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あるところにひとりの女の子がいました。
女の子は生まれた時からずっと森の奥に住んでます。
あまり森の外に出たことはありません。
森が女の子の唯一の遊び場でした。
森は毎日、発見と驚きが一杯で、好奇心旺盛な女の子が飽きることはありませんでした。
ある日、女の子は初めてひとりで森の外に出ました。
遊んでいるうちに出てしまったのです。
歩いているうちに一軒のお屋敷につきました。
そこには男の子がいました。
ふたりはすぐに仲良くなりました。
女の子にとって初めての友達です。
あの頃の智は自他共に認めるやんちゃっ子だった。
毎日泥んこになるまで遊んだ。
あちこち擦り傷だらけだった。
家族は呆れながらも笑ってくれた。
髪も短くて、いつもズボンで、男の子に間違えられた。
でも智は気にしなかった。
母親がボーイッシュな格好を好み、当時、智にも似た格好をさせていた。
母とお揃い、だからそれが普通だった。
ある日、智は近所の大きな家に興味を持った。
高い塀に囲まれた、見えない向こうの世界。
(どんな人が住んでるんだろう?)
お伽噺のお姫様を想像していた。好奇心から塀を乗り越えた。
「わぁ!」
そこは薔薇の香りが広がる庭だった。
見つかってはいけないと思い、近くの茂みから庭を眺めた。
(………綺麗)
夕方。
「お母さん、おばあちゃん、あの大きなお家にはどんな人が住んでるの?」
夕飯の仕度をしている母に、ソファで寛いでいる母方の祖母に智は聞いた。
“大きなお家”はこの一帯にはあの一軒しかなかった。
「大きなお家?……天祥院さんのところね」
母が言った。
「てんしょういんさん…」
智は口の中で復唱した。
「確か智と年が近いお子さんがいたねぇ」
祖母が言った。
「でもウチとは世界が違うわ」
そう言って母は智と目を合わせてた。
「いいこと?あのお家には絶対に近付いちゃ駄目よ」
智は大人しく頷いた。
形だけ。
再びあの家に行った。
すっかりあの庭の虜になっていた。
茂みから庭を眺める。
「何してるの?」
振り向くと男の子がいた。
(綺麗な子)
智は思った。
輝く金髪
透けるような白い肌
宝石色の瞳
暖かい陽射しを感じさせる笑顔
「この間も来てたよね?見てたよ」
「ご、ごめんなさい!」
「待って!」
男の子は智の手首を掴んだ。
「!!」
男の子の手の感触に、指の細さに智はびっくりした。
「座って」
智は大人しく座った。
男の子も向かいに座った。
「名前は?」
「智」
「ああ、君が」
「知ってるの?」
「君はこの辺りでは有名だよ、【小さな冒険家】ちゃん」
男の子は笑みを深めた。
「僕は英智。君が見てきたことを教えてほしいんだ」
それが天祥院英智との出会い。
あまり外に出られないという英智に智は話をした。
家のこと
近所、公園のこと
学校のこと
習い事のこと
どんな小さいことでも英智は笑顔で聞いた。
気がつくと日が暮れかけていた。
「もう帰らなきゃ」
そう言って智が立ち上がると英智も立った。
「そういえば、智は何処から入ってきたの?」
「………塀を登って」
英智は一瞬ぽかんとしたが、クスクス笑った。
「こっちにおいで」
英智は智にあまり使われていない裏口の場所を教えた。
「また来てね。待ってるから」
「良いの?」
「勿論。だけど、この事は2人だけの秘密だよ」
「秘密?」
「そう」
英智は顔を近付けた。
コツンと額同士があたった。
「守れる?」
英智の囁く声にドキドキした。
初めての胸の高鳴り。
初恋にか、秘密にか解らない。
「うん」
頷くと英智は微笑んだ。
「大好きだよ、智」
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