2.「ゆうた」と「忍」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その夜、忍は帰りが遅くなったので、近道するつもりで公園を通った。
誰もいないと思っていた。
ジャングルジムのてっぺんに座る智を見るまでは…。
「!?」
智は忍に気づかず星空を見ていた。
星の光を集めたような白い肌、そこにくっきりとある大きな目に赤い唇。
フリルとレースが付いた、けれどシンプルなデザインの白いワンピース。
束ねていない長い髪が風になびいた。
その姿はとても美しく、幻想的に見えた。
やがて智は手に持っていた本を開き、ページを1枚1枚ビリビリと破き初めた。
翌日。
身体中が痛かった。
あんずのスペシャルメニューで完全に筋肉痛だ。
ゆうたは教室につき、椅子に座るなり動けなくなってしまった。
隣の教室からはひなたの断末魔が聞こえる。
『葵ひなたが筋肉痛で動けない』
その噂が学院内を駆け巡ると、ひなたのイタズラの被害者が1年A組の教室に来た。
仕返しをするために。
「ゆうたくん、忍くん」
智が教室に入って来た。
ゆうたと忍はぎこちない笑顔で返した。
「ゆうたくん、大丈夫?」
「…駄目」
「あんず先輩ってスパルタなんだね」
「………いや、あれは今までで一番厳しかった」
忍はグッタリとしたゆうたを気の毒に思った。
それでも聞かずにはいられない。
「昨日はどんな特訓を?」
ゆうたと智はチラッと目を合わせたが、そらしながら言った。
「「思い出したくない」」
休み時間が終わる前に智はA組に戻った。
「忍くん、聞かなくて良かったの?」
「拙者の勘違い、人違いかもしれないでござる。暫く様子を見るでござる」
「服装も気になるしね」
忍の話では、夜の智はワンピース、スカートだった。
でも学院の制服は男子のを着ている。
「まるで、隠れているようでござる」
「隠れる?」
「学院内に知り合いがいて、見つからないようにとか…」
こんな時、忍は鋭い。
「多分、あんず殿は知っているでござる」
「だから、珍しくピリピリしていた」
忍は頷いた。
ゆうたも納得した。
納得はしたが……
「でも昨日のはあんまりだぁ~!」
昼休み。
忍の話を聞き、あんずは目を丸くした。
「あらあら、そんなことがあったの?」
「あんず、演技下手すぎ」
スバルが言った。
「双子の噂は学院中に知れわたってるからねぇ」
「あんず殿、昨日はどんな特訓を?」
忍は同じ質問をした。
「忘れたわ」
『………………』
室内の温度が下がった。
「ああ、1年の方には届いてないんだ」
【双子があんずを怒らせた】
「ゆうたくん達は思い出したくないと…」
「ああ…」
実際、昨日のあんずはピリピリしていた。
約束の時間が過ぎても、双子も智も来ず、連絡も無かったからだ。
ホームルームが長引いていると思った。
校舎を案内してると思った。
少なくとも、部室に案内は想像がついた。
しかし、待つうちに不安になってきた。
智が会いたくない人物と遭遇して追いかけられているかもしれない。
落ち着かなかった。
探しに行こうかと考えた。
だが、身軽でちょこまかと動きまわる双子と何処ですれ違うかわからない。
そう思うと自分は動かない方が良いと決断した。
だから、自分から連絡をとることにした。
智が無事なことに安堵したが、やり場のないモヤモヤを葵兄弟にぶつけてしまった。