開き、そして伏せた。
「そっか」
(ゆうたはどうするのかな…)
桃李の心は落ち着いていた。
同時に寂しさもあった。
もう何も知らなかった頃には戻れない。
それでも、智が登校したら、笑顔で迎えよう。
END
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葵ゆうた編。