10.「颯馬」と「アドニス」
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あんずに付いて歩く小さい後輩。
アドニスから見た智はそんな印象だった。
周りは男子の制服を着る智を不思議に思ったが、アドニスは気にしなかった。
特に着崩しているわけでもない。
教員も生徒会も何も言わない。
なにより、休み時間に同級生(男子)たちとスポーツをしているのをよく見かける。
やはり大きく動くにはスカートよりズボンの方が良いのだろう。
誰にも笑顔で接する智。
だが一部の人には警戒心を抱くようで、アドニスと晃牙もその中に入っているらしい。
会話はするが、必ず誰か(主にあんず)が傍にいる。
最初は俯いて目を合わせようともしない。
目を合わせても智は笑顔を見せなかった。
晃牙は
「会話は成立するから気にしてない」
と言っていた。
話しかければこたえるし、智から話すこともある。
確かに会話は成立する。
だが、近付こうとするとその分離れようとする。
「智ちゃんはアドニスちゃんにも晃牙ちゃんにもなついているわよ」
嵐に相談したら、そう言われた。
「そうなのか?」
「だって智ちゃん、2人からは逃げないでしょ?」
「確かに、逃げない」
薫に関しては完全に逃げる。
智がUNDEADでなついているのは零だけだと思っていた。
「恥ずかしがり屋さんなのよ」
嵐は言った。
昼休み。
バスケットコートに智、ひなた、ゆうた、忍、翠、鉄虎がいた。
「1年生!俺たちと勝負だぁ!」
コートにスバルの声が響いた。
突然のことに智たちは一瞬ぽかんとした。
2年生のスバル側にはあんず、アドニス、嵐、真緒、3年生の千秋。
「そっちバスケ部3人もいるじゃないですか!」
「3年生もいるし!」
「ずるーい!」
1年生、大ブーイング。
「だって勝ちたいし」
スバルがさらっと言った。
『大人げない!』
そのまま3対3の試合をして、……1年生惨敗。
「悔しい~」
智が本気で悔しがる。
「ごめんねぇ」
「手加減できなくてぇ」
あんずと嵐が申し訳なさそうに言う。でも口元が笑ってる。
むくれる智の頭に大きな手が乗った。
「にゃっ!?」
驚く智が振り向くとアドニスがいた。
智はさらに顔をしかめた。
「乙狩先輩がゴール前にいたんじゃ無理ですよ」
そう言うとアドニスから離れた。
「智~、もう行こう~」
ひなたが智を呼ぶ。
もう昼休みが終わる時間だった。
それぞれ教室に向かう。
「…やはり避けられてる」
「気のせいよ」
(智ちゃんも困ったものね)
嵐がそっとため息をついた。