11.「零」と「泉」
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軽音部部室。
部室では智と晃牙が会話していた。
「アドニスと話したい?」
晃牙がそう聞くと智は首を縱に振った。
「話せば良いじゃねぇか」
今度は横に振る。
「なんでだよ?」
むくれて俯く。
「あのなぁ~」
声を発しているのは晃牙だけ。
智は首を動かしているだけ。
それを近くで葵兄弟が見ていた。
「智、大神先輩とはああだよね」
「朔間先輩とは普通に話すのにね」
「赤べこみたい」
ひなたが呟いた。
赤べこ。
会津生産の赤く塗られた牛の置物。
家内安全、商売繁盛等の御利益があり、お土産としても人気。
頭がゆらゆら動く。
『………』
全員、黙った。
頭の中に首を揺らす赤べこが浮かんだ。
晃牙が吹き出し、腹をかかえて笑った。
智はキョトンとしたまま葵兄弟を見る。
ひなたはニヤニヤし、ゆうたは智から顔を反らし、笑いを堪えた。
「~~~」
智は顔を真っ赤にし、兄弟を睨んだ。
「バカァー――!!」
「…ん…何じゃ?」
部室の騒がしさに零は目をあけた。
晃牙の笑い声。
双子の笑う声と謝る声。
智の怒る声。
「智が来ておるのか」
棺桶の蓋を押し上げる。
隙間ができると声が大きくなった。
「ひなたくんも、ゆうたくんも大っ嫌い!」
「ええ!?」
ゆうたがショックをうける。
「酷いよ~」
ひなたが言う。
「酷いのはどっち!?」
智が怒鳴る。
カタン。
「これこれ、何事じゃ?」
「あ、零さん」
智が零に顔を向ける。
「すみません、うるさくして…」
「別に構わんよ」
零は起き上がると頬杖をついた。
「智や、此方においで」
零が優しく言うと、智はキョトンとしながらも瞳を輝かせた。
ひなたから離れ、零に近付く。
「すまんが、アドニスくんを連れてきてくれぬか?」
数十分後。
智がアドニスを連れてきた。
「あ、##NAME1##」
「お、おかえり~…」
葵兄弟がぎこちなく迎える。
智は眉を寄せ、プイっと兄弟から顔を背けた。
「ああ~、まだ怒ってるの~?」
慌てたのはひなただった。
「ごめん、もう言わないからぁ~」
「………」
必死に謝るひなたを無視し、智は何も言わず、零に駆け寄った。
「乙狩先輩を連れて来ました」
「うむ、ご苦労」
零は笑顔で智の頭をクシャと撫でた。
「智や、そろそろ許してやってはくれぬか?」
ひなたのことを。
智は俯く。
(やれやれ)
零は智の頭をゆらゆら揺らした。
「可愛いではないか……赤べこ」
「~~~」
智は零から離れ、無言で部室を出た。
「完全にヘソ曲げちまったな」
晃牙が言った。
ゆうたがひなたを睨む。
「アニキがあんなこと言うからぁ!」
3ーB教室。
なずなは携帯であるサイトを見ていた。
元々マメにチェックしているサイトだが、智が転校してきてから頻度が増していた。
「あ、更新してる」
瞬間、なずなは大きな目を更に大きく見開いた。
「……マジかよ」
よく見ないとわからなかった。
でもそれは間違いなく、現在の智だった。
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