14.school life
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『嫌い』になんてなれなかった。
口にも出したくなかった。
だから『嘘』をついて、逃げた。
4月。
智は自宅近くの女子校に入学した。
入学式の数日後に両親は海外に渡った。
智は朝、朝食とお弁当を作り、少し掃除をしてから登校する。
下校途中、又は一度帰宅してから夕飯の買い物をし、夕飯を支度中に洗濯機を回す。
そつなく家事をこなした。
休日、智は自宅の窓から外を眺めていた。
雨が降っていた。
冷たい雨の空気、
それに混じる花の香り。
(……なんか、ダルいなぁ)
智の変化が目に見えるようになったのは梅雨半ば、制服が夏服に変わった頃だった。
「あれ、痩せた?」
そう言ってきたクラスメイト。
明るい茶色、ウェーブのかかったフワフワの髪。それに飾るシュシュ。
目元をはっきりさせるメイク。
一見派手に見えるが落ち着いた雰囲気を持っていた。
「そうかな?」
「ダイエット?」
「してないよぉ」
智は笑ってその場を誤魔化した。
帰宅して姿見の前に立ったが、智には変化がわからなかった。
あれ以来、智は英智と敬人に会っていない。
東屋にも行っていない。
天祥院家の屋敷にも近付いていない。
敬人に会ったのは夕飯の買い物をした帰りだった。
「智?」
「!…敬人さん」
敬人の姿を確認した時、智は身体が軽くなる感じがした。
嬉しくなった。
このまま世間話でもしようかと思ったが、できなかった。
敬人は驚いた顔をしていた。
「何故、日本にいる?」
その言葉でわかった。
逃げれば、追いかけてきそうな気迫がした。
だから、諦めた。
「場所を変えましょうか。蓮巳さん」
2人は近くの公園に入った。
「お久しぶりですね」
「……」
「天祥院さんから、聞いたんですね」
「……」
「高校生にもなればお互い忙しいですから」
「智」
「何ですか?蓮巳さん」
「その話し方はなんだ?」
敬人は智を睨む。
「まるで他人行儀だ」
智は振り向く。
「もう他人ですから。……蓮巳さんとも」
敬人は目を見開いた。
智は無表情で冷たい瞳をしていた。
「あ、そうだ」
智は微笑む。
「蓮巳さん、私が日本にいること、天祥院さんには内緒にして下さい」
そう言って智はひとり、公園を出た。
好奇心旺盛で、
泣き虫で、
愛らしい笑顔を浮かべる少女はもういない。
玄関の扉を閉めると同時に智はその場に座りこんだ。
「ハァ…ハァ…」
長距離を走った後のように、心臓がドクドク鳴った。
呼吸が上手くできなかった。
暫く動けなかった。
その日は夕飯を食べなかった。
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