10.「颯馬」と「アドニス」
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アドニスは智がついてくるのを確認した。
重力に従っているかのようなまっすぐな黒髪。
よくあんずと嵐が智の髪を結っていた。
智がいない時に雑誌を見ながら次はどうするか楽しそうに話していた。
「からまった!」
「セットがきまらない」
と姉たちがほぼ毎朝髪と苦戦しているのをアドニスは見ていた。
『そんなに扱いやすいのか?』
『気になるなら触ってみたら?智ちゃん、別に嫌がらないわよ』
あんずが言った。
お互い言い方に語弊があるが、零や凛月、颯馬と異性が髪に触れても智は動じなかった。
だからバスケの後、智の頭に手を置いてみた。
結果、智に睨まれた。
「気のせい」と嵐は言い切るが、やはり気になった。
『乙狩先輩、零さんが呼んでます』
数分前に声をかけてきた智。
零がいる場所を伝え、一緒に来るよう言われて、並んで歩いた。
それ以来話してない。
「智」
試しに呼んでみた。
智はアドニスを見て首を傾げる。
「………」
「………」
会話をしたいが、話題がない。
トトト。
「!」
アドニスは時々智が小走りになるのに気づいた。
「早いか?」
アドニスが聞くと智は首を横に振る。
「そうか」
智は頷く。
また歩きだす。
「智は俺が恐いか?」
智は目を丸くし、首を横に降った。
「大神は恐いか?」
首を横に振る。
アドニスは智に話しかけ続けた。
智は首を動かして返事をした。
わかったことが幾つかあった。
兄弟姉妹はいないこと。
料理が好きなこと。
甘い物が好きなこと。
運動が好きなこと。
プロデュースの仕事に興味を持ったこと。
「いつでも頼れ」
アドニスがそう言うと、智は頷いて、笑顔を見せた。
智が隣を歩いている。
いつもは間に誰かがいた。
今は誰もいない。
To be continued.
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